第33話 伊達2

「来るかよ。こんなところに」

 伊達だて君は口をへの字に曲げてにゃんに言う。その後、私に気づいたようだ。驚いたように目を瞬かせた後、「こんにちは」と挨拶をしてくれた。


「こんにちは」

 小走りに近づき、にゃんの隣に立つ。それも意外だったようで、伊達君はにゃんと私を交互に見比べた。


「誰? 連れ?」

「従姉妹」


「嘘つけ」

「本当だ」


「顔が似てない」

「コンタクトの度があってないんだろ。激似だよ」


「どこの子」

「俺の地元」


 結局伊達君が意味ありげに「ふぅん」と笑って、にゃんとの応酬は終了したようだ。


「ここは展示か?」

 にゃんが実習棟内を見回す。

 私たち以外、人っ子ひとりいない。同じタイプの機械がずらりと並ぶだけ。


「まさか。物品販売だよ」

 伊達君が言い、にゃんが眉根をしかめた。


「商品どれ」

「これ」

 伊達君が指さすのは、受付のところでも使用していた足の高い長机だ。


 そこに陳列されているのは。


 牛乳パックで作ったと思しき小物入れだった。


「「………」」


 にゃんと私は無言でそれを眺める。

 机の上にあるのは、3つ。

 よく、おばあちゃんとかが廃材で作る奴だ。


 牛乳パックを開き、三角に折り直して組み合わせ、ペン立てや小物入れに使う


 その小物入れが。

 赤や青の千代紙を張られて、ずん、と机の上に乗っていた。


「……ここ、機械科、だよな」

 にゃんが確認する。「一M(一年機械科)だよ」。伊達君が断言する。


 私はまじまじと小物入れを見つめた後、にゃんの白衣の袖をつまみ、引っ張った。


「この工作、あれで作れるの?」

 にゃんが『旋盤』と言った機械を指さし、私は尋ねた。


 廃材をリサイクルしたり、カッターみたいに切ったりする機械なんだろうか、あれ。

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