3日目─異変─

次の日私は、朝早くから部室に来て小説を書いていた。

新作のテーマは愛。

「やっと書き終わった………」

文章量としては5000文字程度。

そして、小説投稿サイトに投稿した。

「なかなかの自信作だな………って、もうこんな時間!?」

私が時計を見ると朝学が始まる2分前だった。

「今から言っても間に合わないよねー。もういっそうこのまま今日1日サボるとか。ま、そういうわけには行かないし、遅れるかもしれないけど頑張ろう」

部室から出ると走り出した。

そして、勢いよく教室の扉を開けると、クラスメイトから視線が一気に私に向けられた。

「神林、遅刻な。で、遅刻の理由は?」

「え、えーと」

部室で小説書いてました!とか言ったら、私が小説書いているってことばれちゃうし、それに笑いが起こる気がするから、ここは無難に

「寝坊しました」

と言った。

「そうか。寝坊か。ともかく早く席につけ」

「はい、わかりました」

席に着くと、ため息をついた。

……やっぱり間に合うわけないよね?だって、普通に考えて走っても5分はかかるんだから……

その時ふと、彼の席が空席なことに気づいた。

もしかして、私みたいに遅刻?って初めは思ったけど、私は思い出すのだった。

そう、確か7年前もこうだった、突然彼が学校に来なくなって、でもその時は深く考えることなどしなくて、結局彼とは死ぬ直前にしか会うことができなかった。

このままではまた同じことになってしまう。

「どうしたの、そんな怖い顔して?」

「…………………………………………」

今日にでも彼が泊まっているはずの病院に行こう。

急に肩が叩かれた気がした。

叩いた人を見ようとしてそっちの方向を見たら、そこには怒っているってことが分かる顔の美姫がいた。

「えーと、何故怒っているの?」

「なんでもない!」

そして、美姫は顔を背けてしまった。

なんだったんだろうか………

それから、私はなにも考えることがなかった。

今日の授業は、ずっと上の空だった。なにも考えることができず、唯放課後に彼がいるであろう病院に行こうとそれしか決めていなかった。

そして、6時間目の終わりのチャイムが鳴り、そしてSTに入った。

STでは、最近は風邪が流行っているので人混みがなるべくさけましょうかという話しだけで終わった。

そして、私はSTが終わるとすぐに教室を出て走り出した。

病院までは、遠くずっと走ることなんてできなかった。

でも、走れるところまでは走った。

何回か転けそうにもなった。

そして、やっと病院の前についた。

病院に入るとすぐさま、中島敦君はいますか?と聞いた。

私は当然いますよと言われるそう思っていた。

でも、看護師さんはいませんねと言った。

私は絶望した。

それに私という異物が入ってきたため、過去が変わっているということも認識せざる負えなかった。

過去が変わっている。つまりは、それに伴って未来も変わってしまうのだ。

「私はどうすればいいの………………………………」

「…………………誰か助けてよ………」

でも、誰も返事を返してくれない。

このままじゃあ、また一緒になってしまう。

私はそこで、蹲った《うずくまった》。

もう、なにもしたくなかった。

私の瞳には涙が溜まっていた。

そして、その溜まっていた涙が頬に落ちると同時に、後ろから声を掛けられた。

その声は、よく知っている声で、とっても安心する声だったから声を聞いただけでわかった。

「………お父さん?」

「琴葉、大丈夫か?」

「大丈夫…………」

「そうには見えないが?というかまず、なんでこんなところにいるんだ?琴葉の学校からは遠いだろ?」

「……………………うん。………人を探しにきたの……」

「人を探しにきた?じゃあ、この病院にいるのか?」

「……いる思っていたけど……いなかった」

今の私はとても弱いと思う。

今嘘でも彼が死んだと聞かされたら、もう立ち直ることができないと思う。

これが過去であるっていうことを分かっていても。

「そうか。じゃあ、お父さんが探してやろう。だから、琴葉は家に帰りなさい。あとのことはお父さんがやっておくから。それと、お母さんには………うーんまあ、なんとか言って帰るのが遅くなるって言うからさ、そこら辺は気にしないでくれ」

「………うん………」

私が立ち上がった時

「あ、探す子の名前聞いてなかったな。なんて言うんだ?」

「中島敦」

「わかった。じゃあ気をつけて帰れよ」

私は帰り道をとてもゆっくりと歩いて帰った。

家の帰る頃には、あたりは黒い分厚い曇が空を覆い、星なんて1個も見ることができなかった。

玄関を開けると、優しい笑顔を浮かべたお母さんが立っていた。

「おかえりなさい。琴葉」

そして、私に近寄ると私のことを抱き締めてくれた。

私に、お母さんの暖かさが、物理的にも精神的にも届いて、涙が止まることを忘れたかのように出てしまう。

「……私には、その貴女が探している人が貴女にとってどんな人なのかなんて言うことは分からないし、それに私が貴女にとっての大事な人なんだよね。だとか言ってしまうことは出来るけど、そんなのは私はいけないと思うから。私はこんなことしかできない……ごめんね」

私は十分に嬉しかった。たぶん、1人だったらもう壊れていた。でも、お父さんやお母さんがこうして私のことを想っていろいろとやってくれるおかげで私はまだ壊れずに入れる。

だから、今すぐにでもありがとうと感謝を伝えたかった。

でも、なかなか口が開こうとしない。

でも涙は出る。

頬を伝わり、お母さんの服を汚してしまっている。

それから、少ししてから私はお母さんの胸の中で意識を手放した。

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