5日目

「おはよう、琴葉」

「うん、おはよう」

私と美姫は、その後は、朝学があったため話すことはなかった。

そして、私は例によって勉強なんてしていなかった。

敦君の家か…………、嫌な思い出しかない。

私が、敦君の家に行ったことは1度だけある。

でも、私が敦君の家に行った時には、もう敦君は家にいなかった。もう、この世からいなくなっていた。

じゃあ、何故敦君の家に行ったのか。

それは、敦君の両親に謝りたかったから。

私は何回も謝った。でも、敦君の両親は君のせいじゃないとその一言だけを言っていた。

もし、私に君が敦君になにをしたんだね?と聞かれたとしても、私はなにも答えれないと思う。だけれど、そんなことは関係なくて、私唯謝りたかったんだ。謝ることで敦君がもういないと言うことを受け止めたかったから。

「…………所詮は、私の独りよがりだったのかな……」

「なにが、独りよがりなの?」

隣からそんな言葉が聞こえてきた。

隣には、不安そうな顔をした美姫がいた。

「……ううん、なんでもないよ」

私は、そう言うことでこの場を切り抜けようとした。

でも

「なんで、そうなるかな?私たち友達だよ。ならもっと頼ってよ」

と言ってくれたのだ。

「おい、そこなにを話しているんだ」

先生が注意してきた。

私と美姫は、はーいと答えると、話すことはやめた。

私たちは話すことをやめただけで、会話は続いていた。

手紙という方法で。

『で、琴葉のなにが独りよがりなの?』

美姫は、なにもオブラートに包むことなく直球に聞いてきた。

『私のどこが、独りよがりなのか……それは、私は所詮自分のことしか考えてないから……』

私は、自分のことしか考えていない。

だから、あの時だって敦君の両親に無理を言って家にいれてもらって謝ったのだから。

『そうかな?人間なんて全員そんなもんじゃないの?』

『そうかな?でも、例え私以外の人も自分のことしか考えていないとしても、私はその中でもだいぶ独りよがりだと思うから………』

『………誰よりも、自分のことが独りよがりだって?そんなわけないよ』

『どうして?』

『だってさ、琴葉前に、いや、今の琴葉からしたらだいぶ前のことなのだと思うけど、琴葉自分のことを犠牲にしてまで、いろいろと頑張っていたでしょ』

私は、そんなころをした記憶がない。

だから

『私が、どんなことをしたの?』

『覚えてないんだね。まあ、仕方がないかもね。で、琴葉が自分のことを犠牲してまでやったことが、泣いている幼い子供をあやしてあげていたでしょ。そういうことってさ、なかなかできることじゃないと思うんだ。だって、泣き止むまでは時間がかかるんだからさ』

………そんなことあったけ?覚えてないや……

『それに、琴葉は全然独りよがりなんかじゃないよ。むしろみんなよりも、自分のこと以外をやっていると思うよ』

美姫は、そう書いてくれた。私は独りよがりなんかじゃないと。でも、やっぱり私は独りよがりだと思う。そうでなかったら、こんな風にタイムリープしてまで過去に戻ってくるはずなんてないはずだから。

『自分のために過去に戻ってきているんだから、私は独りよがりだよ。とか思っているのかもしれないけどさ。過去に戻ることのなにが独りよがりなの?』

……なにが、独りよがりかって。そんなこと簡単。人の未来を変えることができるものだから。

『人の未来を変えることができるから』

私は、無駄な文は一切書かず、素直にそう書いた。

『人の未来を変えることができる。確かにそうだよ。過去に戻ることによって未来を変えるなんてことはとても簡単なことだけど、さ。琴葉はそうじゃないでしょ。琴葉はどうにかして未来を変えないようにと頑張っているでしょ。だからさ、私は琴葉が独りよがりだとは思わない』

………私は、私は、人の未来を変えないようにと、頑張ってはきた。でも、それで私の無意識の内に、私自身の行動によって誰の未来を変えてしまっているのかもしれない。そんなふうに考えると、いくら貴女は独りよがりなんかじゃないと言われようが、私は認めない。

『そう言ってくれるのは嬉しいけど、でも私は自分が独りよがりだと思う』

何回も、こんなことを書くとおこがましいと思われるかもしれない。でも、それでも私はこの意見を変えるわけにはいかないのだ。

変えてしまったら、なんの確証もないけれどなにかが壊れてしまうかもしれない、そう思うから。

『そう。これ以上他人である私がどうこう言ったところでなにも変わらないと思うからもう言わないけどさ、でも、これだけは覚えておいてね、私は、琴葉の味方だから』

手紙はそこで終わった。

………私の味方で居てくれるんだね。

だから、私は最後に

『ありがとう』

と、短い文章で美姫に感謝を伝えた。

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