第9話

翌日、湊はいつも通り教室の隅に座り、勉強をしていた


しかし、とある問題で答えがわからず、悩んでいる


どうしよう・・・、次の授業でこれ絶対あたるのに・・・


一人悩んでいると、ふと一番前の席に座る男子生徒が見えた


彼は奥野 真琴(おくの まこと)


湊のクラスの委員長で勉強もでき、先生からも何かと頼りにされている


・・・私とは、正反対の人・・・


しばらく湊は真琴のことを見つめた


どうしよう、奥野君に聞こうかな・・・


悩んでいると昨日のテラの言葉を思い出した


”他人に合わせ、他人とともに成長する。それもまた、ある種の特別な才能だ。その才能は、だれもが持っている。たった今生まれた、新しい命も、おぬしも”


・・・テラ、頑張ってみるよ


湊はそっと立ち上がり、真琴の近くへと向かう


「あ、あの・・・。奥野、君・・・」


「ん?・・・あぁ、白間さん」


「あ、あの・・・。これ、お、教えてくれませんか・・・?」


湊は先ほど解いていた問題を見せた


「ん?これ?・・・今日やるところじゃない?」


「う、うん。そうなんだけど、た、たぶん、私、当たるから・・・」


「そっか・・・。偉いね、白間さん」


真琴はふいに湊に笑いかけた


「え・・・」


「ちゃんと予習してるんだもん。勉強ができるのもうなずけるな」


「そ、そんなこと・・・」


湊は照れ、もじもじしていると


「あー、真琴、貞子のこと構ってるー。やっさしー」


「ほんとだ―」


くすくすと湊を笑いものしようとする声が聞こえてきた


湊はかっと、顔が熱くなった


何浮かれてるんだろう・・・、そうだよ、奥野君は私を使って自分の好感を・・・


そう思っていると、突然真琴は立ち上がった

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