第5話 リトルビックキッドナッピング2
○サンドイッチ屋・テラス席
ユウ「おまたせハル。 あれ、いない? 荷物はあるのに」
ショーコ「手洗いでもいったのかしら」
ユウ「見てくるわ」
ショーコ「ちょっと」
ユウは男子トイレへ堂々と入って行く。
ユウ「パパー」
「うわあー!?」
ユウ「いなかったわ」
ショーコ「あんたねぇ……。 まあいいわ。 先に帰っちゃったのかな?」
ユウ「……考えにくいけど、でも…… そうね一旦戻りましょう」
◯商人の宿屋
召使「いえ、戻られておりません」
ショーコ「迷子かな?」
ユウ「あああッどうしよう! もしかして誘拐!? 見た目は子供だし」
ショーコ「いきなりそんな……とりあえず兵隊に連絡しなくちゃ。」
召使「私が伝えて参りましょう」
ショーコ「ありがと、お願いね」
ユウ「あぁ、あの時に引き止めておけば……。 無理にでも一緒にいるべきだったわ」
ショーコ「それも酷だと思うけどー」
○廃墟の館・盗賊のアジト
盗賊A「やれやれ、とんだ邪魔が入ったな」
盗賊B「お頭、こいつどうします?」
ハル「むー、むー」バタバタ
ハルは縛られている。
女盗賊「ふーん、なかなかの上玉だね。高く売れるかな……おや?」
女盗賊はハルの帽子をとった。 ハルの長い耳があらわになる。
女盗賊「おやおやおや、これはホビット族…… いやエルフか!?」
ハル「ぅ……」
女盗賊「へぇ、まだ生き残りがいたとは! それも子供、高く売れるよこれは!!」
賊B「それで魔法が使えたんですね」
盗賊A「お頭、オンナの方はどうします」
女盗賊「予定どうり脅迫文を用意しな。 私はもういちどこいつに魔法封じをしておくから」
◯盗賊のアジト・窓の無い部屋
賊A「ほら、おとなしくしてろよ」
バタン
ハルは部屋に閉じ込められてしまった。
ハル「うう…… 誘拐されちゃったどうしよう」
メガネ女子「おぬし、怪我は無いか? わらわが巻き込んだようで済まないのう」
部屋の暗がりから声がかかった。
ハル「え!! あ、さっきの」
暗がりにメガネ女子が木箱に座っていた。 ハル同様に手は縛られている。
メガネ女子「驚かせたかの。 ……おや、その耳。ほうエルフ族か? 初めて見る」
ハル「うん、僕はハーフエルフのハルといいます。 あの……君は?」
メガネ女子「そうだの、わらわはナナスタ…… いや只のナナじゃ」
ハル「タダノ・ナナ? ナナちゃんだね、よろしく。」
メガネ女子ナナ「むぅ……、ちゃんはいらぬわナナでよい」
ハル「うん、よろしくナナ」
ナナ「さてこれからどうするかのう」
ハル「そうだ心配しないでね、こんなのすぐ何とかするから」
ナナ「ほう?」
ハル「あ……、えっとね。 こんなのこうして」ジタバタ
ハルはもがいている、しかし縄はほどけなかった。
ハルはもがいている、しかし縄はほどけなかった。
ハルはもがいている、しかし縄はほどけなかった。
ハル「うぅ~、もう少しだから。 まっててね」
ナナ「フフフ、なごむのう、頑張るのじゃ」
ナナは両手で頬杖をついて木箱に腰かけている。
ハル「うん、えい、うぬぬ。 ……あれ? ナナさん縄は?」
ナナ「この程度の縄抜けは朝飯前じゃ」ヒラヒラ
程いた縄を回して見せる。
ハル「ええ!? もー、それなら早くいってよ。 はいほどいて」
ハルは縛られた手を差し出す。
ナナはハルを見つめて不敵に笑っている。
ハル「ナナ?」
ナナ「フフフ、ほどいてもよいが。 ただではのう?」
ハル「え!? えっとね、えっとね、なにかできることならするけど……」
ナナ「まことか。 ではお主、わらわの弟分になりゃれ」
ハル「あの、それはちょっと……」
ナナ「わらわは末っ子でのう。 常々弟か妹が欲しいと思っておったのじゃ」
ハル「あの…… 僕はこれでも60歳なんだけど」
ナナ「なんと、そのナリで60か。 10ばかりにしか見えんのぅ」
ハル「10ぅ……(分かってるけどへこむなぁ) あのなにか別のもので」
ナナ「いやじゃ! わらわはお主のような弟が欲しいのじゃ、姉上みたいになりたいのじゃ!!『ナナ姉』と呼ぶのじゃ」
ハル「……あの、じゃあ。 今だけならいいよ『ナナ姉』」
ナナ「そうか! よーしよし、こっちにきりゃれ」
ナナはハルを抱きこんだ。
ハル「え? ほどいてくれないの」
ナナ「ほどいてからじゃ逃げるかもしれんじゃろ」
ハル「え、ちょっと。なに?」
ナナ「よーしよしよしよし」モフモフモフ
ハル「うわわわわ」
ナナ「……ふむ、実に心地よいの。 お主の頭は撫でがいがあるぞ」モフリモフリ
ハル「むー……(ガマンガマン))」
ナナ「ふむ、満足じゃ。 ほら、縄も解いたぞ。 礼は言わなくていいぞよ」
ハルの縄はほどかれた。
ハル「え? あ、ホントだ。 あの、……ありがとう」
