第22話

「人間は自分と、まわりと少しでも違えばすぐに変なもの、異質物とみなす。なぜだ?」


テラは腕を組み、小さくため息をはいた。


「そ、それは・・・」


湊は言葉を詰まらせる。明確な答えなど、湊にはわからない。


「簡単だ。―――――”人間”だからだ。」


「・・・?」


湊は首を傾げた。


人間が周りと違うだけで異質物とみなすのは、人間だから。


単純に聞けば、哲学のようにも聞こえる。


「なに、難しい話ではない。人間は弱く、脆く、そして賢い。体力や力が圧倒的に劣っているのを、知恵でうまく補っている。しかし、当たり前ではあるが体力や力で劣るのだから、1対1では勝ち目などない。ではどうするか?」


「・・・数で勝負するしかない」


「そう。人間の、日本人の言葉で”塵も積もれば山となる”というのがあるそうだが、それと同じだ。1人の力は弱くとも、たくさんの人間が集まることでいろいろな作戦や対策を打つことができる。それゆえに、人間は集団で行動する。」


「・・・でも、そうやって生活していくうえで、違う行動をとるもの、ルールを破るものは邪魔となった・・・。だから、少しでも違えば、その人と一線を引く・・・」


湊は制服の裾をぎゅっと握りしめ、うつむく。


「・・・あぁ、そういうことだ。」


テラは冷たく言い放つ。


わかっていたことだ。湊は、さらに強く握りしめる。


生きていくために、危険が及ばないよう、切り捨てるところは切り捨てて・・・。


強く握りしめた湊の手をそっと大きな手が包みこむ。


「そこまで、思いつめることはない。だって、人間は間違いを犯して、学んでいくこともできる。」


目線を上げると、そこには先ほどの鋭い表情から一転して、優し気に微笑むテラがいた。


「それに・・・」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る