いつかまた
HaやCa
第1話
「いつかまたあなたに会える日が来る。そう信じています。今は海外へ留学しているあなたも、数年後には帰ってくるでしょう。ですが、本当にそうでしょうか。
あなたはいつも勉強熱心で、ときどき度を過ぎてしまいます。そのままその地でずっと暮らしていく、そんな気がしてならないのです。私はあなたに会いたい。本当は一緒に暮らしていたい。ほかにも言いたいことはたくさんあります。ですか、私は思うように言葉をかけません。だからこれだけは書いておこうと思います。
あなたは性格の感情豊かな方です。自然と周りの人も助けてくれます。そのことだけは忘れないでほしい」
いつ出すのかもわからない手紙をしたため、私はベランダに出ます。今日晴れ間は見えず、どんよりとした天気です。しかし、私の心は跳ねるように踊っていました。
というのも、シンガポールへ留学をしている妹が来週日本に帰ってくるからです。
普段したたかな妹も、長い海外生活のせいで疲れていたようです。ラインで送られてきたメッセージのなかで、彼女はそう打ち明けていました。
私にできたアドバイスは「いちど日本に帰ってきたら?」というものでした。
それはもしかしたら、妹に会いたいという私の願いも含まれていたのかもしれません。
「あっ」
一瞬吹きつける風が手の中の手紙を攫い、私の視線を家の中へと運んでいきました。
私は今一人暮らしをしています。両親とは別に住んでいて、仲は決してよくありません。私は現在インターネットの仕事で生計を立てていますが、それも妹の留学費でほとんど消えました。多少生活は苦しいけど、妹が一生懸命頑張っていることを思えば少しもつらくありませんでした。私たち姉妹はお互いを信頼しているからです。
妹は大学で経済学を専攻していて、将来は私の力になりたいと言ってくれています。そのとき妹は、にっと笑ってサムズアップをしていました。彼女の癖です。
彼女は嬉しいとき、悲しいとき、思っていることをいうとき、すべてのときサムズアップをします。なかでも印象に残っているのは、妹がシンガポールへと出発する日のことです。
空港のロビーで別れの言葉を言い合っているとき、あなたは照れ隠しのように言いました。
「お姉ちゃん大丈夫だよ。わたしは向こうでもちゃんとやるから。わたしは不器用だし、たまーに連絡するかもしれない。どうしたらいいのかわからんくなって帰りたいっていうときもあるかもしれない。でも、それでもちゃんとやるから。見守っててほしい」
その言葉を最後に、あなたは飛び立ってしまいました。
あれから二年、やっとあなたに会えるときが来ました。
「お姉ちゃんへ。まずお姉ちゃんのいいとこをあげます。お姉ちゃんのいいとこは、しっかりしているところです。家のこともお金のこともちゃんとしています。そんなお姉ちゃんを私は尊敬してるし、カッコいいなあなんて思うときもあります。でも、長い海外生活を通して、お姉ちゃんは私以上に不器用だなって気づきました。なんていうか、もっと自分の気持ちに素直になったらいいと思います。嬉しいなら嬉しい、楽しいなら楽しいっていう感じに。あと誰かに会いたいなって思うときも。私はいつまでもお姉ちゃんと一緒にいたいと思ってます。こんなふうに言葉にするのは照れ臭いけど、言わないとお姉ちゃんに伝わらないから書きました。
追伸 来週に日本に帰ることになりました! やったぜ! 日本に帰ったら美味しいご飯食べたいなあ。もちろんお姉ちゃんといっしょに。早く会いたい」
いつかまた HaやCa @aiueoaiueo0098
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます