3-1

 それは、花火の日から二日後の事。

 祖母が他界してしまった。

 母がいつものように様子を見に行ったところ、新聞がポストに入ったままだったそうだ。体調でも崩したのかと思い家に入ってみると、いつも座っている場所に姿がなかったという。心配になって母がそのまま寝室まで行くと、布団の中で眠った状態のまま亡くなっていたのだと聞いた。

 その表情からは苦しんだ様子はなく、とても安らかだったそうだ。

 死因は老衰ろうすい

 誰にも看取みとられずにってしまったのは気の毒だったけれど、一番幸せな旅立ち方だと、誰もが言っていた。

 亡くなったと聞かされた時、幼い頃に祖母と過ごした日々が、頭の中に次々と浮かんできた。

 祖母は手先が器用だったので、折り紙やあやり、編み物などがとても上手だった。祖母の手は魔法の手だと、いつも俊太と話していたのだ。

 それから、駄菓子屋までお菓子を買いに行ったり、庭でシャボン玉をしたり、手遊びを教えてもらったりもした。

 色々な思い出がよみがえってきた。

 数日前まで当たり前に存在していた人が、今はもう居ない。

 世界中のどこを捜しても、もう二度と会うことは出来ないのだ。

 私は火葬場から帰ってくると、喪服から普段着に着替えて、自分のベッドに寝転んだ。

 無意識に重たい溜め息がでる。祖父の時もそうだった。もう、こんな思いはしたくない。

 時計を見ると、午後二時半を指していた。

 座っていただけなのに、どうしてこんなに疲れているのだろう。

 何もする気が起きず、私はそのまま目を瞑った。泣いたせいか、瞳の奥が少し痛かった。


 それからどのくらい経っただろうか。私は少し眠っていたようだった。

 私を起こしたのは、母の声とノックの音だった。

「螢、ちょっと話があるから下りてきて?」

 私は言われた通り、リビングへ下りていった。

 そこには父の姿もあり、父は私の姿を見ると、手に持っていたコーヒーをテーブルに置いた。

 私が椅子に座ると、母が私に紅茶を出しながら口を開いた。

「あのプレハブ小屋なんだけど、取り壊して土地を売ることにしたから」

「え……?」

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