1-7
オペレーターが調べたところによれば、一応空間的にはオレたちのいた現在地と救難信号の出ている地点はつながっているということだった。残念ながら、この間ダンジョンが変形したせいでマップは埋まってはいなかったが。最近よく動くんだよな、サブダンジョン。
そんなわけでオレたちはDEWACSシクを中心にダンジョン内を進行していた。
楽な採集クエストから難易度の高い救助クエストに切り替わったことで、全体にそれなりの緊張感が広がっている。
その上、今回は未踏エリアに進まないといけない。低層とは言え油断は禁物だ。ここいらで油断して強制帰還をもらったなんてことはザラだからな。
四方をガッチリと固めた陣形の真ん中には、シェーレやユイ達の乗る人員輸送用の小型ロボと巨大な頭部センサーユニットを有するDEWACSシクだ。DEWACS(ディーワックス)はDungeon-Early-Warning-And-Control-System(ダンジョン早期警戒管制システム)の略で、シクのバリエーション機の一つであるDEWACSシクは、周囲を観測するセンサーユニットを満載しているチームの目と耳だ。キョウサン重工での正式名称は
クエストが切り替わる前にも守ってはいたが、今はより念入りに守る。この機体が残存しているかどうかで難易度の高いクエストの成否は大きく変わると言っても過言ではない。あと高価な装置をこれでもかというほど積んでいるので、壊すと大変なことになる。
フォルクス粒子の防御は装甲を守りはするが、さすがに衝撃に対してデリケートな機器までは守れない。ので、次以降のクエストのことも考えると死ぬ気で守らなくてはいけない。
『前、ドール級が固まってるでしょ』
DEWACSシクのパイロット、ツバサが報告する。
『15センチ砲でいきましょう、ブラット』
『はいよー』
シクのマイナーチェンジ機、
完成したのはうちのクラスで最長射程を誇る15センチ砲だ。長すぎるので普段は巨大な背部コンテナに分解して収納されている。
『準備よーし』
『発射』
『発射〜』
ちょっとシクキャリアのパイロット、ブラットのテンションが上がっている。なかなか15センチ砲を使う機会ないからな。
膨大な煙が排出されると同時に砲弾が発射され、何かに当たって光輪が咲いた。
「相変わらず適当のくせによく当たるな」
『聞こえてるぞー』
15センチ砲の砲口がこちらを向く。やっべ声出てた。
「やめろやめろ弾を無駄遣いするな」
『けっこう傷ついたぞー、これは士気が下がったなー』
『覚悟しておくことねトオル』
げ、シェーレ。
まずいな、こりゃ。ポイントがどんどん減ってくぞ。
『ツバサ、敵はどうかしら』
『まっすぐこっちに向かってくるっしょ』
『ブラット、落として』
『ほいさー』
《シモノセキ》が再度砲撃体勢をとった時だった。
ゴンッ。
「んなっ⁈」
『ぐげっ!』
『ちょ……』
困惑の声がクラス回線を走る。
それもそのはず。
タツキの《マダラ》がDEWACSシクにドロップキックをかましていた。
またタツキの奇行が炸裂しやがった。こういう時にやられるとどっと疲れる。
「お前は何やって……っ!」
言いかけたところでオレはフットペダルを踏み込み、《ツワモノ》に前進を促していた。
ぐにゃり、と。
タツキがドロップキックをしていなければDEWACSシクが立っていただろう位置に、白い姿が凝集していく。
『シノビだと⁈』
誰かがそう言った。
