第15話
…急く脚よ追いつけバスに冬昴…
私は聞き取れなかった響子の言葉を繰り返して、
「あたし、まだ好きな人居ないよ」と、欠けた言葉を拾い合わせてはっとした。
過去にもあった。肝心な言葉を聞き損ねて大事な人を失ったような後悔がある。だから、もう繰り返したくないと咄嗟に思ったのだ。
間に合うも間に合わないもない。言葉拾いは間違えかもしれない。でも確かめたい。私はバスを一心に追いかけた。
運がいいぞ。七条烏丸の渋滞で見覚えのあるバスに追いついた。高鳴る動悸は響子の姿を車内くまなく探し求めた。
しかし響子の姿は何処にもない。バスの背面の映像は、余韻の残すエンドロールの様に一致していたはずなのに。そうだな、渋滞とはいえそんな都合よくいくはずもない。私の天使は何時も思わせぶり。仕方なく次の停留所でバスを降りて、私は京都駅に向かって歩き出した。
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