「日本刀の使い方!?・③」

「お前たちは!!いったい何をやってたんだぁあああ!?」


 職員室で担任の男性教師に、刀子、鞘乃、柄恵の3人は、こっぴどく叱られていた。


「すまん!せんせー」


「先生、ごめんなさい」


「先生!ごめんだピョン!!」


 それぞれに謝る3人。そうそう、刀子の刀は鞘に入らないので、用務のオジサンにもらった新聞紙を刀に巻いて腰に差していた。


「ガラスが割れただけで済んだから良かったものの、石が人に当たってたらどうするんだ!?」


 そう言って担任教師が指差すテーブルには、コブシ大の石ころがあった。


「すまん!せんせー」


「先生、ごめんなさい」


「先生!ごめんだピョン!!」


 頭を下げる3人。


「どうも、気がたるんでるようだな?いいか?石ころで死んだ場合、帯刀令での再生は出来ないんだぞ!!そうしたらどうなるか分かるか?」


 担任教師の言葉に、ハッとする3人。


「お前たちは、ただの犯罪者だぞ!?」


 3人は顔が青くなった。


「というか、なんで鞘乃が居て、刀子たちを止められなかったんだ!?」


 担任教師の言葉に、鞘乃は自分が普通の精神状態でない事を、自分で理解した。


「先生、済みませんでした」


 と、涙を浮かべながら言うのが、鞘乃の精一杯だった。


◇◇◇


キッキィーーー!


 ブレーキを踏んだ青年研師は、その背の低い女子生徒を見て面倒臭そうな顔をした。その女子生徒は、この高校の生徒でない事は制服を見れば分かった。


 その女子生徒は夏服の、白の半袖ブラウスに、ネクタイはチェックで、えんじ色に黒、そして細いラインの白、黄色のを締め、そのネクタイのチェックと同じチェックがらのミニスカートを履いていた。ちなみにスカートは箱ヒダ(プリーツ)16本だ。その他校女子は青年研師を見ると言った。そして、紺のハイソックスに黒のローファーを履いていた。


「広道!」


 と、親しみを込めて呼ぶ他校女子。それに対して青年研師はこう言った。


「お前、何しに来た?」


 すると、当然!と言った態度で他校女子は言った。ちなみに身長は鞘乃より低い145だった。


許嫁いいなづけだから会いに来た!」


「いやいや、だから親同士が決めた、ただの結婚相手だろ!?」


「でも、だって!広道だって!!」


 夕暮れの校門、オレンジ色に染まる二人。


「広道だって!結婚してくれる!って言ってた」


 物凄く面倒臭そうな顔をする青年研師。


「それは、小学生のお前がしつこく言ってくるから思わず答えた事で、しかも!考えとくとしか言ってねーからな!!」


「それでも同じだよ!広道のお父さんも、お母さんも結婚していいって言ってくれたよ!あとは広道と結婚するだけなのに!!」


「たからそれは、親同士が決めた事で、俺は認めてねーよ!!」


「広道は私の事、嫌い?嫌いになったの!?」


 目を潤ませて聞く他校女子。ちなみに、おっぱいは小さめだ。


「あー!こんなウゼーと、好きでも嫌いになるだろうぜ!!」


 青年研師は嫌味を言った。だが!しかし!?


