2-6


 空がゆっくりと藍色に染まっていき、雨蛙の盛大な大合唱が始まる。そろそろ頃合いだろうか。

「そろそろ行ってみるか?」

 雑談が一区切りついたところで、俊太がカーテンの外を覗いて言った。

「そうだね。行こうか」

 今日は三人とも自転車だ。私と俊太は自分のもので、佳くんはお祖母ばあちゃんのものを借りてきたそうだ。

 川辺までは自転車で十五分ほど。ただ蛍を見るというだけならば、わざわざ川辺まで行かなくても、田んぼの上を飛んでいるのを見ればいい。それでも、川辺の方がたくさん見ることが出来るし、何より、私たちは三人で出かけたかったのだ。

 川辺付近まで来ると、道の端に自転車を停めた。そして、懐中電灯を照らしながら川辺まで歩いていく。

 足元は少し泥濘ぬかるんでいる。大小様々な石が転がっていて、非常に歩きづらかった。

「滑るから気を付けて歩けよ。ここまで来たら、すぐそこだから」

 先頭の俊太が、自分の足元を見たまま言った。

 視界にきらきらとしたものが入ってくる。それは少しずつ増えていって――。

「わぁ……」

 思わず声を漏らしたのは佳くんだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る