仮想恋人


 「それで、仮想恋人って何をすればいいんだ?」


「何をする気何ですか!、いやらしい……」

どうでもいいけど僕の目を一切見ないでこういう事を言っている……


「なるほど、僕は君の暴言に耐えて、君の為に恋人の振りをして君のその症状を治す協力をしろと……」


「はい!お願いいたします!」


「だが断る!!!」


「ええええええええええええええええ」


「なんで僕がそこまで君の為にしなくちゃならないんだ?」


「お兄さんしかいないんですううううう」


「クラスの男子とかに頼めば?」


「もう私に話しかけてくる人なんていないんですううううう」


「みんなそうやって拒絶したんだろ!」


「だって近づいて来られたら怖いんだもん」


「だからってそんな拒絶の言葉を吐く方が怖くないか?、恨みを買うだろ?」


「大丈夫です、恨みを買うより逆に怖がられていますので一石二鳥です!」


「どう考えても二兎追うもの一兎をのような」


「寄って来られないだけ確実に一兎は得てます!」


「どうでも良いけど僕に利点はまるでないよね!」


「それは……美智瑠さんが言ってたから、私との関係に悩んでるって」


「うん、まあそれは」


「だからこれは私達の為でもあるんです、お願いします」

 妹は深々とお辞儀をする……


「……好きな人がいるって言ってたよな」


「はい……」


「その人の為に?」


「はい……私の大切な人……私の理想の人なんです、優しくて、誠実で、頼りがいがあって、その人の為なら何だってやります……」

 彼女は一瞬僕の顔を見る、そして再びうつ向く……でも何とかしたいという思いは伝わってきた……


「そして、あの……私目は合わせられないですけど、男の人とここまで直接話せたのは本当に久しぶりで……お兄さんとなら、頑張れそうな気が…………」



「そうなんだ…………僕も分かるよ、凄くよく分かる、僕もそうだった、彼女から勇気を貰った…………うん……分かった、協力する!君の…………天音の恋に協力する!」


「本当に?!」


「ああ、協力するよ!、なんかやる気が出てきた、何だか分からないけど僕の中でやれって言ってる気がする……よし!そうと決まれば、まずは…………そうだ一緒にご飯を食べよう!」


「え?」


「デートと言ったらお茶に食事だろ?まずはそういうシチュエーションに慣れよう、後は天音は痩せすぎだ、細い子が好きな男は多いけど、ガリガリなのは駄目だよ、天音はろくなもの食べてないだろ、夜台所にいつもゼリーとかしか置いてない……そんなんじゃ駄目だよ」


「で、でも食欲がなくて…前に拒食症になってて……それから食べられないの……」


「全然食べられないわけじゃないんだよね?」


「少しは……」


「よし!ちょっと待ってて」

 僕は立ち上がり台所に向かう……


鍋に火をかけお粥を作る、もうひとつの鍋を使いかつおぶしで出汁を取り煮詰める、塩と醤油で味を付け片栗粉でとろみを付ける。


 茶碗によそい、お粥の上にそれをかけ、レンゲと共に天音に出す。


「最初は胃がびっくりしちゃうから、こういう消化の良いものからね、風邪ひいた時に良く作るんだ、食べてみて」


その茶碗をじっと見ていた妹はレンゲを持ち恐る恐るお粥を口にする……



「おいしい……」

そう一言言うと、さらに口にしてくれた。


「少しずつゆっくりやっていこう天音、身体も、男性恐怖症も、僕らの関係も……」


「うん……お兄さん……ありがとう……宜しく」


妹は、お粥を食べながらちょっとだけ上を向き、僕を見つめてくれた。


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