リンの瞳


 『ルナ~~?』

 リンからの個人チャットが来る


『あ、いま行くね、いつもの所?』


『うん?そうだよ?』

 わざわざ聞くまでも無い事を聞いてしまい、リンが戸惑っている……ヤバい?……

 僕はすぐ近くに居るんだが、少し遅らせてリンの前に行く、さっきの奴は既に居なくいつもの木の所でリンが一人で座っていた。


『こん~~』


『こん、ルナどうかしたの?』


『え?』


『インして居場所を聞くなんて、何かあったの?』

 そう、僕たちはもう毎日の様にこの木の所に来ている、ゆえに、何処にいるなんて聞くことなんて今やあり得ない……やってしまった……


 何とか誤魔化そうと思ったが、メールやラインと違ってチャットはその瞬間に返事を打たないといけない、そしてこのゲーム、かなり遡ってログの確認が出来る、その気になってセーブすれば、すべてのログを保存する事も出来てしまう……


 つまり……現実よりも嘘がつきにくい、嘘をつくとその嘘をいつまでも覚えておかないと、辻褄が合わなくなってしまう……一々過去ログで自分が何を言ったのか確認するなんて不可能だ……


 僕はそれを知っている、リンがログの確認をしているかは知らない……でもそういう覚悟でリンと会話している……僕とリンが会話を始めて約2年、膨大なログが存在している、その気になれば嘘がすぐに分かるかも知れない……そしてそんな事より……僕は出来ることならリンには嘘をつきたくない、誠実でいたい。


『ルナ?どうしたの?ラグってるの?』


『えっと実はさっきここに来たんだ』


『え!』


『そうしたらリンが誰かと話しているチャットが入ってきて』


『聞いてたの!』


『うん、ごめん』


『ち、ちkd違うの、あれはあsのdっじぇ』


『リン落ち着いて、大丈夫僕は信じてるから』


『ちがうのあれはあのひとがしつこいから』

 ゆっくりひらがなを打つリンに少し安心する……でも句読点が無いから素人の小説のように読みにくい……


『わかってるよ、大丈夫、ごめんね立ち聞き、みたいな事をして』


『ううん、きがつかなかったわたしがいけないの』


『でも、ネカマ宣言はびっくりしたよ』


『ああ言えば早く他に行ってくれるから、本当に男の人ってやだ!!』


『えーーー僕も男なんだけど』


『あ!そうだよね、ごめん』


「ううん、いいよ、そういう奴が多いってのは僕もそう思うし」


『ううんルナは違う、ルナは他の人と違うの』


『リン』


『今も嘘をつかないでちゃんと言ってくれた、ルナなら信じられる』


『僕もリンを信じてるよ』


『本当に?』


『本当だよ』


『ほんとに、本当に?』


『ほんとに本当に!』


『本当にわたしが女の子って信じてる?』




『本当に信じてる』


『あーーーーーー、今間があったーーーー』


『え、えええええええ』


『ううう、ルナ信じてないいいいいい』

 リンがキャラをモーションを使い泣かせる。


 僕は汗のモーションを使う


『本当に信じてるって、本当に』


『ルナ!ちょっと待ってて』

 そう言ってリンは離席中の表示にする……



 そうして20分……全然戻って来ない……え?怒っちゃった?

 凄く不安になってくる……


 すると離席中の表示が外れリンが喋り出す。


『お待たせ』


『ああ、帰ってきた、怒っちゃったのかと思ったよ』



『ううん、怒ってないよ、ごめんね』


『良かった』


『えっとね、今から書くアドレスを見て欲しいんだけど、一つ約束して』


『え?』


『あのね絶対に保存しないで欲しいの』


『え?何を?』


『とにかく約束して!』


『え、あ、うん』


『じゃあこれを見て!』

 リンはとある写真投稿サイトのアドレスとパスワードを表示する。


『何これ?』


『いいから見て』


 僕はそのアドレスをコピーしてブラウザーを立ち上げ、アドレスをペーストする。

 サイトが表示され要求されたパスワードを入れると1枚の写真が見れた…………え!!!!


 その写真は、さっきまで離席中の表示がされていたリンと僕のキャラがいるゲーム画面が写っている、それを映しているディスプレイから片目だけ出している女の子らしき人物が……絶妙に頭が切れていて片目だけ写っている……


 片目だけなのでちょっと怖い、でも凄く綺麗な目、そして泣きボクロ……僕はその瞳に魅いられる……



『見た?』



『見てる?』



『ねえルナ見てる?』



『おーーーいルナってばーー』




『あ、ごめん、見た』

 ログが流れている、あまりに見すぎてルナのチャットに気が付かなかった、


『見た?、じゃあ消す、保存してないよね』


『うん』

 凄く勿体ないけど約束だし、でも僕の脳には保存した!


『ごめんね髪の毛ボサボサだし、化粧とかしてないからそれしか見せれない、何よりまだ男の人は怖い、ルナがストーカーなんてする人じゃないってわかってても怖いの』



『ううん、ありがとう、ここまで信用してもらって嬉しいよ、ネットって怖いもんね、それにしても絶妙に目だけってw』


『女の子って判る部分が良かった?ルナのエッチw』


『ち、違うよ~~~』


『ううん、冗談、わたしちょっと痩せ過ぎて、前とだいぶ変わっちゃったの、でも目だけは変わって無いから、元に戻っても目だけは変わらないから見てほしかったの』


『そうなんだ』


『うん、でもゲームのせいで視力はだいぶ落ちちゃったけどね~』


『それは僕もかも~』


『たださ、リン、凄く嬉しかったんだけど大問題があるんだ、言っていい?』


『え!何?何か付いてた?』


『いやそうじゃなくてさ』

 リンは気がついていないだろうけど、物凄い大問題が起きる可能性があった。


『え?なに、ルナ、わたし何かやっちゃった?』


『うん、やっちゃってる、あのね、このゲーム相手にチャットやメールで特定のアドレスをおくったりするのは規約違反でBANの対象なんだよ』


『え、え、えええええええけえっけksかああldjへういえ』


『リン落ち着いて、リン』


『え?やだ、え?わたしBANされちゃうの?え?』


『大丈夫、一回くらいなら警告で済むと思うから、でも僕の為でも、もうしないでね、リンに会えなくなっちゃう』


『えーーーーん、ごめんねええええええ』

 またキャラを泣かせるリン、可愛い……


『謝らなくてもいいよ、リン』


 僕はキャラが泣いているのを見ながら、リンのあの目から涙がポロポロと出ている姿を想像していた。






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