「刀なのになんで剣なの!?・④」

「大丈夫よ!貧子は心配しなくって」


 と、貧子の母は言った。貧子の母親は、年齢からいって30代なかばを過ぎたという若い母なのだが、いくらほがらかにしていても、その表情からは生活の疲れが見え、身なりにもそれは表れていて、一見、初老かと思うような結構な年齢に見えていた。そして、貧子と同じく髪はベリーショートだ。


「えって!だって、こんなに高いよ!?」


 日本刀の金額に驚いている貧子。


「いいわよ!買ってあげるから」


 と、母は即答した。


「でも!お母さん?買うっていっても家に、お金ないでしょ!?」


「また、仕事増やすから大丈夫よ!!」


 可愛い我が子の為と思うと、自然とニコニコと笑う母だった。


「だって、夜も働いてるよ!」


 貧子は胸が締め付けられる思いになり、目頭が熱なり、見る見るうちに目に涙が溜まっていく。でも、母に涙を見せたくない貧子は、涙がこぼれないよう頑張りながら。


『お母さんにこれ以上、負担をかけたくない』


 と、思い貧子は母に言った。


「待って、お母さん!とにかく安いの探してみる!!」


 それから、貧子は友達にお願いし、友達のパソコンや、貧子は母が心配して持たせているキッズ携帯だけなので、友達のスマホを使って、とにかく安い日本刀を探した。この時点で、入学まであと1ヶ月だった。


「あっ!安い刀あった。模造刀?刃がついてないってことかな?じゃあ、模造刀は帯刀出来ないのかあ。学校の一覧表では、必ず切れる真剣で!ってあったけど。でも、それなら模造刀を研げばいいのかな?よし!これにしよう。私、包丁とげるから大丈夫だ!!」


 貧子は踊る気持ちで、母に言った。


「凄く安い日本刀を見つけたよ!!」


 そして、友達にお願いし、ネットでの購入を行った。すると、次の日に刀は届いたのだった。


「やった!!」


「貧子は買い物上手ね!」


「えへっ!」


 満面の笑みで嬉しそうな貧子の顔を見て、母も涙が出るほど嬉しかった。そして、貧子は家の砥石で刀を研いだ。


「こんな感じかな?」


 それから広告の紙に刃を当ててみた。


―――スッ


 刃が紙に入っていく!それにともなって貧子の目が輝いていく!!そして――




ハラリッ 


「やったー!!」


 広告の紙が、真っ二つに切れた。それを見た貧子は、勝手に日本刀の舞!と称して、家の中で小躍こおどりをした。貧子はそれから毎日、予習の為、抜刀と納刀の練習をした。


 その間に、貧子は中学の卒業式を終えた。卒業式では、貧子は人からもらった制服の中からでも一番綺麗な制服を選んで来て行った。母は、自分の成人式で着たスーツを着ていた。そして母は、娘の大きくなった姿を見て泣き通しだった。


 だがしかし!四月に入り、入学まであと5日となった時だった。


「ええっ!?」


 刀の刃がびているのに貧子は気がついた!慌てて貧子は研ぎ直した。そして、入学。貧子の刀は錆びては研ぐの日々になった。そんなある日、授業で本当に斬り合う、合わせ立ち合いを行った時の事だった。


「「勝負!!」」


 の、かけ声と共に刀を抜く貧子。相手に向き合う頃には、相手の刀が貧子のスカートを縦に切っていた。


「きゃ!スカートがあ!?」


 貰い物の制服しかない貧子は焦った。焦った貧子に相手の二の太刀が襲う!貧子は、服が切られまいと模造刀で、相手の刀を受けた。が――




カキンッ!!


「ああ!!」


 貧子の毎回、研ぎ直したとはいえ、中まで錆びてしまっていた模造刀は、いとも簡単に相手の刀によって折れてしまった。そして――




ブスッ!!


 相手の刀が貧子の腹に刺さっていた。高校入学から分かってはいるものの、本当に服に穴あき、血まみれになった事に貧子はショックを受けながら、絶命したのだった。


◇◇◇


「ううっ」


 貧子は再生棟で独り、目覚めた。見ると、スカートもセーラーもボロホロになっていて、それ以上にそばに置かれた折れた刀を見た貧子は。


――ポトッ


―――ポトポトッ


 と、大粒の涙をこぼしていた。


 それから、念のため持って来ていた、卒業式など行事の時に着ようと思ってた、一番綺麗なお古の制服を着た。


 その日、家に戻った貧子は母に謝った。


「お母さん、ゴメンさない」


「大丈夫だから。すぐに制服を縫い直すわね」


 そう言うと母は貧子に向かってニッコリと笑った。


「お母さん!やっぱり私」


「ダメよ!それだけはダメ!!」


 貧子は自分で学生ローン組んで、本当の刀を買おうと考えていた。だが、ソレをさっした母に止められてしまった。


 とりあえず貧子は、折れた模造刀の刃を抜いて捨てると、ひとまずその辺で拾った木で刀身を作った。


「アルミホイルを両面テープでつければいいかな?」


 慎重に、アルミホイルを木の刀に貼る貧子。そして作った刀身を柄に差し込んだ。


「やった!図工5の腕前~!!」


 貧子は自分で自分を誉めて慰めていた。貧子は出来た刀を腰に差した。そして抜刀をした。


―――シュンッ!


