「女子高生帯刀令!?・④」
刀子はテレビで見たシーンを思い出していた。テレビでは女性総理大臣がこう言っていた。
『え~、健全な女子の育成をはかるとともに、周囲の脅威から自らの力をもって対抗出来るようにするため、満16歳から日本刀の常時の帯刀を命ずる政令。女子高生帯刀法を発令し、法律による義務化!を行う
思い出しながら、刀子は頭をかいていた。
「あー!映像は浮かぶんだけど、肝心の名前を度忘れしちまったよ!!」
度忘れしたと何度も刀子が言うので、なんかアホらしくなった鞘乃が答えを言い出した。
「もう仕方ないなあ!初代女性総理大臣の名前は……」
「アレだろ?アレ?」
なんとか誤魔化そうとする刀子!
「アレじゃないよ!!絶対、分かってないでしょ、刀子ちゃん!?」
「いや、分かってるって!!」
「もういいよ!言っちゃうから!女性総理大臣の名前は……
鞘乃が答えを言うと、パーっと刀子の顔が明るくなった。
「あ~そうそう!方菜総理大臣だ。やっと思い出した!あ~スッキリした!!!」
「思い出したって、私が言ったんでしょう?もう、ホントに~!!」
ふくれっつらの鞘乃に対して刀子は、とっても晴れ晴れとした顔をしたので、鞘乃はジト目で、刀子の顔をのぞきこんでいた。すると刀子は誤魔化すように、また話を変えた。
「あははは!でも、常時の帯刀って、マジで大変だよな!いつでもだぜ!い・つ・で・も!!」
刀子はとにかく誤魔化のに懸命だった。なので鞘乃はそれ以上、愚かな刀子に言うのをやめた。
「そうだね常時の帯刀って大変だよね」
「だろ!!」
やった!とばかりに目を見開く刀子。
「でもね、身を守るためだもん!仕方ないよ」
「てか、お風呂の時も持ってなきゃダメなんて、大変すぎるだろ!!あとで
刀子は眉間にシワを寄せながら鞘乃に言った。すると鞘乃は柄恵の胴体から急に離れた。
「うわっと!急に手を離すなよ!!」
柄恵の胴体を倒さぬよう、慌てて体勢を立て直そうとする刀子。
「ぐおー!重い!」
その刀子の前に鞘乃は、まわり込むと足を止め向き合い、両手で自分の学生カバンの取っ手を、ギュッと力をこめて握りながら言った。左右のお下げ髪の先っぽがピョコンと跳ねた。
「それがあったんだよ!!」
「えっ!?」
刀子は立て直すのに必死で、なんのこっちゃと思った。
「それがあったの!!!」
急に柄恵の体から鞘乃が離れたものだから、刀子は柄恵の体を一人で抱えなければならず、歯を食いしばりながら、プルプルと体を震わせ踏ん張っていた。
「なっ、なんでもいいから早く担げ!!」
「ごっ、ごめん刀子ちゃん!」
気づいた鞘乃は大慌てで、柄恵の胴体を持ち上げた。
「ふー!!メチャクチャ重かった。なんで死んだ体ってこんなに重いんだあ!?」
「本当にごめん!」
鞘乃も柄恵の胴体を担いだ所で、ホッとして刀子はさっきの話を思い出し、鞘乃に聞いた。
「で、あったって何?何があったんだ!?」
「私の家は一軒家で、お風呂が一階の裏手にあるんだけど」
「ってことは、まさか!?」
「それで窓の鍵がかかってなくて、いつの間にか、コッソリと開けられてて……
その時、のぞかれたの」
その言葉に、今度は刀子が柄恵の胴体から離れた。
「おっ!重いよ刀子ちゃーん!!」
刀子は鞘乃の肩に片手を置き、前後に激しく揺さぶりながら言った。
「なんだと鞘乃ー!!」
「重い!そして、揺すらないで!!」
鞘乃の丸眼鏡がズレた。
「あっ!ワリー!ごめんごめんご~」
刀子は揺するのをやめた。
「で、大丈夫だったのか!?」
物凄く心配した顔で刀子は鞘乃に聞いた。
