4日目─我慢─

「──それはね、だって琴葉はその中島君のことが好きなんでしょ。でも、前は伝えれずに終わってしまった。だから、今度は伝えようと過去に戻って来たんでしょ?」

「…………うん」

「だから、琴葉はということを拒絶しているんだと思うよ」

巫女は、とても優しい声でそう言ってきた。

………私自身があの時のことが、こうして未来を変えているという状況を拒絶しているの?

「わ、私は………………………」

自分が拒絶しているなんて認めてない。そう言うつもりだったけど、言えなかった。

だって、自分でも分かってしまったから。

拒絶しているんだって。

彼とあの時一緒に弁当を食べたことがどこか夢に起きたことみたいで、あの時は私の心は間違いなく幸せに染まっていた。

………だから、あれが未来を変えたことに繋がっただなんて考えたくないんだよね。

「私は…………拒絶していたんだと思う。彼とあの時一緒に入れたことが本当に夢でも見ているんじゃないかって思うくらい嬉しくて、幸せだったから」

「うん」

「でも………今は、拒絶している自分を受け入れるべきなんだよね」

拒絶していることを受け入れることは難しいことだ。だけど、今は1つの大きな山を越えるべき時なんだ。なら、私はなんとしてでも越えてみせる。

「今から言うことは、信じられないかもしれないけど、聞いてもらっていい?」

「うん、いいよ」

「うん」

「私ね、昨日夢で変なことを体験したの」

「夢で?」

「そう夢で。その夢は最初目を開けた時は、なにもない部屋で、でもなにかの声が聞こえてきた。で、それで私はここはどこ?とその声に向かって何回も聞いた。でも、答えてくれなくて、その変わりに、声がいい夢を見せてあげるよと言ったの。そしたら、場面は一転して病院の前だったの。その時は、今の状況がどうとかそんなことは考えなかった、ううん考えれなかった。彼が、いるかもしれないってそう思うと私は駆け出してしまって……………私はその時、病室に入ったらもう死んでいる彼とまた会ってしまうのでは、そんな不安でいっぱいだった。でも、病室に入ったら彼しっかりと生きていて……その時はもの凄く嬉しかった。その後彼と雑談をして、そしたら彼が急にキスしようと言ってきたの。私は断る理由なんてないからキスしようとしたその時だったの、自分の頭をなにかに叩かれた感覚を覚えたの。…………そして、また目を開けたら最初の場所に戻っていたの。…………つまりは、夢の中の夢なのかな?………はは…」

「そう………それで、その声は、なにかヒントみたいなことは言ってくれなかったの?」

「ヒントは、言われたよ」

「なんて?」

「君の近くにいるみたいな感じだった」

「君の近くにいるみたい?…………美姫はこのヒントどう思う?」

「私は…………そのヒントは物理的なものなんだと思うかな?」

「物理的?」

その考えは私が始めに考え、答えにたどり着けなかった考えだった。

「そう、物理的。うーと、なんて言えばいいかな。物理的っていうよりも距離的の方があっているかもしれないけど、そのヒントは君の近くだったんだよね?」

「うん」

「それは、つまるところ君にとって近いところって意味じゃないかな?」

「君にとって近いところ?それはどういう意味?」

「えーと、病院って私たちにとって近い存在のようで遠い存在でしょ。だから、なんじゃないかな?」

「一番大事なところ…………」

「そう、一番大事なところ。例えば、私にとっては琴葉の家は一番大事ではなくて、自分の家が一番大事でしょ。でも、だからと言って琴葉の家が大事じゃないわけじゃないの。だから、近い場所なんだと思うの…………ってごめんね。全然距離的の意味が説明できてないけど」

「じゃあ、私にとって大事なとこってことなの?」

「そういうこと。琴葉にとって大事な、いやこの場合は大切って方があってるかな。琴葉にとって大切な場所。そこが、君の近くって意味なんじゃないかな?って私は思うけど………」

私にとって大切な場所。

………敦君の家?」

「たぶん、それだよ。琴葉!」

どうやら口に出していたみたいで、美姫が勢いよくそう言ってきた。

「確かにそうかもね。琴葉にとって大切な場所って言われたら……まあ、沢山あるんだろうけど、でもこの場合は1つしかないからね」

「……………うん」

「じゃ、今から確かめに行こうか!って言いたいところだけど、もうこんな時間だし、帰ろっか」

「うん」

「そうだね」

そして、私たちは、お店の人に騒がしくてごめんなさいと謝りを入れ、それぞれ家へと帰るのだった。

「ただいま…………」

「お帰りなさい、琴葉」

お母さんがとても優しい笑顔で出迎えてくれた。

「遅くなってごめんなさい!」

「別にいいのよ。だって、琴葉にとって大切な人を探していたんだよね?」

「うん」

「そう。それならいいのよ。で、琴葉話しがあるのだけどいい?」

「うん、いいよ」

「実はね、お父さん単身赴任でベトナムに行くことになったから、1年間家にいないの」

お母さんはとてもつらそうに言った。

「…………わかった」



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