2日目─小説投稿─
美姫ちゃんと私のお母さんの料理の上手さについて語った昼休みを終えたあとは、物理、生物と授業をやって今は、部活の時間。
朝学があったんだから夜学もあるもんだと思っていたけど、どうやらないみたいだ。
だから今日も1人でパソコンの前に座っている。
パソコンの光のみが部屋の中を照らす。
そんなことをやっているものだから、嫌でも残業の日々を思い出してしまう。
残業をしていると、部屋の電気は全て消される。電気代の節約という理由で。
でもある瞬間部屋にパソコン以外の光がついた。
「神林なんで電気もつけないでいるんだ?」
先生が少し呆れ気味に聞いてくる。
「電気つけるのが面倒くさかったんで」
「面倒くさかったって………目悪くなるからこれからしっかりと点けろよ」
「はい。そういえば、先生はこんなとこに来ている余裕あるんですか?」
「ん?ああ、あるかないかって言われたらないんだけどな。でも、どうしてもお前に言っておきたいことがあって」
「なんですか?」
「神林は、小説投稿サイトって知ってるか?」
小説投稿サイトは、誰でも小説が投稿でき誰でも読むことができるやつだろう。
それなら勿論私は知ってる。
私も何回か投稿しようか迷ったぐらいだから。
………結局は、時間がないって理由で諦めていたけど。
でも、この時にあったかどうかは知らないため私は「知らないです」と答えた。
「そうか。じゃあ、今から会員登録して投稿して見ないか?」
先生はそう私に提案してきた。
正直に言うならば、小説を投稿してみたいって気持ちはある。時間がないわけじゃないから。
でも、もしこれが誰かの未来を変える大きな要因となると考えるとすぐには「はい」とは返事することが出来なかった。
「ん?そんなに悩むことか?唯の小説投稿サイトだぞ。お金もかからないし、気軽に投稿できるっていうやつだぞ?」
そんなことは私でも知っている。
でも、なにも考えず安易に「そうですね」とも答えることができない。
………私は本来この時間軸にいない人だから。
それに、私がいなくなったあとその投稿した小説たちはどうなるのだろうか?
サイト上から消されるかもしれないし、残るかも知れない。
「うーん、なんでそんなに悩みことがあるのかはわからんけど…………あ、じゃあこんなのはどうだ?俺の携帯で、会員登録する。で、そこから小説を投稿するって言うのは」
「なんで……そこまでして私に小説を投稿して欲しいんですか?」
それが私には、どうしても分からなかった。
先生が自分の携帯を使ってまで私に小説を投稿させたい理由が。
「俺は、神林の小説好きなんだよな。だから、他の人にも見て貰いたい。唯それだけのことさ」
先生が心からそう思っていることが感じられた。
「わかりました。でも、会員登録するのはこのパソコンで。……………………それで、私がどんな名前を使うかも教えません」
「わかったよ」
そして、私は小説投稿サイトに飛んで会員登録をした。
名前を、翠にした。
*
「先生無事に会員登録終わりましたよ」
「本当か」
「それで、先生に1つ聞きたいことがあります」
「なにを?」
「先生はさっき私の小説が好きって言いましたよね」
「うん、いったね」
「じゃあ、私の小説のどんなとこが好きですか?」
「えーと、ぜ」
「全部とかは駄目ですからね」
「はは、そんなことは分かっているよ」
じゃあ、さっきのぜに続く言葉ってなんなのかな?
そんな風に思った。
「すぐには、無理だから、少しだけ時間をくれないかな?」
「いいですよ」
それから少しだけ、時間を開けると語ってくれた。
「俺が神林の小説で一番好きなところは、やっぱり心に刺さる言葉だな。今まで読んだ中で一番心に刺さった言葉は、君は誰かのために死ぬことができるかだな。これだけならそこまで心に刺さらないけど、でもその前後の言葉がその言葉になにか意味を持たせている気がするんだよね」
「そ、そうですか………」
なんかもの凄く照れる。
たぶん今鏡をみたら、顔が真っ赤だと思う。
「ま、そんなところかな?……でもなんでそんなことを急に聞いてきたんだ?」
「え……ああーえーと、言っても怒らないでくださいね?」
「おう、約束する」
「先生を………からかいたかったからです……」
「はあ?俺のことをからかいたかった?どこが?」
「えーと、先生に私の小説の好きなところとか…………」
「神林の小説の好きなところを語ることのどこが俺をからかうことになるんだ?」
「いやだって、照れて言えないと思ったんですよ。で、言えなかったらいろいろとからかってやろうってね思いまして」
「はは、そう。俺が照れると思ったのね。俺そんなことじゃ照れないよ」
「そうみたいですね!」
「はいそこ顔を膨れさせない」
「膨れてなんていませんから!」
「はいはい。わかった。ともかく、無事に会員登録も出来たことだし、早速投稿してみたら?」
「そうですね、じゃあ適当に」
私はその時少しだけだけど先生がにやっとしたのを見逃さなかった。
「やっぱり、やめておきます」
「え?なんで?」
「新作を書きたいと思っていますから」
「それ本当?」
「本当ですよ」
「そっか。じゃあ、楽しみのしておくね」
「はい」
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