5日目

私は、今日はゆっくりと起きた。

その理由は、昨日巫女たちと話し合った結果、敦君がいるところは、敦君の家が可能性が高いとなったから。

だけど、唯可能性が高いだけで絶対ではないのでもし、いなかったらまた病院を駆け回ることになると思う。

リビングに入ると、お母さんがおはようと言ってくれた。

「おはよう、お母さん」

と私も返す。

「今日はゆっくりなのね」

「うん」

それからは、お互いになにも話さなかった。

家の前に出ると、巫女がいた。

最近は、私が朝早くから家を出ていたから、一緒に学校へとはいけてなかった。

だから、まず

「ごめんね」

と謝った。

「別にいいよ。だって、琴葉にとって大事なことだもんね」

巫女は、優しい笑顔でそう言ってくれる。

「うん………」

「じゃ、いこっか」

「そうだね」

少しの間無言で歩いていたが、巫女が話しかけてきた。

「琴葉がさ、昨日タイムリープしてきた。って言った時、正直びっくりしたんだよね」

「うん」

「だって、私が琴葉に時間跳躍ってできると思う?って聞いてから全然日が経ってなかったからさ。でも、それで私府に落ちたこともあったよ。あの時琴葉がまるで現実に起きているみたいに話してきたときには、すでに現実に起きていたんだもんね」

「…………………………」

「だから、ごめんね。不安にしちゃって。未来を変えるとか変えないとか……」

私の幼馴染はこういう人なのだ。友達のために真剣に怒ることができて、でもしっかりと謝ることができる。

「ううん、いいよ。私は、タイムリープは未来を変えるとか、そういうことしっかり考えてなかったからさ。考えることができたから」

「そう言ってくれると嬉しいね」

私は、本当にあの時にたまたまかもしれないけど、巫女がタイムマシーンによって過去に戻ることと、時間跳躍、即ちタイムリープで過去に戻るとしたらどっちがいいと言う質問には、とても助かっていたりする。

もし、あの時巫女が私に聞いて来なかったら、私が先生に聞くこともなく、人の未来を変えるということを考えずに唯ひたすらに探していていただろうから、とても助かっているのだ。

「…………これは、失礼かもだけどさ。琴葉さ、あと今日も含めて3日で元の時間軸に、8年後に戻るんだよね」

そう、私はあと3日しか時間がない。

3日は、長いようで短い。あっという間に過ぎてしまう。

「……うん、そうだよ」

「昨日は、私、未来のことは聞かないって言ったけどさ。そのー、やっぱり気になるんだよね。私たちの関係がどうなったとか。8年後は、どんなことが流行っているとかさ」

私は、すぐにはいいよ、話してあげると言ってあげることができなかった。

8年後の私たちの関係は、今とはかけ離れている。

今では、こうして話しているけど、未来の私たちは、こんな風に話せてはいない。

大学までは、今みたいに話していた。

でも、就職すると、始めの方こそ、電話とかしたが、次第にお互いの仕事が忙しくなっていくにつれて、電話すらしなくなっていた。

………もう、3年ぐらい会ってないのかな?

私は、未来のことを言うか迷った。

だって、未来の話しをしたら巫女が悲しくなってしまうかもしれない。巫女が私とかかることを止めるかもしれない。そうしたら、未来が変わってしまう。

だから、私は──

「ごめんね。答えることはできないかな」

巫女には、これで分かってしまうかもしれない。今とは、違う関係なのだと。

巫女は、ははと少し自嘲気味に笑うと、そっかと言った。

そしてこう続いた。

「じゃあさ、他のことだったらいいかな?」

と。

私には、巫女が言う他のことがなんなのかは分からない。

「聞いてみるだけならいいよ」

「そう。わかった。じゃあ、質問するよ」

「うん」

「今は、私の前にいるには、未来の琴葉でしょ」

「うん、そうだね」

「じゃあさ、私が少し前まで、一緒にいた琴葉はどこにいるんだと思う?」

私じゃない私ってことか。

確かに言われてみればそうだ。今の私は未来からきた琴葉だ。じゃあ、この時間軸にいるべき琴葉は一体どこにいるのだろうか。

「……私にも分からない」

私は、必死に考えようとしたが、考えても分かる気なんてしなかったから私は諦めることにした。

「そっか。そうだよね。タイムリープしている本人だからって分かるわけないよね」

「うん、ごめんね」

「別にいいよ。だって、そう簡単に分かることじゃないと思うし」

私の幼馴染は、自分のことをどこまでも低くする。

確かに、昨日みたいに自分のことをしっかりと言う時だってある。

でも、いつも巫女は、自分のことを低く見る。

…………巫女は、もっと自分のことを高く見てもいいと思うんだけどな。

「そろそろ着くね」

「そうだね」

そこから、玄関までお互いに話すことはなかった。そして、玄関でもじゃ、という一言で私たちは別れるのであった。

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