「女子高生帯刀令!?・③」

―――ドバッ!!


 刀子の刀を受け、首の無くなった柄恵の胴体は、刀子に左手を伸ばしたまま、激しく血を吹き出していた。そして、吹き出した柄恵の血は返り血となり――


ビチャビチャッ


 刀子を頭から血まみれにした。


「クッソ!朝から勘弁してくれよー!!頭から血をかぶっちまったぜ!!」


 刀子はそう言うと、日本刀を持ってない左腕で、血に濡れた顔をぬぐった。それから体と共に、返り血を浴びてしまった日本刀をブンッと振り、血を吹き飛ばした。


 そのあと、スカートの左ポケットからティッシュを出すと、刀についた血をき取りまた、たどたどしい手つきで、左腰の鞘に納刀のうとうした。


「刀子ちゃん、タオル持ってる?」


 と、優しい声をかける鞘乃。


「ない」


 淡々と答える刀子。


「やっぱり!じゃあ貸してあげる」


 鞘乃はまた優しく言うと、自分の学生カバンからタオルを出し、刀子に手渡した。人が行き交う通学路に、頭と体を切断された女子高生の体が転がる中、タオルで自分の顔や腕などについた血を、さっさとぬぐう刀子。


「クッソー!生ぬるくて気持ちわりー!!」


 すると、髪についた血がしたたってくるのに刀子は気づいた。


「てか、早く髪を洗いてー!血が乾いたら髪がカピカピになっちまうよ!!」


 そして、改めてタオルで頭をガシガシと拭いたので耳が隠れてしまった。刀子は適当に拭き終えると、耳に髪がかかるのが気になるのか、すぐに髪をかきあげ耳を出していた。


「タオル、洗って返す!」


「いいよ、そのままで!!」


 そんな血まみれの超絶美少女に、グッと来て立ち止まる者もいたが、ほとんどの通行人が皆、血まみれの少女と切断され転がる体を、チラッと見る程度で目も止めず、誰も気に止める事なく歩き去っていた。 

 

「まあ、そんな顔をすんな」


 道に転がる、そんな表情の柄恵の頭部を見て刀子が嫌そうに言った。


「まだ、意識あるみたいだね!」


 鞘乃は柄恵の生首を見ながら言った。柄恵の顔は、非常に悔しそうな表情をしていた。でもすぐに、その目は宙をさまよったかと思うと色を失っていった。


 やがて顔や手を拭き終えた刀子が、切断され横たわった柄恵の頭部を見ると、首からジワジワとあふれれ出していた血が、アスファルトに染みを作っていた。


「やっと、死んだか!!」


 柄恵が息絶えたのを確認する刀子。


「もう!刀子ちゃん、もっとほかの言い方は無いのおおお!!」

 

 鞘乃に文句を言われつつ刀子は右手で、柄恵の生首のツインテールの両房りょうふさをつかんで、クルリと右手に髪を巻くと持ち上げた。


「あー!もう、持ってくの面倒臭めんどくせーな!!」


 それからその手で学生カバンをつかむと、一緒に持った。


「いちいち文句を言わないの!刀子ちゃん!!」


 刀子の右手の生首からは、血がまだまだポタポタと、したたり落ちていた。


「さて、鞘乃!柄恵の胴体も学校に持っていくから手伝ってくれ!!」


 刀子は文句たれな雰囲気を変えて、鞘乃に明るく言った。


「えー!!」


 本当に面倒臭そうに言う鞘乃。そうは言いつつも、そうは言ってられない状況を、鞘乃は分かっていたから刀子に一言、嫌味を言う事にした。


「でも、まあいいけど、ひと言、刀子に言わせてもらっていい?」


「なんだよ?」


「首を跳ねなくても良かったんじゃない?」


「わっ、分かってるよ!」


 物凄く顔を赤らめる刀子!図星を言われ凄く戸惑っていた。


「でも、反射的に跳ねちまったから、仕方ないだろ!!」


 そして、逆ギレ!!の刀子。そんな刀子を見て鞘乃はいつもの事と思って、諦めた表情をして言った。


「もう!仕方ないなあ~!!」


 それから刀子と鞘乃の二人はいったんしゃがむと、柄恵の首無し胴体の両腕を持ち、自分らの肩にかけた。


「せーので持ち上げるぞ!」


「分かった刀子ちゃん」


「せーの!」


 二人は柄恵の胴体と肩を組んで持ち上げた。


「よし!運ぶぞ!!」


「うん」


 そして、二人は高校にむかって、柄恵の胴体を引きずりながら歩きだした。その様子を他の通行人は、柄恵の首や胴体が道に転がっていた時と同じく皆、チラッと見る程度で、誰も気には止めず歩き去っていた。