ドール級の亜種シノビに対して、オレは《ツワモノ》を突っ込ませて斧槍を振り抜いたが、シノビは素早くかわす。
続けざまのクラスメイトの射撃もかわすと、再度その白い姿が揺らいで消えていく。
「おいおいまじか!」
『DEWACSシクを中心に円陣を組みなさい! 複数体いる可能性もあるわ!』
『ツバサ、状況は⁈』
『びっくりした! センサーは、少しぐずってるがいけそうっしょ! シェーレ、ユイ、そっちのモニタでも確認してくれっしょ!』
『もうやってるよツバサ!』
どどどっと回線が荒れる。
ツバサは責められないだろう、こんな低層でシノビが出るなんて誰も考えちゃいなかった。
個体にもよるがシノビの隠蔽能力はかなり高く、DEWACSシクでも相当気をつけていないと発見できない。正直、オレも気を抜いていた。一人を除いてクラスの全員が考えていなかっただろう。
「大したもんだよタツキ」
『へへ〜そうだろそうだろ』
「でも、なんでわかったんだ?」
『んー、ニオイ』
ニオイて。
お前機体の中入ってるだろう。なんでわかるんだよ。さすがは竜人ってわけか。
しかし困った。ドール級はまだこっちに来ている。シノビがどこに隠れているかわからない状況で乱戦になるのは最悪だ。
『トオル、タツキ、もう一回15センチ砲で砲撃したら前に出て接近するドール級を抑えて。残りの機体で円陣を崩さずにシノビを倒すわよ』
『『『『「了解!」』』』』
シェーレが凛とした声で指示を出す。どんな状況でもこうして自信満々なのは助かる。精神的支柱ってやつだ。
そしてやることが決まれば、オレたちパイロットはやるだけだ。
『シノビは攻撃時は必ず実体化するわ、落ち着いて狙いなさい。ブラット、砲撃後は長物はいらない、15センチ砲は一度捨てるわ』
『ほいさー』
『あ、ブラット、優しく置いてね』
『はいさー』
「当てろよー、ブラット」
『…………………………』
「返事しろよ!」
それでも何も返事はなく、《シモノセキ》の15センチ砲が煙と砲弾を吐き出す。
先ほどと同じく走った砲弾は、しかし先ほどのように光輪を咲かせることはなかった。
『外したかー』
「何でそこで意味ありげにこっちを見るかな!」
『…………………………』
「ねえ返事して!」
ブラットは応じずにゆっくりと15センチ砲を地面に置く。
くそ、色々言ってやりたいがやるしかないか。
「よし行くぞタツキ!」
『タツキならもう行ってるよ』
「ああもう、締まらねえな!」
《ツワモノ》を前進させると、DEWACSシクのパイロット、ツバサから声がかかった。
『気をつけろ、トオル、タツキ! そっから先は、無重力区画でしょ!』
『にゃわっ⁈』
タツキの驚きの声が耳を叩く。
続いてオレもシートに収まっていた尻が浮いた。シートベルトが無かったらシートから放り出されていただろう。
ダンジョン内にはこういった、普通じゃない区画がランダムに出現する。
砂漠だったり、海だったり、密林だったり。
こうして無重力の空間、ありていに言えば宇宙に近い空間になったりする。本当にダンジョンは不思議だ。
「だがまあ、宇宙でよかったぜ」
この手の区画で一番厄介なのは海だ。
動きにくいわ機体は錆びるわ、水中じゃあ水の抵抗で装備のほとんどが使い物にならないわで散々な目に遭うことが多い。
この無重力区画は最初こそ死ぬほどやりにくかったが、慣れちまえばどってことはない。
『にゃにゃにゃ⁈ にゃんだこれ⁈』
毎度毎度タツキはこうだけどな!
