第12話 友情
〜 リリィ アクアマリン帝国 マリン城 にて 〜
「先ほどは申し訳ありませんでした。」
鏡の間を出るとサリエルに謝られた。
「構わぬのだが…先程ラファエルは『サリエルは渡さない』と言っておったがお主彼に何かされたのか?」
「そっ…それは…。」
サリエルは少し顔を赤くして妾から目を逸らした。それを見て妾はなんとなく察する。
「ほほう。ラファエルの奴、妾というものがありながら他の女にうつつを抜かしておるんじゃな。けしからん!お父様に言いつけて死刑にしてやる!」
妾はサリエルをからかってみた。正直、ラファエルの事はよく知らないので別に好きというわけでもなかった。だからサリエルとラファエルが浮気していたとしても構わなかった。サリエルは顔を真っ青にして
「申し訳ありません。ラファエル様はそんなつもりは全く無かったのです。悪いのは全て私です。どんな罰でも受けます。ですから、どうかラファエル様の命だけは…。」
と泣いて土下座して謝られた。パーティの客たちはアクアマリン帝国の皇帝の演説に集中していて誰もこちらをみていなかったのと、歓声にサリエルの声がほとんど被ったので誰にも気づかれなかった。妾はパーティに飽きていたので、サリエルに許してあげるから海に連れて行って欲しいと頼んだ。サリエルを見ていたらなんとなく久々に海を見たくなったのだ。
「やはりいつみても海は広いのう。」
「本当に良かったのですか?パーティを抜け出したりして…。リリィ様はこのパーティの主役なのでは……。」
「すぐ戻るから平気じゃ。そんな事より、サリエルはラファエルが好きなのか?誰にも言わぬから教えてくれ。妾はラファエルの事をあまり知らぬし、好きでもないからな、詳しく教えてくれたらサリエルにくれてやっていいぞ。」
「だ、だめですよ。ラファエルとの求婚を拒んだりしたら国際問題になりかねません。」
「今しれっとラファエルの事呼び捨てにしたな。たったの3ヶ月でもうそんなに進展しておるのか。羨ましい限りじゃ。」
「そっ、それは言葉の綾といいますか…。」
「隠さんでも良い。ここにはお主と妾しかいないからな。」
妾がにっこり笑うとサリエルは少し恥ずかしそうに、
「……好きです。ラファエルの事…。でも、私は従者で彼は皇子。永遠に結ばれない恋だと分かってはいるんです。でも…。」
と教えてくれた。
「なぁ、サリエル。ラファエルが好きならいっそ2人で逃げ出してみてはどうじゃ?妾はつくづく思うのじゃ。ラファエルよりミカエルに政治をやらせた方が良いと。この前の舞踏会でラファエルはいつも政治には無関心で城を抜け出してばかりだとミカエルが嘆いておった。行くあてがないのなら、妾の国へ来れば良い。お主達を匿ってやらんでもない。」
「リリィ様…。」
「その代わり…その…妾の友達…とやらになってくれないか?サリエルとなら仲良くできる気がするのじゃ。」
「良いのですか?私はただの従者。それに比べてリリィ様は…。」
「サリエルも昔は王女だったのではないか?お主の仕草を見ていたが、時々妾と同じような仕草をしていたからもしかして…と思ってな。それにそうで無かったとしても身分の差など関係ない。妾もお主も同じ『人間』なんじゃからな。」
そういうと、何故かサリエルは俯いて
「にんげん…。」
と呟いた。
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