その兄って奴最低じゃん
「洗い物くらいはやります……」
天音はそう言うと台所で洗い物を始める、僕はポットでインスタントコーヒーを入れ部屋に戻った。
お湯を沸かしてちゃんと入れたかったんだけど、天音の横に並ぶのはまだ無理そうなんで……
部屋に戻ると早速PCを起動させる。
「ヤバいなーリン待ってるだろうな~」
今日はいつもよりだいぶ遅いログイン、リンが待ちくたびれてるんじゃないかと焦る。
いつもの画面、いつも通りまず見るところは友達の欄…………
「あれ?いない……」
待ちくたびれて落ちちゃったのか……少し不安を覚える…
暫くいつもの場所でリンをまちつつ、ボーっと画面を見ていた、考えていることは妹の事……
痩せた身体、尖った言葉なのに物凄く弱気な性格、僕と1年の間殆んど口も聞かずに暮らしてきた……
そんな彼女が一念発起で変わろうとしている……好きな人が出来た、だから何としてでも変わりたい、プライドも何もかもかなぐり捨て僕に頭を下げた。
「凄いなあいつ……」
第一印象から最悪、今日初めてちゃんと話したけど、もっと最悪な印象を受けた、正直めんどくさい奴、関わりたくないとさえ思った。
「でも、僕とあいつは兄妹、そして、同じ志しを持っているし」
好きな人の為に頑張る、好きな人の為に変わろうとする。
男嫌い、当然僕の事も大嫌いなんだろう……それでも僕に頭を下げる、そんな妹を本当に凄いと思った、協力したいと思った……
「僕はあいつを全力でサポートする……」
そう思った、そしてそれは僕にとってこれから辛い事を言わなければいけない……
そう考えていると、友達欄にリンがインしたと表示
『ルナーーこんーーー、ごめんね、今行くから落ちないで待っててえええ』
『リン、こんーーーー大丈夫だよ~~待ってるよ~~~』
リンが走ってくる、良かった今日はもう来ないかと思った。
『ルナごめんね~~遅くなって、待ったでしょ?』
『ううん、僕もさっき来たところ、リンが待ちくたびれて落ちちゃったのかと思ったよ』
『落ちないよ~~朝まで待ってるよ~~』
『それは、なんかあったときに困るからやめて~~』
『あははは、じゃあ12時まで待つよ~~』
『シンデレラかよ~~』
『あははは、来なかったらガラスの靴をここに置いておくから~~』
楽しい、本当にリンとの会話は楽しいでも僕は言わなければいけない事が
少しチャットの間が開いた、ここで言う
そう思いキーボードを叩きリターンを押す
『あのさリンに言いたいことが』
『あのねルナに言いたいことが』
『え』
『え』
同時に同じことを言う、え?何?怖いんですけど……
『な、何?』
『えっとリンからどうぞ』
『ううん、ルナから言って』
『いや、リンから』
気になって喋れない、なんだろ突然……
『えっと、じゃあ、あのごめんなさい、私これからあまりログインできないかも』
え!僕と同じ事を先に言われる……
『あのね勘違いしないでね、ルナと喋りたくなんじゃないから、その、ルナと会うために私頑張ってるから!!』
『え?そうなんだ、実は僕も同じ事を言おうと思ってたんだ』
『そうなの?』
『うん、ちょっとわけがあってさ、妹の手伝いをしなけりゃいけないんだ』
『妹さんがいるんだ、何かあったの?』
『うん、まあ身内の恥を晒す訳にはいかないし、詳しいことは言えないんだけど、あ、決してリンを信じてない訳じゃないから』
『ううん大丈夫、私もねストーカーで人を信じられなくなっていて、ルナと会うのは怖い、でもルナを信じる為に、男の人を怖く思わないように協力してくれる人が出来たの、だから、ごめんねあまりログインできないかも』
『協力してくれる人?』
え?協力するって、男がだよな、え?それって……
何か心の奥で凄く不安な気持ちが芽生える、リンと男……
『あーー、ルナひょっとしてヤキモチ焼いてる?』
『えーー、そんな事ないよ』
『えーーー焼いてくれないの?』
『じゃあ少し』
『えへへへへ、大丈夫だよ、兄だから』
『お兄さんいるんだ?』
『うん、凄く嫌な兄で、私の事ブスって、超性格悪いし、今同じ学校に行ってるんだけど何かモテてたみたいで、でも相手を作らずに片っ端から振っていたらしい、多分エゴイストでナルシストで、自分がモテる事にいい気分になってるんじゃないかな?』
『えーー! リンのお兄さんに、こんな事言いたくないけど、なんだそいつ、最低じゃん』
『うん、でも身近にいるのは兄だけだから嫌だけどお願いしたの、そうしたら協力してくれるって』
『大丈夫?僕の為に無理しなくていいよ、夏休みとか期限つけたけど、もっとゆっくりにしても』
『ううん、それじゃ多分一生無理だと思う、だから期限がある方がいい、私頑張る!』
『僕の為に、ううんダメだねこれじゃ、リン頑張れ!僕はリンを信じて待つよ』
『うん!ありがとう、出来るだけインするから』
『うん!今夜は大丈夫なの?』
『うん!ゆっくり話そうね』
『わーーい、早速だけどさ、昨日のアニメみた?』
『見た見た、超感動したよね』
『僕ざまーーみろで泣いちゃった』
『私もーー、最初は何これっておもったけどさーー』
####
朝までお喋りしてしまった、本当にリンとの会話は楽しい、これで実際に会って話したら一体どうなるんだろう……
もうじきリンに会える!!!
僕は期待に胸を膨らませていた、そしてそのリンの兄という嫌な奴に少し嫉妬していた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます