「刀なのになんで剣なの!?・①」

「で、あるからして天下五剣てんかごけんとは」


 お爺ちゃん先生が、少し曲がった腰に手をやり、教科書を持ちながら日本史の授業を行っていた。


 この、お爺ちゃん先生は天辺ハゲにサイド白髪ロン毛!でもって、目が見えてんのか!?っていう長くフサフサな、これまた白髪と同じ白い眉毛!!そして、長く立派な口ヒゲで、チョークで背広が汚れないように白衣を着ていた。で、その雰囲気から、みんなにガリレオ爺ちゃん先生と呼ばれていた。


 教室の時計は、あと少しで休み時間だった。


「すなわち、天下に知られた名刀として、童子切安綱どうじきりやすつな、鬼丸国綱おにまるくにつな三日月宗近みかづきむねちか


――キンコーンカンコーン


大典太光世おおでんたみつよ数珠丸恒次じゅずまるつねつぐの五振りが……おっと、もう鐘が鳴ってしまったなあ、もう授業はしまいかー!もうちっと話たかったなー」


 そう、ガリレオ爺ちゃん先生は言うと、持っていた教科書を閉じた。


「はい、せんせー!」


 その時、一人の女子生徒が手を挙げた。


「何かな?」


 ガリレオ爺ちゃん先生は、まだ話せると思って、とても嬉しそうだ。


「日本刀はかたななのに、なんでけんなんだ?」


 すると隣に座っていた、もう一人の女子生徒が不満をもらした。


「ちょっと刀子ちゃん!何で質問してるのよー!」


「だって気になるじゃん!刀なのに剣なんだぜ?気になんないのか?鞘乃は!?」


「ちょっと刀子ちゃんってば!そういうことじゃなくて!!」


 そこに柄恵が入って来た。


「そう言えば刀なのに剣道って言うのも凄く変だピョン?だったら刀道とうどうにすれば良いピョン!!」


「柄恵ちゃんも!!」


「だよな柄恵!刀なのに剣道?ますます訳ワカメだよな!!」


 刀子に続き、柄恵も言ったので鞘乃は慌てていた。どうやら、二人とも鞘乃の制止の意味が分かってないようだった。


「アワワワ、柄恵ちゃんも!!もう、とにかく黙ってよおおおお!」


 とその時、刀子がとどめの一言を放った。


「あっ!でも、とうどうは言いにくいな!空手道からてどうみたいに、刀の道で刀道かたなどうだな!!」


 それを聞いたガリレオ爺ちゃん先生が。


―――ニヤッ


 と、笑みを浮かべた。それに気づいた鞘美が言った。


「あー!もう私、知らないからー!!」


 そして、ガリレオ爺ちゃん先生は口を開いた。


「刀子くん!柄恵くん!君たちは素晴らしいね。良く気づいたね」


「それほどでも、せんせー!な、柄恵!エヘヘヘ」


「そんな事ないピョン!ね、刀子!ウフフフ」


 ガリレオ爺ちゃん先生に誉められたと思った、刀子と柄恵は目を合わせて喜んでいた。すると、ガリレオ爺ちゃん先生は言った。


「では!特別に休み時間も使って、剣と刀のつながりを話そうではないか!!」


「「えっ!?」」


 刀子と柄恵は、目を合わせて驚いた!


「えっとおー!やっぱあとで、いいかな?なあ柄恵?」


「うん!私もあとででいいピョン!!」


 慌てる二人に対し、ガリレオ爺ちゃん先生は閉じた教科書を開きだし言った。


「まあまあ、そうは言わず」


 ガリレオ爺ちゃん先生の言葉に、鞘乃は刀子と柄恵だけに聞こえるよう口を開いた。


「あーあ!」 


 鞘美の、小さなタメ息が刀子と柄恵の耳に響く。さてさて本当に、ガリレオ爺ちゃん先生の説明が始まってしまった!


「えー!元はといえば、両方にの付いた剣が先にあり、その後に片方だけ刃のついた刀となり、やがて曲がって今の日本刀の形になってだな……」


 休み時間なのだが、ガリレオ爺ちゃん先生の講義は続いていく。


―――ジロリ!


 鞘乃は刀子と柄恵を、にらんで小さな声で言った。


「だから言ったのにー!!」


「「あははは!!!」」


 乾いた笑い顔を浮かべる刀子と柄恵は、鞘乃の制止の意味を、やっと理解したのだった。


◇◇◇


「ったく!ガリレオ爺ちゃん先生のおかげでひどい目にあっちまったぜ!!」


 次の休み時間。刀子は机の上に両足をドカッと乗せ、椅子を倒し背伸びをしながら、頭の後ろで手を組んで悪態をついていた。


「刀子ちゃん!?貴方は露出狂なの!?」


「えっ!?そんなにパンツ見えるか?てか、オレのパンツ見て喜ぶ奴いんのか!?」


 刀子のスカートからは、ガーターベルトさえ見え、そのガーターベルトから伸びた紐とストッキングをつなぐハング(留め具)など、まさにガーターストッキングとしての構造が丸見えであった。もちろん、黒パンツも見えていて、前クロッチ(ライン)はおろか、後ろクロッチ(ライン)も、あと少しで見えそうになっていた。


「もう!刀子ちゃん、そんな事言って~!!黙ってれば超絶美少女なんだよ?写真に撮られてネットで拡散されても知らないからね!!」


「でも、そんな事したら、例のAIって奴がすぐに見つけて処分なんだろ?じゃあ今、見ている奴には、サービスサービス♪っと」


 刀子がそう言うと、半袖Yシャツの男子生徒が、パッと刀子を見た。


「うぐぐっ!」


 珍しく刀子にまともな事を言われ、言い返せない鞘乃は、悔しさに歯を食い縛った!!そうなのだ!帯刀令に伴い、身体再生機の導入、そして記憶センターの配備、監視カメラの充実、何より人間よりも早く正しくチェック出来るAIのおかげで、簡単に素早く犯罪も取り締まれるようになったのだ。


「刀子ちゃんに言い返されるとは!!」


「へへへへ!」


 悔しさでにらむ鞘乃と、それを嘲笑あざわらう刀子!


「てか、あの、ガリレオ爺ちゃん先生の授業で言ってた剣って奴は、どこで見られるピョンね?」


 柄恵が話を変えようと言った。


「剣?ああ、博物館とか行けば見れるんじゃね?」


「でもきっと、凄く貴重な物だから、飾ってあるのはレプリカばかりかもね?」


 と、刀子と鞘乃が機嫌を治したみたいなので柄恵も安心して言った。


「一回は、本物を見てみたい気もするピョンね!!」


 その時だった。


「私、持って来てるよ!!」


「「「えっ!?」」だピョン!?」


 持って来てるの声に、3人は振り向いた。そこには、あだ名が土偶どぐうの女の子がいた。ちなみに土偶は、普通おっぱい(定義は、「ホントの斬り合い!?・後編」を参照)に黄土色の髪、そして髪型は鏡餅風の二段お団子で、そしてレッグウェアは黄土色の「ショートソックス」だった。


つづく


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