 その貧子の手には、パッと見、木とは分からない精密な刀があった。


「でも、よく見ればバレちゃうよね……」


 と、つぶやく貧子。その姿を母はふすまの影で、エプロンで涙ふきながら見ていた。


―――シュン


――カチンッ!


 それからの貧子は、とにかく偽刀にせがたなとバレないようにと、素早い抜刀と納刀を練習した。


「絶対にバレないように!素早く抜刀!そして納刀!!」


 そして、いつしか貧子は抜刀した刀の柄に人指し指にかけ、抜くと同時に――


シュン!カチンッ


 回転させ納刀する方法を見つけだした。


「やった!これならバレないかも!!」


――シュン!カチンッ!!


―シュン!カチンッ!!


 その後、貧子は木の刀よりもっと丈夫な、竹で作る竹光たけみつを知り、近くの川で生えている竹を使い、竹光を作った。そしてさらには竹光を改良し、なんと!


「さあて、切れるかな?」


 広告の紙に竹光の刃を当てる貧子。


―――スッ


 刃が紙に入っていった!それにともなって貧子の目が輝いていく!!そして――




ハラリッ 


「やったー!!」


 広告の紙が、真っ二つに切れた。それを見た貧子は、またまた日本刀の舞!と称して、家の中で小躍りをした。なぜ竹光なのに紙が切れたのか?と言うと、なんと貧子はカッターナイフの刃を縦に何枚も並べ、それを竹にはさむという積層構造のスーパー竹光を作ったのだ。


 その姿を襖の影で見ていた母は、涙を流さぬよう耐えながら、貧子の好きな食べ物を作ってあげようと思っていた。


 こうして貧子は、パッと見で本物、そして少しだけ切れるスーパー竹光を帯刀し。


『今日もバレませんよーに!!』


 と、ドキドキの高校生活を送っていたのだった。


つづく


☆次回予告



「なあ柄恵!お前はなんで、いつもパンツが黄色なんだ?おしっこ漏らしまくりなのか!?」

ひどい!刀子はいつも酷い事を言うピョンよ!そんな事がある訳ないピョンよ!!」

「わりい、わりい!で、何でパンツが黄色なんだ?」

「えっ!刀子、知らないピョンか?」

「えっ!ホントに知らないの刀子ちゃん!?」

「えっ!鞘乃に柄恵!!なんか理由があるのか!?」

「そうだよ!刀子ちゃん!!」

「そうなんだピョン!!」

「えっ!どんな理由があるんだ!?」

「知りたい?刀子ちゃん!?」

「知りたいピョンか?刀子!?」

「おっ、おう!早く教えろ!!」

「分かったピョン!」

「実はね、刀子ちゃん」

「毛の色と……




 同じなんだピョンよ!」


「ええっ!?なんだって?毛の色?なんだよソレ!?てかオレ、生えてねーぞ!!そしたら、ノーパンになってるハズだろ!?」

「「・・・」」

「いや、そこの毛じゃないよ刀子ちゃん?」

「髪の毛の色とパンツの色が同じなんだピョン!!」

「早く、ソレを言えよ!!恥ずかしいなあ///」

「恥ずかしいのはこっちだよ刀子ちゃん!」

「てか髪の毛の色だあ!?何言ってんだお前ら!てかオレたち、みんな同じ髪の色だろがっ!!」

「それは、刀子から見た世界だけの話ピョン!イロンナ都合があるんだピョンよ!刀子!!」

「なにっ!?」

「刀子ちゃん!黙っててね?それ以上はさぐってはいけない世界があるの!!」

「やっ、ヤバイ事なのか!?」

 真剣な顔で黙って、うなずく二人。そこに、伊達がやって来た。

「ボク、髪の毛が銀だから、下着は上下銀なんですよ!ありえないですよー!!」

「えっ!?」

「私は青の、おパンツだよ♪」

「えっ!佐々木は青なのか!?」

拙者せっしゃなんて還暦かんれきでも無いのに、赤いパンツでござる~!!」

「にっ、忍者!お前、苦労してんだなあ!!」

「そんな!みんななんて、凄くいいよぉおお!!私なんて私なんて……」プルプル

「鞘乃?泣いてるのか!?」

「私なんて、栗色のパンツなんだよ~!ブラも栗色~!!」

「う~ん!それは、それでアダルティなんだピョン!次回!!


 つまりは抜刀の仕方!?


 だピョン!!」

「私!ピンクのパンツを履きた~い!!」

「てか目の色も髪の色と、おんなじなんだピョン!!」

「だから毎日、オレのパンツは……




 黒ばっかりだったのか!?」


ただし!黒髪の貧子のパンツは、もらい物の寄せ集めなので「例外」である。



――また読んでね!

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