天音復活計画その1


 「それじゃまずは僕と顔を合わせる練習からだね」


「無理です」


「即答!!、ずっと俯いてたら何も出来ないでしょ?」


「何をするつもり何ですか、イヤらしい……」


「またそれか……何もしないよ!」


「する価値も無いんですね?どうせブスですから」


「ああ、もうどっちなんだよ、て言うか治す気はあるの?」


「あ、あります……でも、目を見れない……怖い……」


「僕そんなに怖いかな~~?」


「お兄さんが怖いんじゃ無いんです、男の子が怖い……」


「じゃあ、僕を女の子と思えばって、ううなんか嫌だけど……そう思って見たら?」

 自分で自分のコンプレックスをえぐるってほんと嫌だけど……


「でも、そんな格好の女の子なんていないし……」


「あーー、制服だもんな、えっとじゃあ、着替えて来るか……でもあるかな~? 女の子に見える服……」

 ユニセックスの服ってあまり持ってないんだよなー、本気でナンパされるし……そして男ですって言うと、さらにグイグイ来る奴とかいるし……


「あの、私の……もう着ない服で良ければ……」


「ええええええええ」


「でも、そうじゃないと……」


「うううう、わかったよ、協力するって言ったもんな……」


「じゃあ持って来ます……」

 天音はリビングを出て部屋に向かった……


「マジか……まあそんなに凄いのは持って来ないよな」

 頭の中でパンツルックの女性服を想像していた…………そして天音は僕の想像の斜め上を行く服を持って来る……



「あの……、これはもう着ないと言うか、着れないので……」


「えっと、これを僕に着ろと……」


「はい!」


「まある意味もう着ないよね……前の学校の制服……」


「前の学校なら、なんか友達感覚になれるかもです!」


「ムリムリムリムリ」

 

「ええええええ、着てくれるって言ったのに、協力してくれるって……」

 眼鏡の下から涙が流れる……


「泣くな、泣くな、私服、私服にしてせめて」


「嫌です!お兄さんが着たらもう着れないじゃないですか!」

 なんだそれ……勿体ないお化けでも出るのか?てか僕どれだけ汚い存在なの?


「でも制服って、完全に変態じゃん」


「私しか見てないですから、大丈夫です」


「何が大丈夫か、わかんないんだけど?」


「もうこれ以上変態って思わないですから!」


「えええ、すでに僕、天音にとって変態なのかよ?」


「そんな綺麗な顔した男の子を変態と思わない女の子なんていません!」


「どういう意味だよ!!」


「とにかく大丈夫です!、これを着てください」

 天音はハンガーごと制服を僕に押し付ける……


「うううう、わかったよお」

 僕は泣く泣く制服を着替えに部屋を出た。


 部屋に入り覚悟を決める、家で着る分にはまだいいか……


「女子の制服……まずどう着るの、ああ、なんか天音の匂いがする……洗濯してんのか?、えっとチャックを下げて、このホックを止めて……ウエストちょっとキツイけど入るな、えっと……」

 着替え終わり鏡に写る自分にへこむ、どこからどう見ても女子……


「なんで僕がここまで……」

 約束した以上やるしかないんだけど、うううう


 部屋を出て、恐る恐るリビングに入る、天音は相変わらず俯いていた。


「あの、着ましたけど……」


 ゆっくりと顔を上げる天音……


「…………………………かわいい……」

 僕を見てポツリと呟く……


「えっと、もういいかな、顔見れたと言うことで……」

 足元がスースーして気持ちが悪い、凄く不安なんだけど、女子ってよくこれで外を歩けるな……


「だ、だめです、そのままで!、ほら私見れてます、お兄さん見れてます!!」


「おおお、目があってる、凄い進歩だ!って、これって意味あるの?」


「あります、意味はありありです!このまま、お喋りしましょう!」


「面白がってない?」


「そ、そんな事、少ししか思ってません!」


「はっきり言うね……、わかったよ、じゃあこれで……」


「はい!、じゃあえっとえっと、朋ちゃんはどこのブランドが好き?」


「女子同士の会話をしてどうする?、誰が朋ちゃんだ」


「あああ、つい昔の友達に会ってる気分に……」


「これ本当に意味あるの?」


「多分?」


「多分になっちゃった! 僕、着ただけ損なんじゃ?」


「でも、今はお兄さん話してます、ほら、今も目を見れる」


「そうなのかな~~?」


「大丈夫です!」



「何が大丈夫かさっぱりなんだけど?」


 とりあえずコーヒーを飲んでで落ち着く


「えっと、それじゃどうしよう」


「えっとえっと、目を見れて話せるんですから、次は一緒にお出かけとか?」


「勘弁してください」


「でも、この次はデートじゃないですか?」


「なんでだよ!」


「だってだって、じゃあ後は家で何をするんですか?イヤらしい……」


「またそれか……そこから離れてくれない?はっきり言うよ、僕好きな人がいるの!その人には誠実でいたいの、天音に、ましてや妹に手を出すわけないでしょ!」


「ううう、わかりました……じゃあ、どうしましょう?」


「とりあえず、もう一度着替えて来るから、その状態で話そう」


「はい……」


 僕は私服に着替えてリビングに戻る……おーーい天音ーーー


 下を向いている天音に声をかけるが、チラリと見ると、また下を向く……マジか……


「怖くて……見れません…………」


 ふりだしに戻る……

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