041 魔王軍四天王の最後の1体を落札する
「これより魔王軍四天王の最後の1体――火の四天王『フェニックス』のオークションを開始したいと思います」
勇者様御一行のおかげで、俺たちは山のダンジョンの中に入ることができた。襲いかかってくる魔物たちを蹴散らしながら、無事にフェニックスの元にたどりつく。
魔王に
だから、オークションを利用して落札することで洗脳を解いてやるのだ。
これまで3体の四天王をこの方法で仲間にしてきたので、俺たちもさすがに
この一年でレベルアップし続けたコンチータのオークションハウスだが、客席数は数百を超えていた。コンチータが客席を増やそうと思えば、まだまだ増やせるようである。
だが、今回のオークションではその必要はないだろう。それほど多くの参加者がいるわけでもないのだ。
はじめは、『シンプルなシャンデリア』、『木製の椅子』、『教卓のような
広さ・内装ともに、俺が元いた世界の一流のオークションハウスと比較しても、きっと負けていないと思う。
コンチータはこの一年で本当に、素敵なオークションハウスに育った。
きらびやかに輝くシャンデリアの下。客席には俺の仲間たちの他に、数十体の魔物たちが椅子に座っている。
天井はとても高く、巨大な魔物がいてもよっぽどのことがない限り困ることはない。
クッションの良い豪華な椅子が、人間サイズ・魔物サイズとそれぞれ用意されていた。
椅子のサイズや豪華さは、コンチータが念じれば、魔物の体格などに合わせてある程度変化させることができるそうだ。
身体の構造上、普通の椅子には上手く座ることのできない魔物たちがいれば、巨大なベンチソファーのようなものにも変化させることが可能だった。
俺は客席に向かってオークションの注意事項を説明し終える。
そして、競り台の脇でじっとおとなしくしている最後の四天王・フェニックスを指し示して言った。
「それでは、『火の鳥・フェニックス』のオークションを開始します。100ゴールドからはじめましょう! 100ゴールドからスタート!」
りんご一個分の値段である『100ゴールド』からのスタートだ。
豪華なオークション会場に対して
「まずは1番のお客様からのビッド! 100ゴールドは1番のお客様から! 続いて2番のお客様から200ゴールドのビッド! 300ゴールドは再び1番のお客様! 400ゴールドは2番のお客様! 500! 600! 700!」
お金を持っている魔物が客席にいるようだ。
杏太郎があげる『1番』のビッド札以外にも、『2番』の札が
鳥の顔をした魔物で、首から下は人間のようなやつが『2番』のビッド札をあげていたのだ。
俺たちが、四天王をオークションで落札するという
魔物たちは、オークションで戦う準備をしてきたのだ。みんなのお金を代表の魔物一匹に集めて、杏太郎と一騎討ちをする作戦なのだと思う。
しかし――。
「3億2000万ゴールドは1番のお客様! 現在、『火の鳥・フェニックス』は3億2000万ゴールド!」
ひとつ前に、魔物たちが『3億ゴールド』をビッドした。だが、杏太郎がさらにビッドして『3億2000万ゴールド』となった。
どうやら魔物たちが、オークション対策として用意できたお金は『3億ゴールド』までだったみたいだ。
客席の魔物たちにあきらめムードが広がっている。競り台からそれがよくわかった。
『2番』のビッド札は、もうあがらない。
これにて勝負がついたのである。
「現在、3億2000万ゴールドで1番のお客様です! さらにビッドされる方はおられますか?」
客席に向かって俺はそう確認するが、『2番』の札を持った魔物が首を横に振った。
「よろしいですね? それでは、落札いたします」
客席にそう告げると、俺は
カンっ――と乾いた音が、オークションハウスに響いた。
いつ耳にしても最高に気持ちの良い音だ。
「魔王軍最後の四天王『火の鳥・フェニックス』は、3億2000万ゴールドで、1番のお客様が落札です!」
仲間たちが競り台に向かってパチパチと拍手を送ってくれる。
こうして杏太郎は、魔王軍四天王の4体をすべてオークションで落札し、仲間に加えることに成功したのだった。
* * *
オークションの取り引きが成立し、オークションハウスから元の空間へと戻る。
火の鳥を杏太郎に落札された魔物たちは、もう
「落札者から『3200万ゴールド』の手数料。出品者からも『3200万ゴールド』の手数料か……」
俺はひとりでぼそっとつぶやく。
『落札代金の10%』が手数料で、それぞれ落札者と出品者の双方から、オークション運営側に支払われる。
俺とコンチータでそれを半分ずつに分けるのだ。
今回のオークションで、俺も彼女も『3200万ゴールド』ずつ受け取ったのである。
オークションが終わるたびに手数料が手に入る。
俺が元いた世界で使用していた財布には、当然すべての金貨は入らない。
財布の小銭入れ部分には、元いた世界の10円玉なんかがじゃらじゃらと10枚以上入っており、ずっとパンパンなのだ。
そもそも空の財布を持っていたとしても、この金貨の量では無理だろう。
まあ、この異世界では財布なんて必要ない。
右手を前に出して心の中で念じれば、アイテム同様にお金も収納できるのだ。
今回も俺は右手を伸ばして、たくさんの金貨を収納した。
本当に便利な世界である。
杏太郎がフェニックスに言った。
「ボクたちは、これから魔王の城に乗り込む予定だ。魔王の城へと続く道が燃えているのだが、あの邪魔な炎を消してくれないか?」
魔王の洗脳が解けたフェニックスは了承し、道の炎を消すことを約束してくれた。
それから、他の四天王同様に指輪を杏太郎に差し出す。『火の指輪』だ。この指輪を使用すれば、フェニックスをいつでも呼び出すことができるようになるのである。
杏太郎はついにそろった4体の四天王を並ばせて言う。
「いよいよ、魔王との決戦だ。元四天王のお前たちにも、存分に力を貸してもらうぞ」
四天王たちがご主人様の言葉に答える。
「最後まで、ご主人様のお力になるツチグマー!」
「みんなで協力して、魔王の復活を阻止するミズカメー!」
「そのときの体調次第では、がんばるカゼリュウー!」
「たとえ我が身が燃えつきようとも、この世界に平和を取り戻すフェニフェニ!」
んっ? あれ……?
フェニックスだけ、他の3体と
『フェニックスー!』じゃないのか?
とにかく、こうして四天王を集めることに成功した俺たちはダンジョンから脱出した。
そして、シャンズたち勇者様御一行と合流して山を越えたのである。
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