第13話 姉妹

〜 リリィ アクアマリン帝国 アクア海 にて 〜


「…にんげん。」


サリエルが悲しそうな顔をして俯いた。


「どうかしたのか?」


わらわが話しかけるとサリエルは少し困った顔をして消え入りそうな声で呟いた。


「私は人じゃない。だから…リリィ様の望むお友達には……。」


サリエルの目には涙がたまっていた。わらわは思わずサリエルを抱きしめて


「サリエルが人じゃなくても妾はサリエルの友達になりたいのじゃ。さっき言った言葉は撤回する。だからわらわの…私の友達になってほしい。」


「良いのですか?私は人じゃないのに…。」


「もちろん!」


わらわはニコッと笑ってサリエルに手を差し出した。サリエルはわらわの手を取って。


「ありがとう、リリィ。」


と笑ってくれた。わらわに寄ってくる人間は身分の違いがどうだとか、出世したいが為だけに寄ってくる人ばかりだったから、初めて本当のお友達ができて嬉しかった。


「でもね…リリィにはラファエルと結婚してほしいの。私は…もう長くは生きられないから。だから、私はラファエルを幸せにしてあげられないの。」


「なっなんで…もしかしてサリエルは重い病気なのか?ならばリオアント一の名医を…」


「違うの。えっと…病気じゃなくて呪いに近いのかな。私は人間になる代わりに魔女と契約をして薬をもらったの。その対価として寿命が短くなっただけ。だからお医者様でも治すことは出来ないの。」


「呪いなら霊媒師や魔導師なんかを呼べば…」


「良いのよ。もう私には充分だから。たった4ヵ月だったけどラファエルやミカエル様、ハクお義母様おかあさま…いろんな人間と仲良くなれた。リリィと友達になれた。それだけで私はもう充分なの。とっても楽しかった。」


「サリエル…。」


「サリエルじゃないわ。私の本当の名前はメアリー = アクアブルー。人魚の住まうアクアブルー王國の女王。」


「人魚だったのか…ならば何故私に名前を教えてくれたの?」


「お姉ちゃんが欲しかったから…。妹はいたのだけれど、あの子はいつも敬語で礼儀正しくてまるで他人みたいだって思ってた。もっと妹として甘えて欲しかった。そしたら私もお姉ちゃんとして妹に甘えられるのにっていつも思ってた。だから、思いっきり甘えられるお姉ちゃんが欲しかった。リリィと会話をするうちに、姉妹って…お姉ちゃんってこんな感じなのかなって思ったの。だから…。」


わらわは妹が欲しかった。いつもお父様はわらわを甘やかしてくれた。だから凄く過保護でお父様の許しをなくして人と関わることを禁止されていたの。そのせいでいつも独りぼっちだった。もし私に妹がいるなら、話し相手になってくれるのかなって思ってた。だからメアリーが私の妹だったら良いのになって……。」


「ねぇリリィお姉ちゃん。

「ねぇメアリー。


『私達、姉妹になろうよ』


お互いににっこり笑って手を繋いで砂浜を駆け回った。お揃いの貝殻を見つけて宝物にして、砂のお城を作って2人で笑いあって、従者達が探しにくるまで2人でいっぱい遊んだ。とっても楽しかった。






だから………………

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る