ナナ「言わなくていいといったではないか、ほんに」フフ
○アジトの廊下
ナナは扉の開錠に成功した。
ギイィ
ハル「鍵開けも出来るんだね」
ナナ「わらわは忍びの身ゆえにな…… これくらいは造作もないことじゃ」
ハル「シノビ? もしかしてニンジャなの?」
ナナ「うむ? うむ。そうじゃわらわはニンジャのナナなのじゃ、スゴイじゃろう」
ハル「ホントにニンジャっているんだ……、スゴイ」
ナナ「そうじゃスゴイじゃろう」ウンウン
ハル「ニンジャなのになんで誘拐されたの?」
ナナ「むぅ! それはのう…… どうせ捕らえられた所ですぐに抜け出せると思ったしの、それに城下を騒がす誘拐団の正体を暴くチャンスと思ってのう」
ハル「それであんなにあっさりと…… もしかしてぼくお節介だった?」
ナナ「うむ? そんな事ないのじゃ…… お主のような者が我が国におってわらわは嬉しいぞ」
ハル「……そう?(王国のニンジャなのかな)」
○
ナナ「あっちは盗賊どもがおった、他に出口はなさそうか?」
ハル「うん、こっちも行き止まりだったよ」
ナナ「後はこの先だけじゃな」
テクテク
ハル「盗賊の隠れ家にしては立派だね、お屋敷みたい」
ナナ「おそらく放置された貴族の館じゃろう、たしか旧市街にいくつかあったの」
ハル「ナナ、詳しいんだね。 王都の出身なの?」
ナナ「……まぁそうじゃな。 お主は?」
ハル「僕は南の町」
ナナ「そうなのか? エルフ族だから大森林とかどこぞの山奥かと思うたが」
ハル「叔母さんがその町に居たんだ、それまでは山に居たよ」
ナナ「叔母? 父上と母上は山におるのか?」
ハル「えっとね、父さんは死んじゃって、母さんもどこかにいっちゃったんだ。 それで父さんが叔母さんの世話になりなさいってね」
ナナ「……すまん、辛いことを言わせてしもうたか」
ハル「気にしないでよもう30年近く前のことだから」
ナナ「寂しくはないのか?」
ハル「今はユウが居るから寂しくないよ」
ナナ「ユウとは?」
ハル「うん、僕にはユウっていう子供がいるんだ」
ナナ「こ、子供!? まことか?」
ハル「いやその…… 血は繋がってはないから。 ユウも事故でお母さんを亡くしてね、僕と叔母とで育てたんだ」
ナナ「そうか……驚かすでない。 もう嫁がいるのかと思ったぞ」
ハル「お嫁さんなんて考えたこともないよ。 あ、扉だ」
ナナ「また同じ奴じゃな、こんなもの」カチャカチャ
ギイィ
○子供の牢屋
ナナ「なんじゃここわ!?」
子供1「おねぇさんたち誰?」
子供2「出して、帰りたい!」
ザワザワ
子供たちが牢屋に閉じ込められている。
ハル「なにこれ、みんなさらわれてきたの!?」
悪ガキ「オマエラ、アイツらの仲間じゃないな? 騒ぐな、奴らが来るぞ」
ハル「君達も誘拐されたの?」
悪ガキ「まぁな、こいつは鍛冶屋の息子、あいつはおれと同じで親なしだ」
ナナ「なんと、我が国でこのような、このような」ワナワナ
ハル「僕達はあっちの部屋から抜け出してきたんだ」
悪ガキ「そうかい。 あんたらは、貴族かなにかかい? あの部屋は特別用さ。 俺らは売られるんだと」
ナナ「なんと! なんという非道!! 今すぐ出してやるぞ。」ガチャガチャ
ナナは牢屋の鍵を開錠した。
悪ガキ「やった、助かったぜ」
盗賊A「うるさいぞ、何してる!?」
盗賊Aがあらわれた。
ハル「しまった見つかった」
悪ガキ「みんなかかれ!」
子供たちが盗賊Aにとびかかる!?
盗賊A「ちょ!? オマエラどうやって、うわぁ」
盗賊Aをやっつけた。
ナナ「よし、コヤツは服を脱がして牢に放り込んでおくのじゃ」
ハル「なんで脱がすの?」
ナナ「それはじゃな」
○牢番の部屋
盗賊B「……(Aの奴遅いな)っと、やっと戻ってきたか。 どうだった?」
盗賊A「……どうもこうもないわ、この下郎めが!!」
シュドッ
盗賊Aはナナだった。 ナナの鋭い蹴りが盗賊Bの鳩尾に決まる。
盗賊B「ウゴ!!」
盗賊Bは気絶した。
ナナ「こやつも牢に放り込め」
悪ガキ「あいよ」
ハル「上手くいったね」
ナナ「さてと、これが鍵じゃな。 お主ら、これで逃げて兵隊の所へ行くがよい」
ハル「ナナはどうするの?」
ナナ「このような非道は許せぬ! 成敗してくれる」
ハル「僕も行くよ、子供をこんな目にあわせて許せない」
ナナ「そうか、お主もか。 ならばお主が皆を逃がしておくれ」
悪ガキ「俺か?」
ナナ「頼んだぞ」
悪ガキ「任せろ、兵隊を見つけたらすぐに戻ってきてやるよ」
ナナ「よし、ではハルよ行くぞ、世直しじゃ、仕置人じゃ」
ハル「シオキニン?(なんだろ)」
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