空間認識
暑い。とにかく暑い。が、そんな瑣末な事はどうでも良くて、私は今熱されていく私寸法の箱の中から飛び出し、恐らく悲しみ慈しみ泣きながら寿司を喰うてる遺族達に生き返りましたじゃじゃーん!!とユーモアのあるポーズと発声で彼らを安寧、安堵、安心させてやらなければならない。
真っ暗な漆黒の闇の隙間から、炎がちりちりと、しょうもないチャッカマンの様な漏れ火が私の空間に入り込んできている。この場では引火の恐れのある脂汗をかきながら、私はとにかくこの空間、箱を破壊しようと試みている。しかし私寸法の箱である為に、ジャストなサイズ感で、力を溜めて前?上?左?側面?寝そべっているので左右の方向感覚も分からないが、兎に角、ぴったりと箱に収まっているので力の解放もままならず破壊活動が全く上手くいかない。
よく見れば私の周りには、私が生前、いや今も好きな書物やCD、可憐な花やらよく分からん多分あいつが入れたふざけた物などが敷き詰められてチャッカマンで原型を少しずつ崩していっている。ふざけるな。私の所有物を死んだからといっていや死んではおらんので余計に、燃やす予定の箱に放り込むとはどういう愚行だ、と憤慨しながらやはり滞る破壊活動を行って、死からの逃れ、復活の生を、他人に誇示しなければと焦って、額は脂汗でてらてらと光り、いつの間にか着せられている全く趣味ではない衣服の裾が焦げ付くのも気にせず肘やら膝やらで全身をばたばたさせている辺りで気が付いてしまった。
箱を壊したところで待っているのは業火。手放しでまた死ぬどうしようもない殺人的な概念が、迎え入れてくれるだけであると脳で閃いてしまった。
私はぴたと抵抗をやめ、先程よりもだいぶ漏れが大きくなっている、チャッカマンではなくなった純真な炎に囲まれながら、右?側面?上?床?肩甲骨の辺り?にあった学生の時分よく読んだ回りくどい文章の文庫本を手に取り、純真の灯りでゆっくりとあの頃を馳せながら活字を読み始めた。
私も寿司を喰いたいなあ。
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