第15話 少女理事長ゴルト
部局の執務室へ戻った私は、パソコンに向かった。ミスコンという単語が、頭から離れない。そして、理事長という人物も気にかかった。
「聖ルカ病院」の理事長は最近交代したばかりだ。新しい理事長就任のあいさつの席に、私は出張で同席していなかったので、どんな人物かは知らない。ただ、かなり変わった人物らしい。
私は、病院の職員用サイトで、理事長の個人サイトを開いた。
そこには、スタンドカラーに濃い紅色のアスコットタイをしめた少女が、かすかに笑みを浮かべて写っている顔写真と共に、あいさつ、病院へのコメント、抱負、プロフィールが載っていた。
こんな小娘が理事長なのか。プロフィールによると、彼女の「ナーメ」はゴルト(金)、本名クレナイ、年齢は十八歳、十四歳で特例により、一流大学の法学部に満点で入学、飛び級を重ねて十六歳で卒業して、厚生省の官吏となったが、「志あって」退職。その後、この病院の理事長になったらしい。
まあ、厚生省という医療を管轄するお役所とのパイプを作るための、「天下り」だ。この「志」というのも、怪しいものだ。単に、金がたんまりもらえるからじゃないのか。頭はいいかもしれないが、精神年齢も高いとは限らないのだ。医師国家試験に首席で合格しながら、骨への嗜好で医者に向かないリラを見ろ。
そして、女でありながら、男の礼装であるアスコットタイを好むというのも変わっている。スタンドカラーの好みは一緒だが、この奇人変人ぞろいの「聖ルカ病院」、彼女がどんな変人かわかったものではない。できればお近づきになりたくない。
私は、心の中でパソコンに塩を撒いて、そっとサイトを閉じて仕事に戻った。
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