「オシャレは帯から!?・④」
昼になった。お昼ご飯を食べながら刀子は、また
「あれからさあ、他の奴の帯やベルトが気になって、色々と見てたんだが、刀の
入学当初はみんな、柄には普通の
「ピンクとか黄色とか、みんなオシャレしてたんだな!」
今更ながらに言う刀子に、今更ながら呆れて鞘乃は言った。
「そっ、そうだね!そういうのって、すぐに真似て流行るからね」
「そういえば、テニス部やバトミントン部の女子は、グリップテープを巻いてたピョン!」
柄恵も言うと刀子も食いついて来た。
「なんかカラフルなテープを巻いてる奴がいるなあと思ってたが、あれはグリップテープって言うのか!!」
そして刀子は、ちょっとやってみようかな!?という顔をしていた。すると鞘乃が言った。
「そうそう!刀子ちゃん、百円ショップに売ってる滑り止めの網ゴム!あれを巻いてる人もいたよ」
「あの、カーペットの滑り止めピョンか?」
百円ショップで見た事がある柄恵が、鞘乃に聞いた。
「そうソレ!うちでは玄関マットの下に使ってるよ」
「でも、どうやって巻いてるんだピョン!?」
「聞いたら、両面テープを先に巻いてから付けたって言ってたよ!その人は握る力が弱いし、手汗が凄いから、滑り止めの網ゴム最強って言ってたなあ」
「なるほどだピョン!女の子は握力ないピョンから!!」
納得の柄恵。
「あと
刀子が興奮して言った。
「どんなの?」
鞘乃が聞くと、身ぶり手振りで刀子は語る。
「例えば、△□(さんかくしかく)とか、卍(まんじ)とかいるだろ?それだってスゲーと思うんだけど、それらが、なんかが普通に見えてくるのあったぜ!」
「だから、どんなんだピョン!!ラメデコとか!?」
「トゲだよ!」
「トゲ!?トゲって……あのトゲの事かピョン?」
今一つ想像出来ない柄恵が首をかしげた。
「鍔全体が、☆(ほし)みたいにトゲが出てて、いや、ハリセンボンの背中みたいって言った方がいいか?」
「そんなのがあったんだ!!」
「そうなんだよ鞘乃!でもって、鞘がまたトゲだらけでさあ」
「ソレって自分に刺さらないの!?」
鞘乃が目を丸くして言った。
「ああ、オレも思った。きっとあれメチャクチャ痛いぜ!!」
「まあ、オシャレの基本は、我慢て言うからね!!」
そういう鞘乃の隣で、柄恵はニヤニヤしながら自分の腰から刀を抜くと、刀子に鞘を指差し自慢気に見せた。
「さあて見るだピョン!このシール可愛いだピョン!?」
刀子が見ると、柄恵の鞘にはウサギのシールが貼られていた。
「おー!シールを貼るの、オシャレで可愛いな!!まあ、ウサギのシールなんてのはどうでもいいが」
「どうでもいいは余計だピョン!!」
「まあ、シールだと簡単だし失敗しても直ぐに直せそうだ!!」
刀子はそう言いながら、興味津々で柄恵の鞘のシールを見ていたのだった。
◇◇◇
そして次の日。
「オレの鞘を見てくれ!」
刀子は自慢気にみんなに刀を見せた。黒い鞘の真ん中にシールが貼ってあった。
「あははは」
呆れる鞘乃。
「まあ、刀子らしいピョン」
鞘乃と柄恵の反応は鈍かった。刀子の鞘の真ん中にあったシール。それはドクロだった。
「ねえ!私の鞘も見て。鞘の色を変えてみたの!!なんか色を変えるだけで、凄くる楽しいよ!」
鞘乃は自分の鞘を見せた。
「スゲー!ピンクだ!!」
「オシャレな鞘ピョン!柄の巻き紐もピンクで合ってるピョン!!」
刀子と柄恵の反応は良好だ。
「でも、色を塗るのが大変だろ?」
「鞘に
「何っ!?簡単じゃねーか!!」
それを見た刀子の頭の中では、自分の鞘の色をどうしようかと考えを巡らしていた。
◇◇◇
また次の日。
「見るピョン!全体的にウサギっぽくしたピョン!!」
柄恵の鞘は、真っ白なフワフワのファーに覆われていた。そして鍔も白、柄の地も白で、白い柄糸が巻かれていた。
