第1話

「ねぇねぇ、白間さん。私たちの分のノートとっとといてよ」


「え、でも・・」


「なに?言うこと聞けないの?」


「わ、わかりました・・・」


「じゃ、よろしくー」


女子生徒たちは自分たちのノートを少女に渡し、笑いながらどこかへ行ってしまった


少女、白間 湊(しろま みなと)はため息をついた


なんで私ばっかり・・・


湊はとぼとぼと次の教室へと向かう


その道中、手洗い場に差し掛かり、そこにある鏡を覗き込んだ


そこには、前髪で目を隠し、髪の毛を長く伸ばした華奢な少女が映っていた


肌は真っ白で、傍から見ると体調が悪いようにしか見えない


それが湊の容姿である


「・・・これじゃあ、気味悪がられてもしょうがないよね・・・」


小学校のころから、病弱であまり友達がおらず、さらに人付き合いも上手にできなかったために、一人浮いた存在であった湊


あだ名は”根暗”、”貞子”、”骸骨”などなどマイナスなものしかつけられたことがない


みんなのために何かしようと思い、行動しても気味悪がられる始末


その結果、高校二年生の現在、完全にパシリや雑用などを押し付けられている


湊は頭を振り、移動先の教室へと急いだ


教室につくと、一部の生徒は振り返るものの、湊の姿を見ると明らかに眉間にしわを寄せ、また友人との談笑に戻った


湊はできるだけ気配を消しながら、教室の一番隅の席に座る


窓際の一番後ろ、この席が湊の定位置となっている


授業が始まれば、確実に何人かはサボるため、湊の隣から横一列は誰も座ることはない


まれに座ることがあったとしても、湊から離れたところに座り、寝ていることがほとんどだ


湊はせっせとさきほど渡されたノートに授業の内容を写していった

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