「刀なのになんで剣なの!?・③」

「「「積層?」」だピョン?」


 疑問の声をあげた刀子に柄恵、土偶の3人。


はがねを鉄ではさむことで丈夫にしたんだよね!」


 と、鞘乃が伊達と目を合わせて笑って言った。


「所で、鋼と鉄は何が違うんだ?」


 刀子が質問した。すると伊達が答えた。


「基本は同じです。純度100%の純鉄、つまりアイアンだけでは脆過もろすぎるので、そこに炭素を混ぜたのがいわゆる鉄や鋼の、スチールと呼ばれる物です。ちなみに鉄は炭素0.02未満、鋼は炭素0.02~2.14です」


「スゲー!わずかな差なんだな!?」


「そうです!でも、そのわずかな差が刀の鋭利さと、しなやかさを作り出しているのですよ。凄いですね」


「マジか!日本刀ヤベーな!!じゃあもしかして、鉄の鎧も切れるんじゃねーか!?」


 刀子の目が輝いた。すると鞘乃が言った。


「そう言えば、死んだひいお爺ちゃんが言ってたけど、戦時中、安い日本刀より、トラックの板バネを刀にした方が、丈夫で良く切れた!なんて言ってたよ。つまりは炭素量ですね!!鎧を切るには凄い技術が要りそうだけど!!」


「なんだよソレ!?」


 刀子がそう言うと、伊達が話し出した。


「それこそが日本刀の凄い所かも知れませんね!」


「どういう事だ伊達?」


るとるの違いです。字で書くとこうです!!」


「切ると斬る?」


「そうです、切るとは金属がただ鋭利状態であり、重さと丈夫さがあれば、大抵の物は切り砕きます。それが鉄のつるぎ、つまり西洋の剣です。だから、厚く重くなっていきました。一方、日本刀には鋼のやいばが鉄に挟まれており、この鋼のやいばが、ミクロのになっているのです」


「待て待て?ミクロの刃って?」


「日本刀の刃は、炭素の粒がノコギリのようになっているのです、いわゆるミクロのノコギリなのです。まあ、研ぎ方が影響しますけど。ノコギリの状態を寝刃ねたばを起こすと言うのですが、ミクロの刃になっている状態で切るのを「斬る」と言うのです。それは削り切り裂くような感じですね。そう、西洋の剣が骨を砕くなら、日本刀は骨まで斬る!ですね。鋼の刃を鉄で挟む!そして刃が反っている事で斬れ味も増した事で、西洋の剣より軽く、しかも良く切れるようになったのです」


