「再生機でオッタマゲー!?・③」
「早く、電車来ねーかな?」
キーホルダーを、お手玉のようにポンポンと、もてあそびながら、つぶやく刀子。
「ちょっと刀子ちゃん!ホームから体がハミ出てるよ!!」
ホームぎりぎりで、片足立ちになり、左手でオデコのところにひさしを作って、電車の姿を探す刀子。その側に鞘乃がいて、柄恵もホームに居た。3人は電車で通学していたのだ。
「ったく、その足の傷は切り落とせば、すぐに治るピョンにー!!」
ブツクサ文句を言う柄恵。刀子の
―――カランッ!
「やべっ!!キーホルダーをホームから落としちまった!マジかー!?」
刀子の声がホームに響いた。
「えっ!どこに!?」
鞘乃が言うと、刀子は膝をつきながら、今にも落ちそうな勢いでホーム下を、のぞきこむ。
――ファサッ
長くサラサラの黒髪が耳から垂れた。刀子は膝をつきながらなので、後ろから見ると、ガーストの後ろの吊り紐と、黒いパンツがチラチラと見えた。
「ちょっと!危ないよ刀子ちゃん!!のぞきこみ過ぎだよ!ホームから落ちて電車に
慌てて鞘乃は刀子の、刀を差す
「ホントだピョン、刀子!馬鹿なの?死ぬの!?なんだピョン!!」
鞘乃に生き返れないと言われ刀子は、ハッとして体を起こした。
「あっ!そうだった。ヤベー!なんか、死に対して鈍くなってるんだよなあ。死への恐怖が無くなったっていうか、鞘乃はどうなんだ?」
そう言いながら、膝のホコリを払うと刀子は、両耳の髪をかきわけた。
「私もだよ!まあ、痛いのは嫌だけどね!」
「ホント!前じゃあ考えられないピョン!痛みだって、
3人は、死の恐怖ってどうだったっけ?と、うーんとウナっていた。その時、刀子が言った。
「てか、コッソリ再生したって大丈夫大じゃね?」
すると鞘乃は、刀子が膝小僧をすりむいた時に、話した事を思い出し、呆れた顔で言った。
「またそんな事を言って刀子ちゃん?高校に入学した時の説明、ホント聞いてないよね!?今、全国で監視カメラに映らない場所なんて、ほぼないんだよ!!」
「えっ!そうなの!?」
「そうだよ!ましてやここはホームだよ!!駅員さんが見るカメラだってあるし、どれだけ、映されてると思ってるの!?」
「そうなのか!てか、全て監視されてんのって、誰に見られてるのか分からないから、気持ち悪いな!!」
それを聞いて、色んな意味で呆れかえった鞘乃は質問した。
「ねえ刀子ちゃん?”誰が”見てるか知ってるの?」
「どんな奴かって事か?そりゃ警察の人間とか?駅なら駅員か?」
「あのね刀子ちゃん!全国に監視する為のカメラ何個あると思ってるのよ!!」
「えっ!千個ぐらい?」
首を振る鞘乃。
「じゃあ、一万個?」
さらに首を振る鞘乃。
「よし!思いきって百万個!!」
すると鞘乃は気合いを入れて刀子に言った。
「全然足りないよ!!電柱だって全国合わせて、3300万本って言われてるんだよ!?」
「えっ!じゃあ、1億個?」
鞘乃は、ブンブンと首を振った。
「あのね?監視カメラは、およそ一千億個って言われてるんだよ!!」
「いっ、一千億!?って……
何個なんだ!?」
あまりの刀子のバカさ加減に鞘乃は、今更ながらに呆れ返った。
「あのねえ刀子ちゃん!個人所有のドライブレコーダーやスマホ、防犯カメラとの連動だけでなく、各家庭の部屋ごとにも監視カメラがあるし、
「へっ、屁吉?オナラ?」
「もうバカ!てか!!そんだけの監視カメラ以外にも、記憶の監視もされてるんだよ!?」
「えっ!マジか!?オレの心が全部、のぞかれてるのか!?」
「心って。まあ、違うけど、だいたいそうだよ!ただし、脳が残っていればだけどね。もしも完全再生する場合に備えて、”
