第14話 伝令

 朝日に鼻先をくすぐられる感覚で目が覚めた。


 ふかふかのベッドで寝ることに身体が慣れていないのか、首元に違和感を感じる。


 無意識むいしきに後ろ足で違和感いわかんを取り除こうとしたところで、彼女はようやく首輪の存在を思い出した。


「……寝ぼけてますね。あれ、カリオスさんがいない……」


 昨晩、隣で眠っていたはずのカリオスがベッドにいない。


 あわててあたりを見渡すと、兵士の遺体をあさっているところだった。


「なにをしてるんですか?」


 声をかけながら、彼の元へとける。


 なにやら紙を見つめている様子の彼は、神妙しんみょうな顔つきで紙片しへんを地面に広げた。


「女王の逆鱗げきりんに触れた。至急応援求む。なんのことでしょう?」


 そんなことをつぶやく彼女に向けて、彼が地面になにやら書き出す。


「『兵士は伝令、ミスルトゥから王都に応援要請』……それはもしかして、昨日の『影の精』が関係してたりするんでしょうか?」


 正確な情報が少ないのでなんとも言えない。推測で動くよりは、確実な情報を掴んだ方がいいだろう。


 彼女はきつけられるように、ミスルトゥへと続く街道の先を見据みすえる。


 なんとなくだが、空にニヤっと笑うサーナの顔が浮かんでいる気がした。


「サーナさんは、私たちを『応援』としてミスルトゥに向かわせたんでしょうか?」


 根拠はないが、彼女ならやりかねない気がする。


 それを聞いたカリオスも同じことを考えたのか、目を見開き、大きく項垂れた。


「取り敢えず先へ進みましょう」


 それから2人は焚火の後片付けを終わらせ、先を急いだのであった。

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