「うおー!柄恵、マジでスゲーな!白がまぶしーぜ!!」
刀子が叫んだ。
「ソレいいですね!実際に、そういうのがありますよ」
柄恵の刀を見た伊達が言った。
「えっ?どういうことだピョン?」
「馬を驚かせない為に、鞘に
「えっ!実用的なのがあるピョンか!?」
「
「すごーい!凄いピョン!!」
柄恵はメチャクチャ嬉しそうだ。
「ちなみに、尻毛鞘と呼ばれるものは平安時代後期から登場し、一番多く使われたのは南北朝時代です。毛皮を袋筒状に縫い合わせたものを鞘に被せて革紐や組紐で結びつけて使いました。そしてただ袋状に作るだけではなく、被せた時に鞘尻に向かって大きく広がるような形にして、太刀の印象を強くを見せるように作られました。江戸時代に作られ物など、鞘尻を跳ね上げた形が特徴ですよ。そうそう余談ですが、打刀で馬に乗る時は太刀と同じく刃を下にして指す事を、
「そうなんだ!伊達は物知りなんだピョン!!」
とにかく誉められた気がしている柄恵はご機嫌だ。
「てか、そう言うのってどこで買うんだ?」
刀子が聞いた。
「雑誌の特集ページとか、雑誌裏の広告でしょ。あとはコンビニに行けば、それ専門の特集雑誌があるよ!」
と、鞘乃が答えた。
「あと、スマホで”刀の装飾”で、検索すれば、たくさん出るピョン!そしたらネット注文だピョン!!」
と、柄恵。
「お前ら、良く知ってんなあ!!」
刀子は鞘乃と柄恵に関心しきりだ。
「刀子ちゃん!だぶん、みんな知ってると思うよ」
「刀子以外は知ってるピョン!」
鞘乃と柄恵は、ただただ刀子に呆れるだけだった。
◇◇◇
それから数日後。
「みんな見てくれ!!」
嬉しそうに自分の日本刀を見せる刀子。
「でっ、
目が点になる柄恵。
「刀子ちゃん!それはさすがに悪趣味だと思うよ!!」
鞘乃は困った顔だった。刀子の持って来た日本刀!それはまさに
「とにかく
「
「そうだピョン!その鞘に巻きつく蛇が」
「悪趣味だよー!!」
鞘乃と柄恵に、せっかくオシャレにした刀を否定され、凹む刀子!!
「さらに、言わせてもらうとね刀子ちゃん?」
オクターブ低くなる鞘乃の声。
「はっはい、なんでしょうか?」
思わず丁寧語になる刀子。
「その
「えっ?本当の”毛髪”を手に入れて編んだんだけど?」
「「えっ!?」だピョン!」
長い人毛を三つ編みにして作った帯。そこに差された
そして抜刀の授業では、刀子の刀を見た五里田が叫んでいた。
「なっ、何なんだ?その刀はっ!?」
その後、鞘への過剰な装飾は学校で禁止となったのだった。
つづく
☆次回予告
「ねえねえ刀子ちゃん?刀子ちゃんは普段、どんな服を来てるの?」
「オレか?オレはミリタリーかな?」
「みっミリタリー?ふっ、普通の服は着ないの?」
「普通の服?あっ、
「いや、私は普通の平服でいいよ」
「私の服も聞いて欲しいピョン!」
「柄恵は何を着てるんだ?」
「白を基調とした服ピョン!」
「ほう!白かあ。お前はツナギとか似合いそうだな!!」
「そう!まさにツナギピョン!ウサギのツナギだピョン!頭からかぶれるやつピョン!ウサギへの愛が溢れてるピョン!!」
「柄恵ちゃんソレって、着ぐるみなんじゃ?」
「着ぐるみ違うピョン!ソレが私の普段着ピョン!!」
「じゃあ柄恵は、雪迷彩になるな!!」
「ウサギのツナギは雪迷彩じゃないピョン。次回!
刀なのになんで剣なの!?
だピョン!!」
「つーか、ウサギの着ぐるみ着てる時、頭かぶってんだろ?そん時、ツインテどーすんだ?邪魔だろ柄恵!?」
「そんなの決まってるピョン!髪はおろして、ただの黄色のロングストレートだピョン!!」
「つっ!
つまんねー!!」
――また読んでね!
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