第4話幻の短剣と侮れない鑑定士

目に飛び込んでくるモノは始めて見るものばかりでもう目が離せなかった。

混雑する歩道。

そこには、多くの我、人間とは異なる別種族がいた。

おもに、獣族、獣人、エルフ、ドワーフ、天使、リザードマン······など。

(さすがに本や旅人の話だけでは全ての種族を把握するのは無理だった。)


その隣を商人が乗りこなす竜車や馬車、ゴーレムが行く。

空には、ほうきやじゅうたんに乗る魔法使いや、綺麗な白色の翼をはためかせ飛んでいる天使がいた。


石畳を踏む数々の足音。

客を呼び込む為に荒々しく声を張り上げる店員。

昼から酒を飲む、いかつい男達。

あまりの騒々しさで頭が割れそうになるも、その現状に大きく胸踊らせる自分がいた。


「お、王都、す、スゲェ」

思わず口から出たのは単純にも一つの言葉だった。

もう少し気の利いた言葉を言えたら良かったのだが、朝から驚きと強い疑問の連続でもう全然頭が回らない。

でもとりあえず、質素で何もなく古びた村から出たこともない俺が、王都を見て

スゲェと思うのは至極当然のことではないだろうか?

などと、自分の言葉に軽く言い訳をそえていると、ルーが隣で口を開く。

「ハァー、もうちょっと気の利いた言葉は無かったの?」

ため息と少しの怒気を交えたその言葉はかなり俺へと突き刺さる。

「で、ですよね~」

と横を見たときルーはぷくーと頬を膨らませた状態でこちら睨んでいた。

(・・・・・・・・・)

危ない危ない、一瞬襲いかかろうとしてた俺がいた。

だが、そんな自分を無理矢理押し殺し、俺はルーの手を引いて

「まずは市を見て回ろうか」

そんな言葉をかけるとルーは顔を赤面させ、うん♪と小気味よい返事を返してくれた。

「うん♪、めっちゃかわわわわわ。 ダメだ」

俺は今日何回可愛いと言ったら気が済むんだ。

もう言ったらダメだ。

これ以上言ったら、なんか可愛いて言葉が安くなってしまう気がする。

だから今からは、俺のことを格好いいと思って貰わねば!

と自分を奮い立たし、俺はルーの手を強めに引っ張ったのだが·····

それよりも強い力で

「あっち行きたい!」

と引っ張られてしまった。


ルーに連れられながらハァ····と小さくため息をつく。

俺がルーをリードできるようになるのはまだ先かもしれないと思うと、

ホントに情けない限りである。


しばらく走り、市が見えてくる。

おびただしい数の屋台や店。

ルーは俺から手を離し、そのなかで食べ物屋に行って肉を買ってきた。

「う、うまい!」

串刺しになった肉にかぶり付きながら叫ぶ。

村での主食は芋で、ご馳走はせいぜい卵だったので肉なんて1年に一回食べられるか食べられないかだった俺は、濃い目に味付けされた肉をしっかり噛みしめながら、そして涙を流しながらペロリと一本食べてしまった。

その後、串刺し肉(焼き鳥?)と呼ばれる物を二本食べ、水を一杯飲んだ。

お腹がふくれたところで俺達は、商人が売る珍商品や武器を見て回ることになったのだが·····それどころではなくなった。

事件は大して買う物も無いのに冷やかし気分で屋台を三件程回った後に

この屋台を見たら一休みしようと決めて見に行った四件目の店で起こった。

そこでは中年のおっさんが日用品を格安で売っている。

のだが、屋台に近づくと同時に胸ポケットがもぞもぞ動き始めた。

そしてちびドラが直接脳内に話掛けてくる。

「めっちゃ強い力感じます!」

「いきなりどうした?」

「これ以上あの屋台に近づかないでください!」

もう遅い。

ルーが早速物色を開始している。

「ダメだ!」

ドラゴンの言葉には明らかに焦りが含まれていた。

ドラゴンが焦るのにはそれ相応の理由があるはずだ。

そう踏んだ俺は、ルーを屋台から遠ざけようと試みるが何か面白い物があるのか屋台から離れようとしない。

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

「あのおっさんそんなに強いのか?」

という俺の問に対してドラゴン答える。

「いや、違いますご主人様。あのおっさんはおそらくちょっとした小遣い稼ぎで屋台を開いている只の一般人。だから強く恐ろしいのはおっさんではなくあのおっさんが売っている品。 四代目英雄の短剣です。」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

「四代目英雄!?」

「四代目英雄ってドラゴン。お前もを封印したSS級スキル封印の所持者ルイ=ボーンだろ!?」

「あれ?でも、ルイ=ボーンが短剣持ってたなんて話、聞いたことないぞ?」

「ルイ=ボーン。名前を聞いただけで吐き気がする····。あいつのエグすぎるスキル封印は、素手で触れた生物の時間を五百年以下の間なら好きなだけ止められるようにする。俺は丁度五百年前にあった魔物大戦で真っ先に封印された。MAX五百年の間。何の手加減もなかった。その時にもいた瞬間移動者とともに自分の後ろに回り込み、急に手袋をのけたかと思うと自分の体に触ってきて今に至る。相手軍からはかなり距離をとっていたはずだったのに瞬間移動とかマジで反則だろ!!!」

「分かった。分かったからそんなに叫ばんでくれよ。お前の五百年間溜まりにたまった愚痴なら後で聞いてやるから。というか何故素手が最強の武器となるルイ=ボーンが短剣なんて持ってんだ?」

「自分も詳しいことは分かりませんが、魔物軍の参謀が言っていたのは、人間軍の最強鍛冶士。エトム=カートが最も力を入れて造った作品だということと、

斬ったモノは一瞬で裂け、凍り、痺れ、息が出来なくなる。つまり、ヤバいくらいの切れ味と、氷、雷、毒の属性を持つということだろうと思います。そしてここからは憶測ですが、おそらくあの短剣は一度も鞘から抜かれていないはず。

