2-20

 私は少し考えて、ワンホールのケーキが一つ入るくらいの箱をイメージした。

 重さはかなり重くした方が面白くなりそうだと思い、そう見えるように演技をしてみせた。

 佳くんの演技スイッチが入る。

 佳くんの手に渡ったと思われた瞬間、佳くんが体全体を使って重さを受け止めたのが分かった。

 思わず佳くんに見入ってしまう。

 表情からも、かなり重いものを持っている様子が伝わる。

 ゆっくりと、一歩ずつ踏み締めるように歩いていき、苦しそうにプレゼントを床に下ろした。

 息が上がったように肩を上下させ、額の汗を拭うような仕種しぐさをする。

 そして、腰を何度か叩いた後、腕を組んで少し考えるような表情をしながら、プレゼントの前に座り込んだ。

 佳くんの動きには迷いがない。一つ一つの動作がしっかりと丁寧で、見る者を惹きつける。

 次はプレゼントのリボンと包装を解く動きをし始めた。

 本当に、心からわくわくしているような表情で手元を見ている。見ているこちらも、何が出てくるのだろうかと期待してしまうほどだった。

 プレゼントの箱のふたをゆっくりと、そして、中を覗き見るような仕種で開ける。

 そして再び立ち上がり、気合いを入れるように首や腕を回した。

 箱の中に手を入れ、重たそうな表情で何かを取り出す。そしてそれを、ゆっくりと床に置いた。

 何が出てきたのだろう。

 佳くんは、床に置いたプレゼントの上に乗るような動きをし、指をかかとへと持っていった。

 これは、……靴かな?

 真っ直ぐに立ち、前へ進もうとする。

 しかし、足が床にぴたりと貼り付いたように動けない。その表情は必死だ。

 バランスを崩して体全体が大きく前後に揺れる。何度か前方へ進もうと努力をし、最後には両手をお手上げ状態のようにしてパントマイムは終了した。

「へえ、見事なもんだな」

 俊太がアイスバーの棒を咥えた状態で、感心したように腕を組んだ。

「ありがとう。あっつぅ~」

 佳くんは、ふう~、と言いながら、両手で顔をぱたぱたと扇いだ。

「螢ちゃん、ナイスプレゼント! やりやすかったよ。どんな物を渡されるか、内心ドキドキしてたけどね」

「普通じゃつまらないかなと思って、大きさの割りに重くしてみたんだ」

 私の言葉に、佳くんは穏やかに微笑んでくれた。

「次は一緒にやってみようね」

「う、うん」

 俊太は私の夢を知らない。俊太をちらりと見やる。

 一瞬、目が合ってしまったように感じたけれど、向こうは特に気にした様子はなく、自然に視線を外したように見えた。

「……。さーて、俺はそろそろ帰るかな」

 立ち上がった俊太を、佳くんが引き留めるように声をかけた。

「え? まだ、もうすぐ三時半になるところだよ? ほんと、俊太って良く晴れると帰るの早いよね」

「もう少ししたら雷雨が来るだろ。だから帰るんだよ。何度も言わせんな」

 そして俊太は大きなくしゃみをした。

「あー、なんかさみぃな。お前らも早く帰っとけよ」

 じゃあな、と軽く手を上げて、俊太は帰っていってしまった。

「そんなにこの中って冷えてるかな?」

「まあ、エアコン掃除した後だから効きは良いけど、寒いレベルではないよね。俊太より私の方が寒がりなはずだし」

 これはもしや……。

 それから少しして、俊太の天気予報通り、空模様が怪しくなってきた為、私たちは帰路についた。

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