「えっと……なっ、何かスースーするなって思って」
それは数日前の事だった。
「フフン、フフーン♪」
浴室の中には、眼鏡を外し、お下げの三つ編みをほどいた鞘乃が、楽しそうに鼻唄を歌いながら体を洗っていた。そして、洗い流したあとだった。
「あれ?換気扇つけたままだっけ?」
その時、風の流れを感じた鞘乃は、風の来る方向を向いた。それは窓の方向だった。
「それで、後ろ向いたらオジサンの目だけが見えて。てか、重いよー!刀子ちゃん、早く持ってー!!」
と、眼鏡がずれたまま鞘乃は言った。重いと言いながらも、刀子と違って意外とタフな鞘乃に『チビのクセに!』と刀子は思っていたが、言うとマジで殺されるかも知れないので、グッと我慢した。
「てか、オッサンがずっと鞘乃の裸を?てか、そっ、その!?」
―――ゴクリッ
刀子は唾を飲みこんだ!そっ、その!?の後に『鞘乃のデカぱい!プルンプルンを見たのか!?』と、言おうと思ったが、それこそ鞘乃に灰にされかねない!と思って、刀子は心の中で
「だからすぐに、浴槽に立てかけてた日本刀を抜いて退治したんだよ!」
「マジか!鞘乃~!?」
「もう、ビックリだったよ!!そのあと、お母さんが大慌ての大パニックになったり、家にすぐに警察が来てとか、色々と大変だったんだよ!!」
「マジか!ところで風呂の窓の外には、普通は柵があるだろ?」
「あるよ!うちのお風呂の窓にもあった!!」
「どうやって外のオッサンを退治したんだ?」
刀子は素朴な疑問を口にした。
「うーんとね!今にして思えば刀で柵ごしに、刺しちゃえば良かったんだけど、慌てて鞘から抜いたら、横からの抜刀になっちゃって!で、そのまま切り付けたら、そしたら柵ごとオジサン切っちゃったの!!」
「えっ!マジか?」
刀子の目が驚きで丸くなった。
「うんホントだよ!!」
鞘乃はニコニコして答えた。
「そっかあ!やっぱ、日本刀ってスゲーな!!金属の柵を切っちゃうのか!!!」
刀子は、日本刀が「柵」を切った事に、文字通り目を丸くし驚いていた。するとそれに呆れた鞘乃が淡々と指摘したのだった。
「日本刀スゲー!って刀子ちゃん、驚くのソコじゃないから!!てか、ホントに柄恵ちゃんの胴体、重いから早く持って!!!」
「あっ!ごめんごめんご~!!」
すると刀子は、慌てて柄恵の胴体を持ち上げた。
「あー!クッソ、重てーな!人間の体は!!」
と、再び叫ぶ刀子。すかさず、鞘乃は言葉使いを注意した!
「刀子ちゃん!だからホント……
言葉使いが悪いんだってぇえええ!!」
なんか、ゴーーー!と、鞘乃から地獄の火炎のような音が聞こえた気がした刀子は、マジですぐに謝った。
「ごっ!ごめんごめんご~!!」
謝りながら超絶美少女の刀子は、地味目の鞘乃と共に、首の無い体と肩を組み引きずりながら、高校に向かって歩き出したのだった。
つづく
☆次回予告
「もう!刀子ちゃんて何でそんなに口が悪いの!?」
「そうだピョン!黙っていれば絶世の美女と言っても過言でないピョン!!」
「そうだよ!良くスカウトされてるよね?刀子ちゃんて!」
「うるせーな!オレは、このまでいいんだよ!てか、スカウトはマジでウゼーから、みんな斬り倒してるよ!!この間はあまりにもシツコイから事務所まで行って、皆殺しにしてやったぜ!!」
「「・・・」」
「だっ、だから最近、刀子ちゃんの周りでスカウトを見なくなったんだ!!」
「これで静かに暮らせるぜ!!」
「次回!
ホントの斬り合い!?
だピョン!!」
――また読んでね!
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