「鞘乃の恋?女槍騎士来日!?・②」

「おいおい!オレだって研ぐぐらいはできるぜ!!シャッシャッ!で、あっと言う間さ!!」


 胸を張って言うその刀子の言い草に、鞘乃が引っかかった!


「シャッシャッ!って?いったいどうやって研いでるの?ねえ、刀子ちゃん!?」


「どう研いでるって?お前、百円ショップの砥石、知らないのか!?」


 馬鹿にした風にいう刀子。


「ひゃくえん!?百円って百円?」


「それ以外にどんな百円があんだよっ!!」


「そっ、それで研げるの!?」


「ああ!包丁用のがあるだろ?なんか、ローラーが回るやつ!!あれで、シャッシャッ!だよ!!」


 さすがに伊達も、えっ!?という顔をした。


「もしかして、刀子ちゃん今までそうやって研いでたの?」


「そうだが?なんか問題あんのか!?」


「・・・」


 目が点になる鞘乃と伊達。


「あと、百円ショップの瞬間接着剤は最強だな!!」


 瞬間接着剤と聞いて、ちょっと不安になりながらも鞘乃は尋ねた。


「せっ、接着剤って?」


「ああ!鞘が割れた時に使ってんだよ!!あと、鯉口がゆるんだらはばきに、これまた百円ショップのセロハンテープを巻く!!のが最強だな」


「百円ショップの砥石に接着剤、そしてセロハンテープって、たまにはちゃんと刀を、専門家に見てもらった方がいいよ!!」


「ああん?何言ってんだ鞘乃?専門家だと、金がかかるだろ?金が!使えりゃいいんだよ!使えれば!!」


「でも、欠けたのはさすがに!?」


 と、鞘乃が言うと。


「なーに!大丈夫。百円ショップの金属ヤスリで一発さ!!」


「「「また百円ショップ!?」」かピョン?」


 こんないい加減な刀子に、鞘乃や柄恵、そして伊達も、うなだれたのだった。しかし、鞘乃は気を取り直し、刀子に言った。


「よし!分かった刀子ちゃん。お昼休みになったら、玄関ロビーに行くよ!!」


「なんでだよ!!」


「週一で、研師とぎしのオジサンが来てるから、欠けた刀を手入れしてもらおうよ!

300円で研いてもらえるよー!!」


 と、凄く面倒臭くて嫌な顔をしている刀子に向かって、鞘乃は言ったのだった。


◇◇◇


「ワターシの、なまーえは、ランス・フランス・ランスロットでーす」


 クラスに戻った刀子たちの前には、正真正銘、眉毛まで金!のホントの金髪!!そして髪が肩までのウェーブの転校生が、担任の男性教師の横に立って、自己紹介していた。その転校生のランスは陶器のように透き通るような色白の肌で、そして鼻が高く、くっきりとした二重に長いまつ毛、海のような碧眼ぺきがんだった。


 凄まじいのはその体型だ!刀子より高い175の背丈に、鞘乃を越えたHカップの「爆乳」があり。くびれたウェスト、そしてプリンプリンのお尻があった。つまりはリアル!ボンキュボンだ。


 そしてスカートから伸びる、メチャクチャ細く長いあしには、シルクで出来た淡金色たんきんいろのサイハイが履かれていた。もちろん!上履きも学年カラーのゴム底が付けられた、シルクの特注上履きだ。ちなみに、淡金色を作るカイコはインドやインドネシアなど一部地域でのみ生息しているカイコで、とても貴重な物となり、高級品なのである。


「きれーい!」


「お人形みたい!!」


 女子生徒が羨ましそうに言った。その転校生ランスの右手には、軽く持ち上げるだけで天井に刺さってしまう、長さ3メートルで、先を上にして持たれた三角錐が特徴の騎乗槍きじょうやり、銀色のランスがあった。