「好き!?やっぱり私の事、好きだったんだ!!嬉しい!私も広道、大好きだよー!!」


 窓のあいた車のドア越し、他校女子生徒が青年研師に抱きついた。


「ちょ!離せ!!アブねーだろ!?」


 その時だった。


「エッ!?これは、イターイ!なんデスーカ!?」


 槍の稽古を終えたランスたちが校門に来たのだ。


「マジか!?校門で抱きつくなんて、マジありえねー!?」


 加藤が言った。


「てか、抱きつかれてるのは、研師の兄貴じゃん!?超ウケルwww」


 宝蔵院が目を丸くして言った。


「これは良くはありませんね」


 その様子を見た従者が、冷たく言った。


「アーレが、研師のケコーン相手ですか!?」


 その時、担任教師にこっぴどく叱られた3人も校門にやって来た。


「鞘乃!あれ!!」


 刀子が指を指した。


「あっ!研師のお兄さんが!?てか、あの制服!県立ブレザー学園だピョン!!それも同じ1年だピョン!!」


 柄恵が目を丸くする。柄恵はこの制服を知っていた。そして白いブラウスの左胸ポケットには丸の中に「ブ」と学校章がプリントされていて、学年章のピンバッチがつけてあった。柄恵はそれを見て学年が分かったのだ。


「えっ?ええー!?」


 鞘乃は目の前で、青年研師が女の子に抱き付かれている事態に、驚きの声を上げた。


 その時、鞘乃はランスの姿を見つけ、二人で目を合わせていた。


「こら!マジでいい加減にしろ!!」


 青年研師が車のドアから半身を出しジタバタしている。


「広道ー!だーい好きー!!」


 ブレザー学園の女子生徒は青年研師の首にしがみついたままだ。


 その時だった。


―――ツカツカツカ


 従者が青年研師に近づいた。


「あなたに決闘を申し込みます!!」


 突然の決闘の申し込みに、青年研師は当たり前に驚いた。


「えっ!?」


 それも首に、ブレザー学女がしがみつたまま、青年研師は声をあげていた。


「てかちょっと!お前どけ!!」


 そして、青年研師はブレザー学女を慌てて引っぱがすと、ドア越しに従者を見て言った。


「お前は誰だ?」


 すると、従者は自分の手袋を脱ぐと。


「改めて言います!あなたに決闘を申し込みます!!」


 青年研師の顔めがけて、思いきり投げつけた。


「「「ああっ!!!」」」


 それを目の当たりにした、ブレザー学女、柄恵、ランスが声をあげた。


―――パシンッ!!


 が!しかし、青年研師は従者の手袋を、顔に当たる直前に手で受け止めていた。


「従者!!どーしてデスーカ!?」


 ランスは手袋を投げた従者に慌てて聞いたが、従者は青年研師を黙ってにらんだままだった。すると青年研師が車から降りて来て、従者に言った。


「本当にいいんだな?決闘で?」


 互いに、額がくっつかんばかりに近寄り、ガンをつけ合う青年研師と従者。そんな身長190と185の二人の様子を固唾かたずを飲みながら、みんなは見上げていた。


「ええ」


 と、従者は答えるとクルッと、ランスに振り向くと、ランスの腰に手を伸ばした。


「無礼を失礼します!」


「エッ!?」


 そして、何事かと驚くランスの腰へ従者は手を伸ばすと!


「従者!ダメっ!?」


――スッ


 従者はランスの、片手幅広剣ワンハンド・ブロードソードを勝手に抜いた。


「従者!ナニをするんデスーカ!?」


 ランスは自分の剣を持った従者に聞くが、従者はそれに答えず、剣をブンブン、クルクルと手首で振回し、次に肩慣らしにと動き回った。それはまるでそれは剣の舞のようだった。


