2-8

【二人とも無事に帰れた? 今日は楽しかったね】


 そうLINEに送信して、アプリケーションを終了する。

 俊太は無事だろう。メンタル以外は。

 しかし、佳くんの帰る家は少しだけ離れている。もしかしたら降られてしまうかもしれない。

 流石さすがの私でも、外に出ているときの雷は怖い。それでも帰りが遅くなってしまうと厄介やっかいだと思い、まだ雷が遠いうちに、私たちは急いで帰ることに決めたのだ。雷は遠くても危険だと言う人もいるのだけれど。

 俊太はあっという間に見えなくなった。

 自転車屋を継がずに競輪への道へ進むべきだったのではないかと思うほどに、あっという間に消えた。それはまあ、仕方がない。

 彼は雷が大嫌いなのだから。

 きっと、死ぬ思いで自転車を飛ばしたのだろう。

 突然、ばらばらと窓を打ち付ける雨音が聞こえてきた。大粒の雨だ。

 佳くんは無事に着いただろうか。

 窓の外が一瞬ひらめく。それと同時に、地響きと共にバリバリバリィィと、まるで空が割れたかのような音でとどろいた。耳をふさぎたくなるほどの大音量。

 これは近い。雷雲は真上だ。

 私はエアコンと部屋の電気を消し、団扇うちわを持ってベッドの上に寝転んだ。

 雷が近いときはいつもこうだ。

 極力電気を使わないように努める。静かに横になり、力を入れずにゆっくりと団扇を動かして暑さをしのぐのだ。

 私が目をつむったその時、ピロン、とLINEの着信音が鳴った。先程の返事だろうか。

 スマートフォンに手を伸ばし、LINEをチェックする。


【俺は無事だ。ホシケイは大丈夫か?】


 俊太からの応答だった。

 その応答からしばらく経って、ようやく佳くんからの返信が送られてきた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る