「オシャレは帯から!?・③」
「ここのセーラー服のスカートは、まさに正統派!車ヒダなんだピョンよ!!」
「・・・」
力説の柄恵に目が点になる伊達。あまりのマニアックな話に、可憐少女の右目の眼帯が、やっぱりズレていた。
そうそう、ヒダについて説明が必要だろう。まずは柄恵が正統派!と主張している車ヒダから。一方向にヒダが重ね折られ、一周回ると元に戻る形のヒダを、車ヒダと言う。
一般的に車ヒダとは体を上から見たとき、折りの辺が反時計周り(左回り)になるようになっている。ではなぜ、この向きなのかというと、スカートのファスナーが、左側が多いからである。その慣習から、ファスナーがヒダに隠れるよう、反時計回りなり、なのでポケットもスカートの構造上、右にポケットを作ると右のポケットがヒダのせいで逆向きになり手が入れにくくなるので、ポケットも左なのだ。
なので、車ヒダではポケットは左ポケット1つとなる。ヒダの数は地域によってだが、全体的には24本が主流だろう。ちなみに商品表記で例えると「車ヒダ24本」となる。
次に箱ヒダだが、ボックスプリーツとも呼ばれ、車ヒダと違うのは、片側だけの折り重なりではなく、両側にヒダがあり、1つのヒダのかたまりが箱型になっているので箱ヒダと言う。箱ヒダには色んな箱の枚数があり、その枚数によって、スカートの見た目が全く変わっていくのが面白い。商品表記では「箱ヒダ○本」となる。
最後に前箱ヒダ。車ヒダと一見似ているのだが、一番前が箱ヒダになっており、そこから左右に分かれて車ヒダになっている。前の部分が箱ヒダになっている事から、前箱ヒダと呼ばれる。後ろは、折れ回ってきたヒダが、箱ヒダの凸状態か、もしくは凹状態で終わっているが、主流は凹状態だ。(こちらの方が見た目が美しいとされている)箱前ヒダも24本が主流で、商品表記では「前箱ヒダ24本」となる。
ちなみに前箱24本と箱ヒダ○本の場合、車ヒダ24本と違って、ヒダの向きが左右同じになるので右にもポケットが作れる事から右ポケットが多い。これは利き手が右が多いからだ。
さて、本編に話を戻そう。
「もっと世の中を良く見るピョン!!世界にはスカートがこんなにも
「はあ!?」
驚きと困惑の伊達。それでも、とりあえず話を続けようと、伊達は柄恵に言った。
「そっ、そうなのですか!ボクはあまりスカートには興味ないので、気にはしなかったですが」
「だから!ここのセーラー服は、格的、セーラー服と機関銃なんだピョン!!」
「せっ、セーラー服と、きっ、機関銃?機関銃って、バンバンするやつですか?」
機関銃と聞いて、さらに頭がグルグルする伊達!!
「そうだピョン!そして、機関銃は“M3グリースガン”と決めてるピョン!!」
「えっ?エムなんですか?というか機関銃を持ちたいとはどういう事ですか!?セーラー服と日本刀ではダメなのですか!?では、それでは!この作品の作者に失礼ではありませんか!?」
柄恵の、あまりの頭グルグル発言に、伊達は思わずメタってしまった。
「この作品?作者ってなんだピョン!?」
「もう!分かっているではありませんか!!」
伊達に言われて、目を泳がせる柄恵。なので伊達は仕方なく、話を機関銃に戻して続けた。
「というか、その機関銃が、セーラー服とどんな関係があるのですか!?」
「それが、あるんだピョン!」
「ええっ!?」
伊達の驚きに、とうとう柄恵はこの話の核心を言ったのだった。
「私たちは成れるピョンよ!」
「いったい何にですか!?」
「私たちは、
「ナンデスカソレハー!?」
柄恵の妄想的思考に、もはや疲れた伊達は、事務的に答えた。
「ちなみに私は元祖、薬師丸がいいピョン!!だから、3年生になっての誕生日が楽しみなんだピョン!!夏服に黒シルクバータイのリボン結び!映画と同じ服装だピョン!!そして、本物の機関銃を持って、本当の”セーラー服と機関銃”になるピョンよ!!!」
「それって、もしかして?」
「薬師丸は絶対に代われないピョンよ!!」
「ボクは、そんなのどうだっていいです!」
やや怒り気味の伊達。可憐な少女の眉間にシワが寄る。
