2日目─試験─
今日は余裕を持って、来たからまだ全然人がいないのかなーと思いつつ扉をあけて教室に入ると、私以外の全員が教室に居て、席に座っていた。それに昨日とは打って変わって、教室の中がやけに静かだった。
私は不思議に思ったから隣の美姫ちゃんに聞いてみた。
「今日なんかあるの?」
「え?琴葉なに言ってるの?今日から朝学だよ」
朝学?どこかで聞いたことがあるような…………
「でもそれって、週始めじゃないの?」
「前回はそうだったけど、今回は火曜日からなの」
昨日まで試験があるなんて雰囲気なかったと思うけどな。
ちょっと待て、もしかしたらこれが未来を変えることになるかもしれない……
私は、昨日先生からあんな話しを聞いたからなのか、少しばかり神経質になっているのだと思う。
「?急に考えこんでどうしたの?」
「いや、なんでもないよ。ありがとうね」
「どういたしまして」
私は出したのは、数Ⅰの教科書だったが、そんなのは唯出しただけで頭の中では全然違うことを考えていた。
……これからもなにか、人の未来を変えてしまうようなことが起こるかもしれない。
でも、どうやって防げばいいのだろうか。
昨日も考えたように、一番未来が変わりそうな出来事は、屋上で彼と出会ったことだと思う。
でも、あれがどう人の未来を変えると言うのだろうかって、唯単に話しただけで、彼の未来が変わるわけがないじゃないかと思うところが少なからず私にはある。
でも、やっぱりタイムリープよる人の未来を変える可能性が低いとはいえあるのだから、全てに注意しなくてはいけないのは確かだ。
…………でも、やっぱりどうやって………
その時だった。
私の頭が叩かれたのは。
「な、なにするんですか」
「なにするんですかじゃないわ。神林、何故数学Ⅱの教科書を開いている。今回の試験範囲に数学Ⅱはないはずだが」
え、私は確かに、数Ⅰの教科書を…………よく見たら数学Ⅱと書かれていた。
「すいません」
私が謝るとクラスに笑いに包まれた。
…………しょうがないじゃん。数Ⅰと数Ⅱって文字似てるんだもん。
*
あの後はしっかりと数Ⅰの教科書を開いて勉強している振りをした。
それから、時間は流れ昼休み。
今日は、屋上には行かずに美姫ちゃんと一緒に弁当を食べている。
昼休みになると教室中にはいろいろな匂いが充満して、少しだけ気分が悪くなったりしたなー。
そう思いながら私は弁当箱の蓋を開けた。
弁当箱を開けるとまず目に入ってくるのは、昨日とは色とりどりではあったけど、昨日とは違う料理たちがあった。
もし弁当にテーマをつけるとするなら昨日は大地で、今日は森林だと思う。
理由としては、昨日はコロッケがあったから。
で、今日はなかったから。
うん、我ながらいいネーミングセンスだと思う。
「なんで、そんなに誇らしげな顔?」
美姫ちゃんがそう言ってくる。
「ふーふ、いやだって私のネーミングセンスって凄いなって思ってね!」
「それはどっちの意味で?」
「勿論、いい方だよ!」
「そうなの?じゃあ聞かせてよ」
「うん。昨日は弁当にコロッケが入ってたから大地で、今日はコロッケが入ってなかったから森林。どういいでしょう?」
今の私は心の底から楽しんでいる気がする。
最近の私ときたらノルマクリアに向けて、もうこれブラック企業って言ってもいいじゃないかって残業してたからプライベートな時間なかったんだよね。
「それって大地と森林のどちらかのテーマになるじゃない?しかもコロッケがあるかないかだけで」
確かに、言われてみればそうだ。
コロッケがあったら大地、なかったら森林って。その2つしかないじゃん。
「もしかして、私ってネーミングない?」
「そうだね………」
「……………………」
「……………………」
「そ、そんなことは置いといてさ、琴葉の弁当って美味しそうだよね!」
「そう?じゃあよかったら、なにか1つあげようか?ちなみに全部おすすめだから」
「えー、じゃあおすすめのって言おうとしたのに………しかも全部おすすめって。困るよそんなの。どれ選べばいいかわかんないし。だから、その中でも一番オススメをください」
「一番おすすめかー」
一番おすすめと言われても全部おすすめなんだよね。
だってお母さんの料理は天下一だと思ってるし。
うーん、なにがいいかな?
野菜炒め?それとも煮物?
私は悩んだ末に
「じゃあこれで」
私が美姫ちゃんにあげたのは、グラタンだった。
「じゃあいただきます……………おいしい。というか美味しすぎるよこれ!」
美姫ちゃんは頬を少し赤くして興奮気味にそう言ってきた。
「そうでしょ。なんたってお母さん特性だからね」
「お母さんって、店出してないんだよね?」
「出してないね」
「絶対出した方がいいよ。だってこのグラタン美味しいし、それにたぶん他の弁当の料理だって美味しいに違いない。だから、弁当屋とかやったら絶対繁盛するって!」
美姫ちゃんはよっぽど美味しかったのか、もの凄く興奮していて、終いには私の肩まで掴んでいる。
「それは、私もお母さんに言ってるんだけどね。でもお母さんは、嫌だって言うんだよね」
「そっか。それは残念だなー」
それからもお母さんの料理の上手さについて話したあと、程なくして昼休みは終わった。
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