「重力がねーんだ、スラスター噴け!」
いつもこうなるのでオレはいつもの通り回線に叫びながら、ドール級の群れに突っ込んでいく。
『あ、そっかー』
すれ違いざまに斧槍でドール級を切り裂きにかかるが、白い腕一本を落としただけで終わってしまう。
「チッ」
こりゃあドール級の中でも結構強い方だぞ、どうなってやがる。
機体を回転させてドール級の方に向き直ると、ドール級の一体が腕を鞭のように伸ばしてオレを狙ってきた。
かろうじて左腕に懸架されたシールドで受けると、攻撃が当たると共に機体が大きく揺れる。
無重力下の操縦を思い出したタツキの《マダラ》カリバーもマシンガンを撃つが、ろくに当たらない。
タツキの腕が悪いわけじゃない。明らかにドール級の動きが良かった。間違いない、こりゃかなり下の方のドール級だぞ。
「シェーレ、今の深度は!」
『読み通りよトオル、明らかに私たちが考えていた深度よりも深い。レーダーを撹乱するトラップのようね』
『平坦に見えていた道は少し傾斜がついてて、気づかないうちに深いところまで来ちゃってたい!』
「こすい真似を………………」
『最近ダンジョンの造りがえげつないヨ!』
『………………先生もメインダンジョンをかなり突破されているから、これ以上好き勝手やられないように躍起なのだろう』
『確かにそろそろ五百層だもんなー』
こりゃ六三○組も同じような感じでピンチになったかもだ。
周囲をドール級に囲まれたオレは、タツキの《マダラ》と背中を合わせて互いに死角をカバーする。
『うー、当たってくれないぞ』
「まったくだぜ」
『そこだっ!』
『………………当たってない』
『しょうがねえだろクソ!』
『また消えやがったヨ!』
『すばしっこいなー』
『ツバサ、まだかよ!』
『……見えないっしょ』
クラス回線を聞いたぶんだと、まだ応援が来そうにもない。
幸い、ドール級はオレたちに狙いを定め、クラスの連中の方に行く気配はない。だが、いつまでも押さえ込めそうにはない。
「どうするよタツキ」
『どうもこうもないぞトオル、やるだけだ』
「へっ」
こういう時のタツキの思考は実にわかりやすい。
「ま、それもそうだねえ!」
ドール級の攻撃が迫り、オレたちは互いに散った。
一振一殺は無理だ。ならば、数を打って削っていくしかない。
何回かの交錯を繰り返して幾らかのドール級は仕留めたが、フォルクス粒子の消費は少なくない。
それと、うまくシールドで受けていたつもりだったんだが、
『トオル、もうシールドで受けるのはやめたほうがいい。左肩の警報は深刻なやつだよ』
「だよなあ」
機体のコンディション画面、左肩の第一モーターは警報で赤く光っていた。コックピットの中にもモーターの焦げる臭いが漂っている。
『おおいなあ』
タツキの声にも、疲れが見え始めていた。
正直、これ以上この質と量はきつい。
『もう少しだけこらえて、二人とも』
『多分シノビはあと一匹…………トオル、タツキ、奥だ! ロボが来るっしょ!』
と、オレを取り囲んでいたドール級の一体を、ピンク色の粒子束が貫いた。
クラスの連中がいる通路とは反対側、オレとタツキの正面から現れたのは、シクの砲撃戦仕様機、
「六三○!」
『五六四でしたか! ありがとうございます!』
『まずはこいつらを倒しましょう!』
「おう! タツキ、あと少しだ、きばれよ!」
『わかった!』
後方からもロボが出てきたことで、ドール級たちの動きが一瞬止まる。これを逃す手はねえ。
「そっちは向かって右を頼む!」
『『『了解!』』』
「タツキ、オレたちは右だ!」
『え? われらは左じゃないのか?』
「良いから行くぞ!」
もーいちいち面倒臭いなあ。
そこからオレとタツキは六三〇と連携してドール級を駆逐していった。
クラスの連中が最後のシノビを倒して加勢に来た時には、もうドール級はほとんど残っていなかった。DEWACSシクのパイロットのツバサは、だいぶ居心地悪そうにしていた。どんまい。
「とりあえず元気そうでよかった、助かったぜ」
『いえ、こちらこそ。あの五六四に救助していただいて光栄です』
「よしてくれよ、同じ学年だろ」
『私たちももう少しでやられるところだったけどなー。ミイラがみいらとりって奴だな』
それじゃミイラ再生しちゃってるじゃねえか。
『ちょっと違うわよ、タツキ』
シェーレたちが会話に入ってくると、ゴンっと、小さな衝撃音がオレの機体に走った。
「?」
なんだろ、デブリでも当たったか?
