第40話 最後の真実

 私は、インカムでシロイを呼びだした。

「きょーかん、シロイです~ 」

「こちらへ」

 シロイは、いつものぼさぼさ髪でやってきた。私は、シロイに「転魂」について知っていることを全て話した。「身体記憶」のことも。

 シロイは、真剣な顔つきで聞き入っていた。そして、「身体記憶」の話になると、そっと目をぬぐった。

「ゲルプ……」

「だから、シロイ。来月長官と定期診断で会うことになっているから、来てほしい。ICカードは、リラに偽造してもらう。指紋も、「フェイク指紋」でなんとかしよう」

「わかりました。行きます。ロートを犠牲にしないために、ゲルプの最後のお弔いのために」

「ただ、『メス』を処分すれば、ゲルプさんの身体も朽ちるのだ。あの人は、二度亡くなることになる。だから、私はお前が不憫だ……」

「いいのです」

 シロイは、顔を上げて毅然として言った。

「私は、大丈夫です。ゲルプもわかってくれます」

「……ありがとう」

 私は、シロイに手を差し伸べた。シロイは赤くなったが、私の手を取った。二人で、しばらくぬくもりを感じていた。

 その時、秘書から通信が入った。モモ先輩からの二度目の院内便だという。私はあわててシロイの手を離し、シロイも引き下がった。

 秘書が持ってきた院内便を開封すると、シロイの成績その他に関する書類だった。これも、厚生省に保管されていたのか。

 よく見ると、シロイはなんと医学部に満点で入学、「医師国家試験」も首席で合格し、「べステナーメ『ヴァイス』(白)」ももらっていた。「べステナーメ」は、形式上で、実際は国家の圧力で名乗れないらしい。国家試験に通ったのは強運だと思っていたが、実力だったのか。そして、リラは次席だったのか。

 シロイ……お前は、優秀だったんだな。そして、名誉な「べステナーメ」を名乗れないのは、その過去にあったんだな。いつか、名乗れるようにしてあげたい。本当は、間抜けなできない女医ではないのだから。

 私は、窓の外を見た。衰えかけた蝉の声が、悲しく響いていた。

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