つまり、新品。だからこそ、その存在を誰も知らず、敵国や魔物共がそれを使えばこの国一つ簡単に滅ぼしてしまうかもしれないんです。ですからとりあえずは、さっき言っていた事とは矛盾していると思いますが一旦はこちらで回収した方が良いかもしれません。」

「う~ん、分かった。どうせ100トールだ····てあれ?」

60トールしかポケットに入ってないんだけど。村から出てくる時には3000トール程持って来た筈なんだけど····。これ絶対盗られてる。こわっ。街こわっ。街の住人はどうやってお金管理してんだろ。みたいな疑問を多少抱えるもすぐに取っ払った。どうする、このままじゃ俺あの短剣買えないぞ。

ルーもお金はもう30トールしか残っていないらしい。

あわせて90トール。

あと10トール足りない。

そこでドラゴンが言う。

「自分の言葉を真似してください。必ず値切ってみせます。」

「お、おう。」

多少たじろぐが、この場はドラゴンに合わせることにした。

「「あの~すいません。僕達旅人なんですけど旅の途中で短剣を無くしてしまったんですけど···あっ、その短剣なんかは白金色でキレイですね~。」」

「あぁ、これはな、鞘は全然錆びなくてキレイなんやけど刀が鞘から抜けやしないんだ。そんなポンコツでいいなら100トールで売ってやるよ。」

「「80トールでどうですか?」」

「おいおい、さすがにそれは無理だ。だが俺も商品が売れてくれないのはおもしろくない。95でどうだ?」

「「う~ん·······」」

暫し粘ると。

「分かった。今回は俺が折れてやる90トールでどうや」

「「はい!、お願いします♪」」

(・・・・・・・・・・・・・・・)

やり取りが一通り終わったところで俺達(俺とドラゴン)は屋台を後にした。


これが、四代目英雄の短剣か~。

うん!でもこれ·······全然抜けねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!。

俺とドラゴンは一度国から出て誰も何も無い草原に行き、あらゆる手を使い短剣を抜こうとしている最中であり、ルーに至ってはさっきの屋台で見つけた

るーびっくきゅーぶ?とやらで遊んでいて今も絶賛6色の四角い箱と戦っている。

そして短剣といえば····

何度ドラゴン得意の魔法をぶつけても何一つとして変化は見られずに難航していた。

のだが········

「その鞘に付いているダイヤルは回すんじゃなくで真上に引っ張るんだ。」

その言葉に咄嗟に反応した俺はダイヤルを上に引っ張った。

すると····カチッという硬く鋭い音とともに短剣は姿を現した。


俺は思わず声がした方向を振り向いてしまっていた。

そこには黒いフードをした身長の高い人が居て、彼は言う。

「その短剣は素人が扱える品じゃない。今すぐその四代目英雄の短剣。置いていって貰おう。」


((こいつ、この短剣のことを知ってやがる))

「お前·····これ知ってんの?」

「あぁ····。もしかして君達も知っているのかい?」

「知ってるから買ったんだ。お前みたいなこれを知る、変で怪しい奴に渡らない為に。」

「僕は変でも怪しくもない。と言いたいところだが自己紹介がまだなのは

確かに怪しい。」

そして彼はペコリとお辞儀する。

「僕の名はトマ=コート。魔法は使えない。その代わりにあるスキルが

鑑定士。モノの名前とそのモノの情報が分かる。この能力で短剣の事を知った。」

これまた驚き。S級スキルの登場だ。

「鑑定士。それまたレアなスキルじゃないか。」

「まぁ、君と君の奥さんのスキル程じゃないよ。」

「お前···人の情報て、スキルまで分かるのか!?」

「うん。その人の全てを知ることができるからね。 それに驚いたよ。奥さん、英雄なんだね。」

「うん····じゃなくて!、俺!俺の能力は何なんだ!!!」

そう、気になってたんだよ、俺に能力が芽生えたのかどうか。

今日は朝からドラゴンや騎士団が下僕になったり膝まづいたりとありえないことばかりだったが多分。どれもこれもスキルのせいだと思われる。そしてコートは

俺のスキルがレアだと言った。つまり覚醒したんだ!!! 


その嬉しさのあまり一瞬涙しそうになるが、コートの言葉にそれも引っ込む。

「う~ん。実はなんか、君のスキルと魔法の欄。黒く塗りつぶされてて見えないんだよ。」

「はぁ?」

「うん。僕もこんなの始めてだよ。」

「なんだその役にたたねぇ能力は。」

「そう怒らないでくれたまえ。それに多分。おかしいのは君の方だよ。それにスキルなら、皆が使う普通の方法で知れば良いだろ?」

「あっ、うん。授かりの聖水か。····実は場所知らなくてな。」

「そうなのか!では、連れていってやっても構わないぞ。」

「マジか!、お前めっちゃ優しいな。」

「だが、一つ条件がある。君のスキル。分かったら教えてくれよ。」

「そんだけ?」

「うん。それで良い。」

「分かった。じゃあ交渉成立な。」

「あぁ。」

「で、この短剣はどうする?」

「君が持っていたまえ。君なら信用できる。ドラゴンを従えているクロ君ならね。」

「えっ!?」

彼はニコッと笑った。

まてまて。ドラゴンはさっきから透明化して見えないようになっている筈なのにそれに、俺まだ自己紹介してないぞ。

はぁーやっぱ、鑑定士侮れねー。

そんなことを思いつつも、割と一緒に話すと楽しい奴で、

そんな風に駄弁りつつ俺達は聖水のある湖を目指すのだった。
















































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