「ずいぶんと上手に踊るじゃねーか?」


 従者の剣の舞を見た青年研師は、軽バンの後ろのドアを跳ねあげると、後部に積まれた刀の中から、ひと振りの日本刀を取り出し――


スーーーッ


 そして刃を上にしながら、ゆっくりと刀を抜いた。


――コトッ


 青年研師は鞘を、車の後部にそっと置いたが、その様子を見ていた鞘乃やランス、さらにはブレザー学女には、置かれた音が大きく響いて聞こえていた。


「本当にいいんだな?」


 低くドスの効いた青年研師の声が従者に確認する。


「ちょとー!マツヨー!従者!?ドーユーつもーりデスーカ!?」


 事の事態に、泣きそうになりながら、従者の前に立ち止めようとするランスは両手を開いた。


「この者と決闘を致します」


 ちらりと目線の下げて、ランスに淡々と言う従者。


「ケトーして、どうするデスーカ!?」


 両手を開きながら、必死に従者に聞くランスだか、従者は相手にせず青年研師を再び睨み付け言った。


「青年研師よ!私が決闘を申し込む理由は1つだけです!!私が勝ったら、ランスお嬢様と結ばれよ!!」


「ほえっ///!?」


 ランスがほうけた声を出した。


「ちょちょちょちょ」


 ちょっと!と言おうとするランスをさえぎり、青年研師が従者に文句を言った。


「はあ!?何言ってんだ?俺が誰と付き合おうと、自由だろうが!!」


「ならば!参る!!」


 従者は青年研師の話など聞かず、ランスを軽々と横にどかすと、剣を右肩上方に構えたまま、あと一歩踏み込めば剣が届くという間合いに詰めた。


「本気らしいな?じゃあ先公が来る前に、とっとと始めるか!?」


 青年研師は従者に言いながら、切っ先を真っ直ぐに相手に向け、正眼の構えをとった。


「えっ?本当に切り合うの?しっ、死んじゃうよ!ねっ、ランスちゃん!ランスちゃんも止めてよ!!」


「ワターシと青年トギシーが///!?」


 鞘乃はたたずむランスに頼むが、ランスは惚けたままだった。


「ダメだよ広道ー!」


 ブレザー学女が青年研師の腰に後ろからしがみついた。


「さてさて、日本の剣はずいぶんと細い剣ですね!この幅広剣で叩けば、すぐに折れますね!!」


 西洋の剣に比べれば、何とも細身の日本刀。


「まあ、試してみろよ?この刀は、そんじょそこらの日本刀とは訳が違うぜ!その昔、野戦にて活躍した肉厚の実戦刀!その名も胴田貫正国どうたぬきまさくにだ!!」


 それを聞いた加藤が驚いた。


「ちょ!マジ~!?マジ胴田貫~!?」


「どうしたの加藤っち!?変な声を出して、超ウケルんですけどwww!!」


 宝蔵院が言うと加藤は驚いた訳を話した。


「胴田貫って、うちの先祖の加藤清正が、地元の刀鍛冶たちに「マジつえー!刀作れ!!」て命令して作った刀たちで、田んぼで死体を使って試し切りしたら、マジ斬れるんで、思わず田んぼに刀がマジつっこんじまったから、胴田貫って呼ばれた刀だよ!それも清正から一字もらった正国だなんでマジヤバイって!かぶとだってマジ割れるよ!!」


「田んぼ!超ウケルwww、てか!加藤っち、自分んちにそんなスゴイのあるんでしょ?なんでその刀、使わないの!?超ウケルwww」


「いや!マジ重いんだって胴田貫!!長さは同じだけど、普通の刀より厚さも幅あるんだよ!だから、マジ持てないって!?てか、槍の方が好きだしー!!」


 そんな質実剛健な日本刀を、西洋剣との闘いに青年研師は選んでいたのだ。

 

「どけっ!」


 青年研師は腰に回された手を簡単に外すと、ブレザー学女を軽く横へどかした。


「広道~!!」


 両コブシをアゴにつけながら、青年研師に背中に向かって叫ぶブレザー学女。互いに向き合う従者と青年研師は、そして、じわりじわりと時計回りに動いていた。


「死ぬけどいいんだな?」


「青年研師さん!待ってー!!」


 鞘乃が叫んだ。


「ええ、殿下の為ならこの命!いつでも差し出しますよ!ですが、死ぬのは貴方です!!」


「ワターシとツキアーウ///!?」


 ランスが素っ頓狂な声を上げる。


 その時だった!


「その勝負!




 ――待たれい!!」


 と、大きな声がかかったのだった。


つづく

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