第16話

昼間借りた本をカバンに入れ、湊はいつものように帰ろうとしたとき


「ねぇ、白間さん」


「はい?」


そこには見たこともない女子生徒が数名立っていた


「ちょっといいかしら?」


「?」


にこっと微笑み、リーダーらしき人物が白間を手招く


白間は断る理由がないのと、断ったら何をされるのかわからない恐怖から大人しくついていく


連れてこられたのは、美術室だった


いつもは美術部が使用しているが、今日は外へと写生に出かけているらしく、誰もいない


「あ、あの・・・」


「白間さんさぁ、最近、真琴と仲いいよね」


「え・・・?」


突然話を振られた湊は口ごもる


「授業中も休み時間も、ずーっと白間さんと話してるって聞いてるよ?」


ニコニコしながら話をつづける彼女を見て、湊は背筋が震えた


こ、こわい・・・


隙を見て逃げようと考えるも、まわりは女子生徒が囲っている


湊はじりじりと壁際へと追いつめられる


「いつもいつも、あなたの事ばかり・・・、虫唾が走るのよ」


突然、先ほどまでニコニコしていた女子生徒が豹変し、湊の頬を強くたたく


あまりにも突然の事に、湊はその場に倒れこんだ


目の前がチカチカして、頭が痛い


「今までは特に害もなかったから放っておいたけど、ひとの彼氏に手出してんじゃないわよ!」


感情任せに女子生徒は反対側の頬をひっぱたく


痛い・・、痛い、痛い・・・


湊は叩かれた頬をおさえ、うずくまる事しかできなかった


「ひとの彼氏に手出したら、どうなるか教えてあげる」


そういうと、周りの生徒に目配せをする


いつの間に持ってきたのか、彼らの手には絵の具やバケツがあった


「あ・・・」


湊がそれを確認すると同時に、彼らは手に持つそれらを湊にかけ始める


「や、やめて!」


「名前に白って入ってんだから、あたしらの画用紙にでもなってなさいよ!」


「あはは!」


髪をひっぱられ、顔や服に絵の具を塗りたくられ、水を掛けられる


湊は抵抗することができず、されるがままだった

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