「良かったピョン!じゃあ伊達、あんた橋本だピョン!そうそう、冬服の紺がいい理由は、2年になるとバータイが白になるから!と、冬服にはバータイ留めがあるピョン!だから、冬服版セーラー服と機関銃が出来るピョンよーーー!!」
「そういうことじゃなくて!正統派の話です!!」
「ふえっ?」
柄恵は気の抜けた返事をした。すると伊達は、もはや怒って柄恵に言った。
「ちょっと!何が正統派セーラー服ですか!それでは、セーラー服が良いのではなくて、ただコスプレしたいだけではないですか!!」
と、あの可憐な伊達が叫んでいた。だが柄恵は、伊達のコスプレの一言にカチン!と来て、ついに本音を言ったのだった。
「そうだピョンよ!私は"セーラー服と機関銃"な世界に物凄く憧れて、この高校を選んだんだピョン!!」
「あっ!開き直りましたね!?」
柄恵の態度に呆れ返る伊達。
「もう、開き直るピョン!そういう正統派だピョン!!」
「もう、あなたって人はそれだけで、この高校を選んだのですか?遠いのに!?」
本気で心配する伊達。柄恵は結構、遠くからセーラー高校に通っているのだった。
「いや、それについては色々と事情が、ゴニョゴニョ……」
と、急に冷静になる柄恵。
「何ですか、事情って!?」
事情に突っ込む伊達。
「ソレはおいといて、そうだピョンよ!あとは機関銃を持てれば、言うこと無しなんだピョン!!あー!早く18歳になって機関銃を持ちたいピョン!そしたら、リアル"セーラー服と機関銃"になるピョンよ!!」
「もうー!何が言う無しなのですか!?何がリアル"セーラー服と機関銃"ですか!?もうー!!……ハァー」
柄恵の誤魔化す様子に、これ以上は聞いても時間の無駄遣いと思った伊達は、大きくタメ息を吐いた。
「あっ!いや、あったピョン。ごめんピョン」
「何がですか?」
ジト目の伊達。可憐少女のそれは、それでそそるものがある!
「言うことピョン!」
「何を言うのですか?」
「言ってもいいピョンか?」
もったいつける柄恵に、若干、イライラする伊達。可憐な伊達のイライラ顔も、いいもんだ!!
「ここまで言ったのですから言って下さい!」
「じゃあ、言うピョンよ?」
「だから早く言って下さい!」
「待って!今、日本刀を構えるピョン!!」
「なんで構える必要があるのですか!?」
「その方が、気分が盛り上がるピョンよ!!」
「じゃあ、もう早く構えて、早く言ってー!!!」
日本刀を抜くと、両手で右に持ち上げ、構えた柄恵は大きく息を吸うと一言、目いっぱい
「カ・イ・カ・ン」
「・・・」
意味が分からず、ただただ困惑する伊達。
「イマノナンデスカー!?」
と、柄恵に聞くが、柄恵は何かを思い出し言った。
「そうだったピョン!」
「まだ、何かあるのですか!?」
ホトホト、呆れる伊達。眉毛が完璧!八の字だ。
「このセーラー服を選んだ理由がまだあったピョン!」
「いったい何ですか!?あー!もう、ここまで来たからには、最後まで付き合いますよ!!」
伊達は覚悟を決めたようだ。
「セーラー服のチャックが、横開きだったからピョン!!」
拳を握りしめ、力をこめて柄恵は言っていた。それを見た伊達は、まさか、セーラー服の構造でこんなに話す事になるとは思わなかったが、このままでは、なんかとても悔しいので、最後に自分の好みを言ってみた。
「ぼっ、ボクの好みは……
前あきでーーーす!!」
するとその、前あきという言葉を聞いた柄恵は、キリッ!として言った。
「やっぱ伊達は、橋本だピョン!!」
「だから、誰ですかソレ~!?」
その時、柄恵と伊達の会話に、通りかかった鞘乃が入った。
「ちょっと柄恵ちゃん?」
「鞘乃か!なんの用だピョン?」
柄恵に対して、少し間をあけてから鞘乃はこう言った。
「薬師丸なのに、その髪型って?」
「そっ!それは譲れないピョン!この髪型は、私のウサギへの愛だピョン!!」
「そう、じゃあ仕方ないけど、まだ役者が居るわよ?」
「居るって、誰がいるピョンか?」
ニヤニヤして聞く柄恵。
「長澤まさみに……
原田
鞘乃の言葉に、口あんぐりでポカーン!の伊達の眼帯がズレ落ちた!!その反対に柄恵は――
ニマーー!
と、とっても嬉しそうに笑みを浮かべていたのだった。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます