クライマックスブランコ
もうお終いだ。大人の技術ではない。
俺は後悔している。足に地はついていない。
俺は酷く狼狽している。空(くう)を舞って猛禽類の目線。
俺は諦観し始めた。公園の枠を超えた綺麗な放物線、俺の行く先。
俺は空中であの鎖の赤錆を、劣化の証をこの目で見たのを反芻している。
そもそもいい歳こいて仲間達の煽りと安い酒の深い酔いにかまけて深夜零時手前騒ぎながら公園のブランコでふざけ始めたのが判断としてアウトであった。明らかなる経年の施設でエキサイティングなど。阿呆である。馬鹿である。腑抜けの腰砕けである。
ブランコに箱乗りし、成人男性三人の力で以て終焉の背中を押され、振れ幅がどんどんと拡がり、そろそろもういいよと笑いながら言おうとした瞬間バチン、と終わってる音が俺の耳から脳へと伝達された。
ブランコの破損により、俺、宙へ飛び出して、丁度振れ幅U字の前面で鎖外れた為、ゆうに公園の圏外へ人間大砲如く放たれた。俺。
目の前にはビル群、住宅街、繁華街の、蛍光灯やネオン、暖かな家庭の光で溢れていて、俺最後の風景が素敵な文明で良かったと涙腺が緩み、その光源たちは涙で外郭が歪み、まるでアート作品のようで、余計に泣けてきて、しょうもない大人の技術のお陰で、素晴らしい大人の技術を見れたと、観れたと、高丘から放たれゆっくりと終焉の地面が近づくのを待ちながら余韻に浸っていた。
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