41話 無契約の悪魔
「アビスモ様~」
「……全員揃ったか?」
ルリジオに悍ましい姿に変えられた後、元の姿に戻った
「はぁい!命の恩人であるアビスモ様にはぁ、
かつての居城に戻ったアビスモは、座り心地の良い漆黒の玉座に座ると、脚を組んだ。
彼の指示で、目の前に大人しく並んだ
悪魔族なりの敬意の示し方を見て、もう一度短い溜息を吐いたアビスモは、彼女たちに顔を上げさせた。
「お前らの契約者は誰だ?あのリリトという悪魔の契約者でもかまわん。教えろ」
「ええーっとぉ……なんかぁ、契約とかじゃなくてぇ……なんだろ?この世界ってぇ、ホントなら、入るのは難しいじゃないですかぁ?」
やけに間延びした話方、甲高い声で頭痛がしそうになるのを抑えながらアビスモが聞き出したのはなんとも不思議な話だった。
本来、悪魔のいる世界からは、魔力を持つ存在が道を開かなければこちらの世界へ来ることは出来ない。
なので、こちらの世界にいる悪魔は誰かに呼び出されたか、誰かと契約していることになる。
しかし、
「もういい。お前らは元の世界へ帰れ。何かあれば
「えぇ~?せっかくアビスモ様とぉ、仲良くなれたのにぃ?」
手の甲を相手に向け「しっし」とするように払うと、
「仲良くなってない。それに」
羽根をばたつかせて頬を膨らませている
「さっさと帰らないとルリジオが来るぞ?」
一瞬の静寂の後、悲鳴にならない声を上げながら半狂乱になった
どうやら、あの悍ましい化け物の姿に変わってしまったことは、とてつもない苦痛だったらしい。
対象の思うがままの姿に変化するとはいえ、本来は美しくあることを誇るのが
アビスモが、腰にぶらさげていた
彼の身体から染み出す様に現れた黒い靄が、
カンっという澄んだ固い音が響くと、黒い靄はアビスモが座っている玉座の隣に集まって人一人が通れるくらいの両開きの黒い扉へと変わる。
黒い扉に紫色の魔法陣が描かれ、それが光り始めると同時に、アビスモたちの居る部屋の扉が開かれた。
扉が開いた先には、太陽の光から紡ぎ出されたような美しい金色の髪を揺らす美青年が立っている。
「ああ、君たちはこの間の……」
金髪の美青年――ルリジオが、人間の乙女なら見た瞬間骨抜きになってしまいそうな程優しい微笑みを浮かべて部屋へ一歩足を踏み入れる。
「残念だなぁ。一匹くらい生け捕りにしたかったんだけど」
全ての
「それで、どうだった?」
椅子に腰掛けて、背もたれに寄りかかって、ルリジオはアビスモの顔を見た。
「アソオスにも聞いてみたんだけれど……悪魔の気配が増えた、とは言っていたかな。具体的にどうかまではわからないらしいけれど」
ルリジオの言葉を聞いてアビスモは顎に手を当てて、顔を僅かに俯かせる。肩に掛かっていた紫色の髪が、サラサラと音を立てて胸元に落ちるのを、ルリジオは黙ったまま見ている。
「下級の悪魔が多少増えるくらいなら問題はない、が……ふむ」
「万が一問題が起これば、僕らが叩き潰せばいいだけじゃないのかい?」
「簡単に言ってくれる」
クッと小さく笑いを漏らしたアビスモは、目の前で微笑みを浮かべたままのアビスモへ視線を戻した。
「アソオスがしていたことを思い出せ。趣味で殺戮を繰り返し、人を憎悪や疑心暗鬼や肉欲で操り村を簡単に壊滅させる生き物が大量発生すれば、この世界は無事では済まないぞ」
そう言われて、ルリジオは何かを思い出すかのように少しだけ視線を空へ泳がせる。
「……僕が駆けつける前に
アビスモは呆れたように笑いながら、玉座から立ち上がるとルリジオの方へ近付いてきた。
立つようにジェスチャーで示されたのを見て、ルリジオも立つ。先にバルコニーへ出たアビスモの後を追った彼の頬を乾いた風が撫でる。
どこまでも広がる荒れ地が見渡せる広いバルコニーで、アビスモは指をパチンと鳴らした。
「タンペットにも、悪魔の件について調べて貰っている。彼女の元へ向かおう」
足が六本の黒馬四頭に牽かれた馬車が空を駆けながらこちらへ向かってくる。空中に止まっている客車に乗り込んだ。
フカフカとした椅子に腰掛けたアビスモは、タンペットが調べていた内容に関してルリジオに伝えながら目的地に向かうことにした。
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