第2話

…買い食いの饅頭久し冬隣り…


 明るく開け放たれた店先のショーケースの中には、甘くて美味しそうな饅頭が並べられていた。

「どうです、お土産に」

 店の御主人だろうか。私は情の有る笑顔と声にむかい、夕暮れ時に中てられ人恋しく小腹も空いていたから、遠慮なく一個でも良いですかと言ってみた。

「えー、かまいません。温めなおしましょう。ご近所ですか、今お帰りで」と言われて……、えっ、この私が京都の住人! ちょっと嬉しい気分になった。

 大人になってから買い食いなどしないのだが、まあいいや、子供じみた気分になって、私は買ったばかりの祇園舞妓焼をほおばってみた。

 ホクホク柔らかで塩気の有る甘みが広がると、おりふし感じる孤独の不安はもうなく、気分とするなら子供の頃に帰れば当然ある家の団欒に代わっていた。

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