「クッソ!重いぜ」


 刀子は悪態をついた。なのでその悪態に対して、鞘乃は違う言い方で注意をした。


「だから、首を跳ねないで腕を切り落とせば良かったのに!!」


「分かってるよ!」


 その言葉に鞘乃は刀子に対して、お前は愚かだ!!という感情たっぷりに、文句を言った。


「そしたら、柄恵ちゃん本人が自分で歩けるから良かったのに!!」


 だから、刀子はキレるしかなかった。 


「だから、勢いで跳ねちまったんだよ!!」


「じゃあ、重いだなんだって文句言わないの!」


 お前は愚かだ!!大馬鹿だ!!の、オーラを崩さない鞘乃。刀子も負けじと言い返した。


「だってクッソ重いんだから、仕方ないだろー!!!」


 その刀子の言い方に、今まで間接的に言っていた鞘乃だったが、ついに直接、刀子に対して感情的に言ってしまった。


「だからあああ!!重いに”クソ”つけて、悪態つなかいのおおお!!!」


 刀子は、これはヤバイ!!と思いつつも鞘乃に言い返した。


「だっ、だって、仕方がないだろ!?」


「何が仕方ないのよ!?」


 感情的になった鞘乃に怯む刀子だが、これだけは言いたい!と、口を開いた。


「全ては……




 ”おっぱい”がいけないんだ!!」




「はあ~!?」


 鞘乃は、ソレしか言えなかった。


「おっぱいなんて、クッ……」


 鞘乃に今しがた言われ、クソという言葉を、グッと飲み込む刀子。でも、ムカムカする気持ちを抑えられない刀子は、話を変えながら文句を言った。


「えーい!そもそもはこんな、ハタ迷惑な刀を持たなくちゃいけなくなった、何とかっていう法律がいけないんだ!!」


 もう、八つ当たりだ!!


「もう!何とかってさあ、”女子高生帯刀令じょしこうせいたいとうれい”ぐらい覚えようよ!授業でも習ってるでしょ!?」


 まだ、腹の虫が収まらない鞘乃が文句を言った。すると、チャンス!とざかりに、ちょっと明るく雰囲気を変えながら刀子は文句の続きを言った。


「そうそう!ソレソレ!その、女子高生ナンチャラを決めた奴がいけないんだよ!!」


「てか、ソレ?誰だか知ってるの刀子ちゃん!?」


 すると鞘乃も態度を柔らかくして返した。


「知ってるよ!えーと、なんて言ったけ?あのババアは?」


 鞘乃に言われ、ババアと言って誤魔化す刀子。


「だから刀子ちゃん!一国の総理大臣に向かって、ババアはダメでしょ!ババアは!!」


 また言葉使いが気になる鞘乃は、刀子にムッとしながら言った。


「だって、あのバッ、いや、オバサンが決めなきゃこんな事に成らなかったんだろ?」


 取り合えず、話がそれたので大人しく鞘乃に話を合わせる刀子。


「まあ、そうだけど」


 いろんな意味で呆れている鞘乃。


「はあー!あのオバサンが決めなけりゃ!!」


 刀子は、大きくタメ息をついた。なんでもいい加減な言い方をする刀子に、これではイカン!と思った鞘乃は言った。


「違うよ刀子ちゃん。総理大臣だけが決めたんじゃないと思うよ!てか、あのオバサンなんて言わず初代女性総理大臣の名前ぐらい覚えようよ!!」


「分かるよ!度忘れしてるだけだ!覚えてるよ!えっとアレだろアレ!ちょっと待て鞘乃!今、思い出すから!!」


 刀子はテレビで見たシーンを、あわてて思い出していたのだった。


つづく

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