3-7
沈黙が再び流れた。
「……夏祭りの日に来てくれたら教えてあげるよ」
夏祭りの日、俊太は本当に来ないのだろうか。
もう三人で、肩を並べて歩くことは出来ないのだろうか。
私は、どうすれば……。
「俊太は、本当に来ないと思う?」
「本人はそのつもりみたいだよ」
「そっか……」
「僕も残念だよ。俊太とはとても仲良くなれたのに。この夏最後の思い出は、三人で作りたかった」
「二人で俊太を迎えに行ったら、俊太は怒るかな」
「俊太は決めてほしいんだよ」
佳くんが窓の外を見つめた。
外はもう日が落ちかけていて薄暗くなっている。
「僕も、君の気持ちを知りたいな」
突然、ばらばらと大粒の雨が屋根を打ち付けだす。夕立が本格的に来たようだ。
「私は二人とずっと仲良くしていきたい。どちらか片方だけなんて嫌だよ……」
「どちらにも行かないっていうのも面白い結末だよね」
佳くんが明るく笑って私を見た。
「そんなに深刻に考えなくていいと思うよ。当日になって、君が何となくこっちだって思った方に行けばいいんだ。どちらにも行きたくなければ、来なくてもいいんだよ」
「そんなに簡単に?」
「そう。僕たちは君の正直な気持ちが知りたいわけだから、遠慮しないで、君の思うがままに動けばいいのさ」
彼の柔らかな笑顔に、少しだけ心が軽くなる。
「もし僕が選ばれなくても、相手が俊太なら、我慢できるよ」
「……」
「なーんて、かっこいい事が言えたらいいのだけれど……。我慢はできるかもしれないけど、できれば選ばれたいっていうのが本音かな」
そして佳くんは、真っ直ぐに私に向き直って告げた。
「だって、僕は君が好きだもの」
今、彼は何と言ったのか。
頭の中が真っ白になるとは、こういう事なのだろう。
「言っちゃったね。好きだよ、螢ちゃん」
好き? 誰を? 私を? 誰が――?
佳くんの瞳は、こちらが
「何度でも言うよ。だって、俊太に負けてしまいそうだもの。僕たちの過ごした時間は、俊太と君の過ごした時間よりも、ずっとずっと短いから。だから、君には僕のこの想いを、何度も聞いてほしい」
佳くんが、私を、好き……?
身体中の熱が、一気に顔に集まってくる感覚。
私は今の状況に耐えきれず、佳くんから身体ごと逸らしてしまう。
「駄目だよ、こっちを向いて。僕を見て」
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