 伊達が話終えると柄恵が言った。


「だから刀子ちゃん!和包丁って凄いんだよ!!」


「えっ?なんで包丁!?」


「日本刀の技術が元に作られてるから、切るじゃなくて、斬れるんだよ!!特に肉を斬る牛刀とかマグロ包丁なんて、もはや武器だよ!!」


「えっ?いまひとつ意味が分かんねーんだけど!?」


「つまりは、パン切り包丁が要らないんだよ!ちゃんと研いであれば、和包丁は斬れるから、パンが斬れるんだよ!!」


「おおっ!マジか!?和包丁、最強じゃんーか!!」


 刀子が関心していると、柄恵が言った。


「おお、伊達と鞘乃は凄いピョン!さすがは二大説明キャラだピョン!!」


「「・・・」」


 困った顔の鞘乃と伊達。すると刀子も納得して言った。


「そうなのか!やっぱ、日本刀マジ最強だな!!つまりはやいばの違いって事か!?」


「いや、刀子ちゃん!言わんといている事は分かるし、雰囲気は似てるけど、は包丁とか工具で、やいばは人を切る道具に使うかと思うよ」


「マジか~そうなのか!?知らんかった!!」


 刀子はしまった!という顔をした。さてさて話が終わった所で、伊達が改めて土偶に言った。


「話を戻しますが、土偶さん。確か七支刀は儀式用ですから、戦うと折れる危険がありますよ?」


「そっ、そうなの!?」


 土偶はかなり驚いていた。


「使う前で良かったね!折れたら、直すのに家が一軒は建つかもね!!」


 と、鞘乃。その時、柄恵が叫んだ。


「てか、思い出したんだピョン!七枝刀って、西暦252 年、神功皇后じんぐうこうごうの時代に百済が献上した物だピョン!」


「それがどうした柄恵?」


 刀子がたずねる。


「いいピョンか?その時代は、弥生やよい時代から古墳時代だピョン!!だから土偶じゃなくて、埴輪だピョン!!」


「意味が分からないぞ柄恵!?」


「埴輪は古墳時代の物!土偶は古墳や弥生の前!縄文時代の物だピョン!!」


「なっ、なんだと!?じゃあ、土偶は土偶じゃなくて、ホントは埴輪なのかっ!?土偶はオレたちをだましてたのか!?」


 柄恵の話に、良く分からない怒りの声を上げる刀子!


「えっとお、刀子ちゃん?土偶ちゃんのあだ名は、そういう意味じゃ」


「土偶なのに、埴輪時代の七枝刀は変だピョン!!」


「こらー!柄恵ちゃんまで訳の分からない事を言わないの!!だから土偶ちゃんのあだ名の理由は!!」


「あだ名がどうしたんだよ!鞘乃!?」


「そうだピョン!どういう理由ピョンか?」


 刀子と柄恵に迫られ、つい土偶のあだ名の説明をした。


「えっ!?だって、土偶ちゃんの顔……」


「顔が何だよ?」


 鞘乃の胸ぐらをつかむ刀子。


「どう見ても埴輪顔じゃないよ!土偶だよ!絵で描くならこう!!いつも笑ってる土偶!!」


(  ̄▽ ̄)


 そう言うと、鞘乃は黒板に土偶の顔を描いた。するとその絵に土偶がビックリして言った。


「えっ!鞘乃ちゃん?私、そんな顔なの!?」


 ビックリした土偶の顔は、こんな顔になった。


┌|∵|┘


「あっ!土偶が埴輪になったピョン!!」


「あっでも、すぐに土偶に戻ったぜ!そうか分かった!!




 目がポイントか!!」


 と、刀子が言うと土偶が、カチンッ!!と、なって怒って言った。


「私の目は……




 糸目いとめなの!!!(  ̄Д  ̄♯)」


◇◇◇


 1組にて大騒ぎのその頃、7組の貧子ひんこは日々、不安でドキドキした毎日を過ごしていた。


 そして、鞘乃たちの「日本刀じゃない!」の大きな声が、中庭をはさんだ7組にまで届いていて、貧子のドキドキは、最高潮に達していた。


 貧子は入学してから日々、不安で仕方なかった。貧子の家庭は母子家庭で、本当に母と娘だけの生活で親類からの援助も無く、苦しい生活を送っていた。なので、シャンプー代など節約をしようと、伸ばせば綺麗なロングストレートになる黒髪を、ベリーショートにしているほどだ。


 ちなみに貧子のベリーショートは、どんな感じかと言うと、映画ローマの休日に出てきた、オードリー・ヘップバーンと言えば良いだろう!そしてヘップバーンを引き合いにだすほど、貧子は美人だった。ちなみに髪は、節約の為、普通のハサミを使い自分で切っている。手先が器用なのだ。

 

 ヘップバーン似という事で、多くの男子生徒は貧子を見ると、シルバーグリーンの「べスパ」で二人乗りしたくなり、そして階段でジェラードが食べたくなった。ちなみにべスパのネーミングの元は、イタリア語の「スズメバチ」からで、エンジン音が蜂の羽音はおとに似ている事からだ。そうそう、貧子は隠れモテキャラでもあった。


 貧子は当初、高校への入学も諦めていて、中学卒業後は仕事をする予定だったが、母からの強い勧め、そして願いもあって、高校への進学をしたのだった。


 しかし、入学前の事――


「えっ!日本刀って、こんなに高いの!?」


 現在、高校の授業料は免除だが、教科書代や学生服の用意など、お金が必要となっていた。学生服は色々とツテを使い、何着かもらって用意しだが、お礼などをすれば全くのタダではなかった。そしてなにより高校からの入学に必要な一覧表には、本物の日本刀があり、近年に出来た帯刀令なので卒業生につてもなく、仕方なしに学校を通して、安く買おうかと思ったのだが……




 貧子が青ざめる、それなりの金額なのであった。


つづく

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