この衝撃だと左肩あたり――
「げっ」
そちらにシクの頭部、メインカメラを向けたオレはギョッとした。
左肩にいたのは――
「な、何やってんだユイ!」
無重力だからって泳いできやがったな。
思わずオレが外部スピーカーにして叫んでしまうと、ユイが耳をふさぐ。
「あ、わり」
ユイはシクの顎のあたりを軽く蹴る。
『なんだよー、トオル。左肩の様子を見に来たんでしょ』
「ここじゃ整備できないだろ」
見たところ、予備パーツを持ってきた感じでもない。
『応急処置くらいできるよ。無重力のうちにやっちゃったほうがいい』
「そうかあ?」
まあ確かに重力のあるところで左肩を整備しようとすると今よりは苦労するだあろう。
『ちょっとそこ、人が真面目に話してる時にイチャイチャしないでくれる?』
「イチャイチャって、お前これのどこが――おい待てお前ら、なに射撃装備を構えてやがる」
いちゃついてなんかねーだろこれ。
『話を聞きなさい、面倒なことになってるようよ』
「あ?」
『まず、ここにいる六三○の機体が少なすぎるでしょう』
「そうだな」
殿でもしているのかと思ったが、それにしちゃあまだ来ないのは妙だ。シェーレの口ぶりだと、これで残存機体のすべてってわけでもなさそうだしな。
『足回りをやられた機体でもいるのかな』
《ツワモノ》の左肩アクセスハッチを解放して整備を始めたユイが言う。
『それならまだまだよかったんだけどね』
「ま、いい。とりあえず行ってみようぜ。六三○、案内してくれよ」
『はい、こっちです』
六三○の三機がスラスターを噴いて反転する。
「なんだってんだか」
ユイを振り落とさないように細心の注意を払いつつ、オレも機体を動かす。
無重力区画は存外長く続き、重力が戻ってくる頃には左肩の応急処置は済んでいた。
オレたちと合流する過程で六三○が撃破したのか、モンスターの妨害に遭わずに進んでいくと、遠くに機影が見えてきた。
見えてきたが、
「なんか、多くないか?」
一クラスの保持するロボは大体十機前後だ。それ以上持っていても整備の手が追いつかない。
だが、向こう側にはざっと十数機はいる。しかも、六三○の機体のうちの三機はこっちにいるんだ。
……嫌な予感しかしねえ。
『うへえ』
何か見たらしい、前を歩く機体のパイロットがそんな声を回線に乗せた。嫌な予感しかしねえ。
「あー………………」
ディティール鮮明になったメインカメラの映像を見たオレは、そんな声を出してしまっていた。
面倒だ、こりゃ。
前の機体群は一クラス分じゃあなかったってことだ。
いたのは六三○組と、二二五と肩にマーキングされた機体の一群だった。
二二五。
もうこの数字だけでオレたちのテンションはだだ下がりだった。
ブシン工業高校のクラスには大きな境界線がある。三〇一以上のクラスと、それ未満のクラスだ。
三○一組以上のクラスには試験を受けて入学した連中。んでもって三百未満は学校に寄付金を積んで入学した連中だ。
大雑把に言うと、三百未満は金持ちのボンボンが入るわけ。
試験もあるにはあるらしいが、多少合格点に満たなくても金で何とかなる、らしい。貴族組、なんて言い方もされる。
金持ちなので機体も大体自前の、性能のいいやつだ。シクシリーズなんて一機もいやしねえ。シクもいい機体なんだけどな。シクは量産機で、安っぽいイメージがあるらしい。
んでもってこれはオレの感覚だけど、百後半から二百半ばまでのクラスが一番タチ悪い。どうもオレたちのことを見下したいらしいんだな。
それよりも数字の若いクラスはそんなことに時間を割かないし、三百に近くなってくるクラスはあんまり金持ちじゃないんで、そんなに威張り散らしてくることもない。
そういう意味で、二二五ってのはもう面倒くさいゾーンのど真ん中なわけで。
回線がオープンに切り替わったせいで誰も何も言わないが、もう帰りたい、関わりたくない的な空気が漏れてきていた。
オレも気持ちは同じ。
『お話中失礼するわ。六三○を救助に来たのだけれど』
こういう時、臆することも面倒くさがることもなく切り込んでいけるシェーレはマジですごいと思う。
『ああ、五六四ですか。ありがとうございます。すぐに――』
『おい、話は終わっていないぞ』
