第19話

湊はテラの言葉に驚き、思わず後退る


「まぁ、あとで乾かせばいいか」


「ちょ、どういう、きゃっ!?」


テラは湊の問いに答えず、湊を抱き上げる


そして、そのまま、近くの池へと向かう


「え、なになに、なにするの?」


驚きのあまり、おもわずテラに縋りつく湊


「大丈夫、ここの水は清水だから、汚くない」


「そういうことじゃなくて・・・!」


テラは腰くらいまでの深さのところにつくと、止まった


そして、湊をゆっくりとおろし、水の冷たさに驚かないよう、足先から徐々にならしながら池におろしていく


「少し冷たいかもしれないが、我慢してくれ」


「あ、うん・・・」


自分もすごく不安なはずなのに、私の体をいたわってくれてる・・・


湊はテラの行動の優しさに、目を奪われていた


「ここの水は、傷にしみないだろう?」


テラはすくった水を優しく頬にかけた


たしかに、痛くない・・・


湊は頬にある傷をそっと触ろうと、指を伸ばす


しかし、テラに手をつかまれ、止められる


「触るな。まだ、完全には治っていない」


「え・・・?」


「ここの水は少し特殊でな。体の中の傷は治せないが、体の外の傷なら治すことができるのだ」


「へぇ・・・」


テラはそう説明しながら、湊の頬に水をかけ続ける


「・・・よし、もういいだろう。触ってみてくれ」


「う、うん」


テラに言われ、湊は自分の頬を触る


「・・・痛く、ない・・」


先ほどまで痛かったはずの頬が、嘘みたいに痛くない


つねっても、叩いても、その痛みが出るだけで、それ以外の痛みはまったくなかった


「じゃあ、次は髪の毛と服の汚れだな」

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