2章 再会
第6話 出会い
〜 ラファエル アクア城自室 にて 〜
「はぁ…。やはり見つからないか。」
「申し訳ありません。全力は尽くしたのですが…。」
「僕の方こそわがまま言ってごめんね。探してくれてありがとう。」
僕の名前はラファエル。アクアマリン帝国第一皇子で、隣国の姫リリィ=リオアントの婚約者。
僕は先月リリィの父、ジャックが開催した舞踏会に行った帰りに敵国の船に襲われた。もうすぐ国に着くということで兵士達も少し気が抜けていて、あっという間に船は占領されて壊されてしまった。
僕は海に投げ出され、必死に泳ごうとしたけど思いの外服が重く沈む一方だった。「もう駄目だ…」
と思い、覚悟を決めて目を瞑ると水色の髪の美しい女性に抱き上げられた。
彼女は僕を砂浜まで運び、軽く手当てをしてくれた。一通り手当てが終わると彼女はこの場を去ろうとした。せめてお礼くらいは言おうと思ったのだが、あまりの美しさに見とれてしまい上手く言えなかった。せめてものお礼になればと、王家の紋章が刻まれたワッペンを渡した。
そして、兵士に命じて必死になって彼女を探しているのだが全く見つからない。夜だったこともあって目撃情報も全くない。
「もう一度…もう一度でいいから彼女に会いたい……。」
気づけば、僕は彼女のことばかり考えるようになってしまった。これが
『好き』
と言う感情なのだろうか?
「いい加減にしてください、兄上!」
窓を見つめてボーとしていると、弟のミカエルが話しかけてきた。
「兄上には、リリィ様と言う婚約者がおられるのです。それなのに他の女性にうつつを抜かすなんて最低です!もっと皇子としての自覚を持ってください。下手したら国際問題にもなりかねないんですよ。」
「わかってるよ、ミカエル。だから、今日で彼女を探すのをやめにした。もう深追いしないからそんなに怒らないでくれ。」
「やっと諦めたんですか。そもそも僕が起こっているのは兄上のせいでしょう。それなのに兄上ったら……。」
やれやれ、またミカエルの説教が始まってしまった。ミカエルは一度話し始めると話が長いのだ。僕のことを思って言ってくれているのだろうけど、正直言って迷惑だった。だって、リリィとの婚約は母上が勝手に決めたことだから僕は別にリリィを愛しているわけじゃなかった。だからこそ、あの美しい女性にもう一度会いたいのに……。
そんなことを思いつつ、窓の外を眺めていると突然海の方から悲鳴が聞こえた。僕は、ミカエルの説教から逃げるチャンスだと思って海へと駆け出した。
「え?ちょ、兄上!話はまだ終わって……」
ミカエルの声を無視して浜辺へと駆けつけると、なんとあの時の女性が裸で倒れていた。慌てて抱き上げると、彼女は
「ラファ…エル」
と呟いて気絶してしまった。僕はどうしていいのか分からなくなって、彼女を抱きかかえたままその場をぐるぐる回っていた。
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