もうすでに嫌な感じしかしない声の主は、多分六三○の指揮者用型小型ロボ・
シクシリーズをはじめとしたキョウサン重工製ロボとは一線を画す、曲線を多用した細く繊細なシルエット。《マダラ》もシクと比べると細身だが、それよりもさらに細い。
エドモンド社製EDM-55-A《シグルド》。確かに高性能な機体だが、エドモンド社製のロボとしてはいささか古い。確か《シグルド》は外観が美しいとかでアンティーク的な価値がつく。おそらく安くはない。正直、同じ値段でももっと性能の高い機体はある。キョウサン重工製のロボなら《ノブナガ》シリーズも買えるだろう。人には色々とあるんだろうが、オレに言わせりゃつまらない見栄だ。そしてつまり、そういうプライドを優先する面倒な奴、ということはわかった。
『何か問題が?』
『貰うものをもらっていない』
『貰うもの、とは?』
『この先のマップだ』
うへえ………………。
オレの内心はそんな感じだった。
正確な地図ってものにどれだけの価値があるかなんて、改めて言うまでもない。
ここは変化の激しいサブダンジョンだからメインダンジョンに比べて価値は劣るが、新しく踏破されたダンジョンのマップは職員室にそれなりのポイントで売ることができる。
しかも、いつの間にか深い層に進んでしまうような危険なダンジョンのマップだ。少しは色もつくだろう。
六三○の機体はそれなりに疲弊しているようだから、マップの分のポイントがないと埋め合わせは苦しいはずだ。
それをこいつら二二五はよこせという。
いくらでだ、なんて聞く気も起きない。聞くだけ無駄だ。こいつらはオレたちと取引をしようなんて考えちゃいない。それならこんなことになっちゃいなかった。
こっちとしては無駄にフォルクス粒子を消費したくはないんだけどなあ。
「チッ」
周りを見てオレは小さく舌打ちした。
こいつら、囲もうとしてきやがる。うちの連中もそれをわかってるんで、ジリジリ動いて完全に囲まれることはないが。
『さすがにこれを渡すわけにはいきません。渡すのなら相応のポイントを払っていただかなくては』
こんな連中に絡まれた六三○は不幸だねえ。
んでもってここまではっきりと拒否するのも大したもんだ。オレたちが来たってのもあるんだろうが、ただじゃやられないっていう気合が滲んでいる。
オレはそのうちにこっそりシェーレ達の乗る
フォルクス粒子の防御機構はもちろん《タイコウ》にも搭載されているが、《タイコウ》は武装が貧弱で打たれ弱い。戦闘力よりも通信、分析機能、そして人員輸送能力が重視された機体だ。オレたちがしっかり守らないといけない。
こっそりこっそり。
『おい貴様! 何動いている!』
失敗!
クラスのみに切り替わった回線から口々に『バカ』と非難された。この距離で気づかれないのは無理じゃね?
てゆうかさ、
「動くなって言われてもよ、なんでそんなこと言われなきゃいけねえんだ?」
もう思いっきり言ってしまったわけだが、クラス回線から非難の声は上がらなかった。もうみんな限界だったようだ。
こりゃあもう、戦闘になるかもな。
誰かが『悪いな六三○』とつぶやいた。
『何をふざけたことを、貴様らが我らに奉仕するのは当然だろうが』
「……はあ」
機体の差はあるかもしれない。
寄付金の有無っていう違いもあるだろう。
だけど生徒って点は同じなんじゃねーの?
協力ならまだしも、明らかに下に見られるのはあれだ、少しいらつくな。
『そもそも、そんなスクラップを使っているような貴様らにダンジョンで何ができると言うのだ』
「……アァ?」
オい。
こイつは今なンテ言った?
スくらップ?
そウ言イヤがっタノか?
コの、《ツワモノ》を、スクらっプ?
周リノ連中モ、ワラッテヤがる。
こいツラの総意ッテコとか。
「ヒヒ……」
そうイウコトなラ仕方ナイヨナ。
アイツラがイケナインダ。
「ヒヒヒヒヒヒヒヒヒ………………」
『全く……』
『……………………』
『あー』
ヤッテヤロウジャネエカヨ。
「ギャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!」
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