第5話

 …不如意の縁とや今宵の木の葉舞ふ…


 私のキョトンとした視線が女性は気になるものか、こちらを向いて柔らかな微笑みを浮かべて軽く会釈をしてくれた。

 普段の私なら会釈を返して直ぐ立ち去るはずなのに、今日は何故か饒舌だった。

「こんばんは。日も落ちて少し寒くなりましたね」

 笑顔の似合う女性はやはり良いものだ。いい年をした男が言うのも何だけど、世間話が苦手で喋りの滞りが恥ずかしいと言うか、普段ある初対面の硬さの様なものを今宵の私は不思議にも感じなかった。

「撮りましょうか」

 私にしては上出来な接し方と言える。女性は「お願いできますか」と、満面の笑顔で私の好意を受けてくれた。

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