「つまりは抜刀の仕方!?・②」
「その通りだ鞘乃。とにかく
五里田はみんなに向かって言った。
「とにかく、力任せでもいいから相手より早く抜いて当てろ!とは、そういう意味だ。これが実戦教育を行って来た中での、今の基本となっている。だから縦でも横でも、なんでもいい!とにかく抜いて、まずは当てろ!!」
五里田は
「ちなみにじゃな、抜き付けの動きは、今の剣道に残っておるから、剣道の面や小手の打ち方を思い出すとやり
居合爺ちゃんが補足した。続けて五里田が抜き打ちについて話した。
「次に、抜き打ちだが、抜くと同時に相手を切り落としたり致命傷を与える斬り方の事だ!上からなら
するとまた、居合爺ちゃんが補足した。
「それと、”突き”じゃの!そうそう、突きと言えば、沖田総司の
「あっ!師範、ありがとうございます」
五里田が居合爺ちゃんに頭を下げた。
「左寝かせ?」
刀子が首をかしげた。すると伊達が説明した。
「刀を寝かせると、体を狙った時に肋骨に邪魔されないのです」
「へえ!すげーな左寝かせ!!あと、抜き付けだか、袈裟だか、まあややこしいが!やっと分かったぜ!!まあこれだけ、ややこしいんだから、伊達も間違えるよなあ!!」
刀子は調子よく答えた。
「伊達の事はいいから、お前はちゃんと話を聞け!!」
五里田が刀子に言うと、刀子以外の女子生徒たちは爆笑した。すると居合爺ちゃんが伊達をかばうように話し始めた。
「 刃を上にして抜刀からの抜き付けは、
「はい、そうです師範。先程の生徒は伊達です」
五里田が居合爺ちゃんに答えた。
「そうか。で今、残っている剣術の動きでは、初太刀で横からの抜き付けをし、そして仕留める
すると。
「そっかあ!それじゃあ伊達さんが間違えちゃうのも仕方ないね!!」
「そうだよ!あの伊達さんが間違う訳ないピョン!!」
と、あちこちから声が上がった。なので刀子は誤魔化すように慌てて言った。
「あー!そういや、政経の先生も言ってたなあ!!抜いて付けるだか、打ち付けるだかなんとか?刀を抜くと同時に斬りつけるから、抜き打ちなんだな!」
「やっとつながったの刀子ちゃん?そうだね、だから予告なしに突然にやられるから、”抜き打ち検査”とか”抜き打ちテスト”って言うんだよ!!」
「マジか!そういう意味だったのか!?」
鞘乃の言葉に、刀子の眉毛は八の字になり、参った!といった顔になった。それから、また五里田の指示に合わせて抜刀の練習が始まった。
「では、しばらく各自で、抜き付けや抜き打ちの、色んな抜刀を練習しろ!」
女子生徒たちは、それぞれに抜刀を繰り返していた。そんな中、たどたどしく抜刀をする刀子の側に、居合爺ちゃんが近寄ってこう言った。
「刀を抜く時、鞘を回して刃を下にしてから抜刀してみるんじゃ。たぶん抜刀が出来るはずじゃ!」
「えっ?ホントか!?」
「たぶんそうじゃ!!」
「たぶんて、ホントか!?」
「そう、疑うな!ささ、やってみるのじゃ!!」
「こっ、こうか?」
刀子は鞘を左手で持つと、甲の方、外側に向かってひねって回した。
「いや、逆じゃ!」
「ぎゃ、逆?じゃ、こうか?」
今度は左手を、手首の内側の方に曲げながら鞘を回した。
「そうじゃ!それなら手首だけでなく、肩からの重みも使って回せるから素早くなるんじゃ!!次に柄を握るのじゃ」
刀子は居合爺ちゃんに言われるがままに、左腰の鞘を左手で下に回した体勢のまま、柄を握った。
「それ!抜刀じゃ」
刀子は抜刀した。
―――シャキン!!
「えっ!?」
それは、
「やはりそうか!上からの抜刀では柄の持ち方が、柄に対し真横なんじゃが、そのまま片手で抜き打ちするには、握り手として、これは実は意外と難しくてのお。そして抜き付けならいいが、抜き打ちでは力が足りんから、上からの抜刀では下ろす時に左手をそえるのじゃ!が、それもなかなか難しい!!だが、下からなら一番、力をかけやすい柄の持ち方が出来、そして抜きやすいんじゃ!そうじゃろ?太刀と同じ差し方になるからのお!!」
そう言って、居合爺ちゃんはフォホホホ!と笑った。そして、自分の滑らかな抜刀に驚いている刀子に改めて言った。
「ほら!出来たじゃろ?」
刀子の目に、見る見るうちに涙が溜まって来たかと思うと。
――ポロ
―――ポロポロ
と、大粒の涙が体育館の床に落ちた。それを見た居合爺ちゃんは一言、言った。
「良かったの」
すると――
「ジジイ!ありがとー!!」
刀子は抜いた刀を手に万歳をし、居合爺ちゃんに抱きついた。
「フォホホホ!これ、苦しいぞ!ハハハ、良かったの!良かったのお!!よしよし!ならば、お譲ちゃんには
居合爺ちゃんは、とにかく嬉しくて泣きじゃくる刀子の頭を、優しくポンポンとしたのだった。
◇◇◇
「うひ!うひひひ」
抜刀の授業が終わり、通常授業を受ける刀子。
「刀子殿!気持ち悪いでござる」
隣の席の忍者が言った。
「えっ?何が!?」
「さっきから、ずっとニヤニヤ、ウヒウヒしたままでござるよ!!」
「そんなことねーよ!うひひひ!!」
その時、担任の男性教師が刀子を注意する声が響いた。
「こらー刀子!!授業中だぞ!!」
そして同時に、チョークが飛んできた。
その瞬間!!
―――シャキンッ!!
刀子の抜刀した刀が、飛んで来たチョークを真っ二つにした。そして飛ぶ破片!!
――サッ!
その飛んで来た破片を瞬時によける忍者。すると破片は、その斜め後ろにいた柄恵の――
カツンッ!!
「痛い!痛いんだピョン!!」
当たると同時に跳ね上がる黄色のツインテール!そして柄恵は額を押さえて机に突っ伏した。
「すまん柄恵!悪いのは刀子だ」
と、担任教師はひとこと言った。おかげて、クラスは大爆笑の渦だった。その大爆笑の中。
「やった!やった、やった、やった、やったー!!アハハハ!
刀子は素早い抜刀で対応出来た事に、嬉しくてたまらず刀を持ったまま、ガッツポーズをしたのだった。
つづく
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