「ああ、いざって時の為に月一でやってるな!!ああ、そういや!記憶セーブをサボってて、試験直前に立ち合いで頭をかち割られちゃって、再生したら脳が新しくなってて、勉強内容を全部忘れた!!って話を聞いたことがあるぜ!!」
「その話は、たぶん本当だと思うよ」
「マジか!?」
「そう、その話にプラス!再生について部分再生であっても、本来の再生目的じゃなく怪しい場合は、機械が動かなくなって、記憶記録棟に行くよう指示が出されるんだよ!そんでもって、記憶記録棟に行って記憶スキャンされれば、嘘かホントかバレバレなんだよ!!」
刀子の目が点になっていた。そして、口をパクパクしていた。
「もう話について行けなくなってるでしょ?いいよ刀子ちゃん!それで話を戻すけど、そんなに沢山のカメラと記憶データを、人間が監視出来ると思う?もし、人間ならどれだけの人が必要だと思う?一千億人?」
「マジか?いっ、一千億人で監視してるのか!?」
「あのー刀子ちゃん?この地球の人口は70億しか居ないんだけど!あと、930億人はどうするの!?」
「ふえっ!?」
もはや刀子には、同じ言葉なのに外国語のように理解出来ないレベルになっていて、キャパオーバーになっていた。
「刀子ちゃん!ホント分からないの!?」
鞘乃は刀子に
「じゃあ、どうしてんだよ!!」
その刀子に対して、淡々と鞘乃は返した。
「それはね……
AIよ!」
「えー
愛?」
刀子の目が、また点になっていた。
「違うわよ!アーティフィシャル・インテリジェンス!!その略が、AI!!!」
てか、鞘乃もややキレて来た。
「あーてぃふぃしゃる・いんてりじぇんす?」
「もう、刀子ちゃん!!ホントに分からないの!?」
とうとうキレた!!
「すっ、すまん鞘乃!オレ、本当にバカなんだよ( ;∀;)」
超絶美少女の刀子が、半泣きで鞘乃に言った。あまりにも情けない表情の超絶美少女!!仕方がないので鞘乃は説明を続けた。
「人工知能の事よ」
「あー!それなら聞いた事ある!アレだろ?アレ!!車を自動運転してくれる機械の事だろ!!」
「まあ、それもだけど、ソレ以上のAIよ!その監視AIが人間に代わって、全てのチェックをしてくれてるの!!」
「でも、どうやって分かるんだ?」
「再生機と監視AI、そして記憶データはつながっていて、再生されようとする人間が刀で死んだのか、そうでないのかを瞬時に判断が出来る訳!だから、刀などでの怪我でなかったら、再生されないんだよ!!」
「AIマジでスゲーな!!」
「でしょ!!」
などと鞘乃と刀子が盛り上がっていると、ずっとホーム下を探していた柄恵が叫んだ。
「あっ!抜刀ちゃんキーホルダーが、あんなところにあったピョン!!」
刀子と鞘乃が見ると、刀を持ったセーラー服少女のキーホルダー、ゆるキャラの”抜刀ちゃん”があった。
ちなみに抜刀ちゃんとは、刀子にそっくりな髪型をしている人形で、3(さん)の口をした(  ̄3 ̄)こんなブサイク美少女ゆるキャラという、なんともネジれた感じのキャラクターなのだ。
「刀を使えば届くか?えい!えい!」
刀子は刀を腰から抜いてみたが、ホーム下は遠く、まったくもって届きそうにも無かった。
「あーっ、これは取れないピョンね!」
それを見ていた柄恵が刀子に対し、冷静に答えた。ホームとホーム下までの距離は、思ったよりもあったのだ。
「えー、どうする刀子ちゃん!?」
心配する鞘乃。
「駅員に頼むしかないピョン!!」
と、柄恵が言うと、柄恵と鞘乃との間から、長い長い日本刀を持った女の子が現れたのだった。
つづく
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