斑点

 壁に黄色い斑点。斑点は丁度見事黄色でいて、きらきらと蛍光のような施しを感じる程に黄色、眩く見目麗しい具合である。私はその黄色斑点の源流を排出し終えたが、姿勢をそのままに排出し終えていない顔で四方の壁の中に突っ立っている。


 本来の行動ならば、黄色斑点が生み出された時点で用は済んだ欲求は満ちた、あとは人などを殺すだけであるははは、などと往来に出る、或いは、その斑点を水気の含んだ紙布などで拭き取り、その時に感ずる筋力の衰えに憂いたりするが、私は全行程を無視し、陰茎をしまいもせず突っ立っている。

 実のところ監視されているのだ。組織又は個人によって私の行動は逐一数値化され、データとして書面に出し、月一の会議で話、笑いの種にされているのだ。これは当人になって初めてその苦しみが分かるもので、今、恐らくあなた方は、私を気違い気狂いのように感じているかも知れないが、それはあなた方が組織又は個人のコネクションによって、真の概念を偽の概念に、偽の概念を真の概念にすげ替える義務教育、高等教育、人間社会、老人会を知らずのうちに通ってきたからであり、ある意味ではあなた方の反応は正常、しかし真実は私の方にあって、監視され、揶揄の対象になるというのはやはり気分が悪いものなので、如何にしてそれらを切り抜けられるか熟慮に熟慮を重ねた結果、前述の黄色斑点静止芸なのである。


 これはいわば私の常識とは食い違っている、世間の「通常」「慣習」から意図的にはみ出すことで想定外の事態を作用させ、監視元に混乱、エラー、引いては撤退を促すための計画であり、この壁には、乾ききった黄色斑点、新たに黄色斑点、更に矢継ぎ早黄色斑点といった具合に私の努力が見て取れる。斑点の濃度分、私は空虚を見つめ、組織又は個人と闘ってきたのだ。


 しかし組織又は個人は一向に監視を止む気配なく、意気は朧、最早あなた方は、愚なあなた方は、その斑点だかの場所以外でも奇天烈なことをして、その目的に近づく分母を増やせばええじゃないか。だとか考えているだろうが、私も人間であり、そこかしこで急激な休止や珍妙な行いをしていては事故に遭ったりあらぬ疑いで公安にマークされたり生活は困窮するばかりである。であるから私は、陰茎を出す人目がない機会のみに限って試みているのに、悪な、辣なあなた方はそのような事も慮れずに短絡的な物言いでこちらを苛立たせる。組織又は個人の梅毒が。私は本日も排出によって黄色の斑点と突っ立ち。けれどもこれからも監視の中止が望めないようならば、この壁の斑点の様に、私も突っ立ったまま空間に染み入ってしまいたい。

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