 そして、左の腰には銀ランスを失ったり、接近戦になった時の為に、つかの短い片手幅広剣ブロードソードを帯刀していた。


「スゲー!フランスから来たのか!!」


 刀子が聞いた。


「チガイまーす!」


「じゃあ、どこに住んでたんだよ?」


「イギ、リスでーす!」


「イギリスなのにフランスかよ!?」


 刀子が突っ込んだ!!だが、ランスはそんな事はお構いなしに。


「ところで!ヤーリが得意な者はいませんか!?みな持ってるのは、ジャパニーズ・ソードだけですか?」


 と、みんなに聞いた。


「ヤーリ?って、なんの事なんだピョン!?」


 柄恵が頭をひねっていると、鞘乃が言った。


「そうだよ!このクラスは、刀だけだよ。他のクラスには、槍を持っている人がいるよ!あと、良く放課後に中庭に集まっているよ!!」


 と、鞘乃が言った。


「ソーウですか、このクラスにはイナーイですか!」


 と、ランスは少し、しょんぼりした。でも、すぐに気を取り戻すと、右手に持ったランスを引き寄せ。


「このランスに、ミアーウ自分になれるよー、ニポーンでもショウジーンしたいと思いまーす」


 と、可愛く言った。これには男子生徒が色めきだった。


「スゲー!なんて品があるんだ!?」


「美しい!美し過ぎるー!!」


 まあ、ただ片言の日本語を話しただけなのだが。すると担任教師が話し始めた。


「えー!ランスさんは今朝方、飛行機で到着したんだ。で、車で移動していた為、三時間目からの登校となったが、これからはみんなと同じ時間での登校となるから、みんな!仲良くしてやってくれよ!なお、教室の後ろで立っている外国人の若い男性は、ランスさんの護衛兼世話係の従者じゅうしゃさんだ」


 みんなが一斉に後ろを振り返った。


「なんと!いつの間に後ろに!?拙者まったく気づかなかったでござる!!これは相当の手練れでござるな!?」


 忍者が、マジで驚いた声をあげた。


「初めまして!私はランスお嬢様の護衛兼世話係としてイギリスより付き添いに来ました従者です。授業の邪魔にならないよう致しますので、どうか宜しくお願いします」


 ランスと違い、従者は流暢な日本語で刀子たちに話した。従者の身長は190はあろうかという高身長で、ちょっとクセのある金髪は短く、ランスと同じく鼻も高く肌は色白。そして、目も同じく紺碧だった。そして着ている服は、白の燕尾服と、中に淡金色のチョッキを着ていて、首にはチョッキと同じ淡金色の蝶ネクタイを締めていた。そして靴も白で、エナメル靴だった。


「日本語!めちゃくちゃ上手いじゃねーか!!」


 刀子が言うとすかさず、鞘乃が言った。


「刀子ちゃんよりも、言葉の使い方が上手ね!!」


 これには、クラスのみんなが爆笑した。すると担任教師がみんなに言った。


「では!転校生の紹介はこのくらいで、授業を始めるぞ。まず、世の中のすべては、球体か円環状だ!これが数学の基礎だ!!」


 こうして、担任教師のいつものごとく訳の分からない冒頭のセリフから、授業が始まったのだった。


◇◇◇


 三時間目が終わり休み時間になると、従者の周りに、女子生徒たちが群がり、黄色い声を上げていた。


「キャー!格好いい!!英語おしえてー!!」


「趣味は何ですか?」


「歳はいくつ?えー!21歳!?」


 そして、その騒ぎを聞きつけた他クラスの女子生徒も集まって来て、目下、増殖中だった!


「オー!あなーたの方が、メダーテますね?」


 ランスに言われ、困った顔をする従者。


「お嬢様、済みません」


 背の高い従者は、囲まれながらも、顔が十分出ているので、ランスお嬢様と普通に話をする事が出来ていた。


 そして昼食の時間になった。


「スゲー!!こんな昼ご飯サイコーだな!!」


 みんなが、ランスの机の周りに集まっていた。ランスの机には、レースの付いた白いテーブルクロスが掛けられていて、白磁はくじの洋食器の上に、卵やサラダ、分厚いハムなどのサンドイッチ、そして熱々のスープが用意されていた。もちろんドリンクもあるが、物凄く透明なグラスに、濃厚なオレンジジュースが、大きなとうのバスケットを持った従者によって注がれていた。


「美味しそうだピョン!!」


 周りのみんなは、ヨダレをすすりながら、自分たちの弁当を食べた。そんな中、側で食べていた伊達が、ランスに言った。


「この銀色のランス!凄いですね。ボク、本物を初めて見ましたよ!!まで金属なのですね!!」


 机に立てかけられた銀色のランスを見ながら、伊達が興奮気味に言った。


「これって、馬に乗って戦う槍ですよね?」


「そうデース!でもワタークシ、アシにはジシーンがあるので、ウマいなくても、イパツで突きサセマース!!」


「おお!確かに、こんな金属の、しかもスゲー!尖った槍で突っ込まれたら、一刺しだな!!」


 そう言う刀子は、すでに頭の中で、どう戦うかを考えていた。すると鞘乃が刀子に言った。


「さあ、ご飯も食べた事だし、刀子ちゃん!玄関ロビーに行くよ!!そしてちゃんと、刀の手入れするよー!!」


「ええ!マジかよおお!!!300円で、お菓子の方がゼッテーいいぜ!!」


 刀子はマジで、とぉーーっても面倒臭そうに言ったのだった。


つづく

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